12部11章「突撃! 決戦の場はネフェーシア城!」28話 「お別れのために」
「ここに来るのも最後になるでしょうね」
誰もいない広い空間、つい先ほどまではレオンの分体と竜の坊やたちが戦っていた場所。分体とはいえ私がレオンと唯一会えた場所であり、今はもう誰もいない場所
「普通この手の魔力で作られた建物は主がいなくなれば崩れるものさけどねぇ」
初めてここに来たリリィは不思議だとでも言うように周囲を見渡すが、それは別に不思議なことではない。なにせ、ここには誰もいなくなったけれど主は健在なのだから
「ここの主はレオンよぉ・・・分体ではなくてね」
「・・・つまり見られているし聞かれているってことさね?」
無言の肯定にブルリとリリィが体を震わせる。私たちにはレオンを倒す手段がない。そしてレオンは容易に私たちを殺すことが出来る。超越者を倒せるのは同じ超越者だけ、それは何も実力という意味ではない
「迂闊なことは言わない方が良いわよぉ。抵抗する手段はないのだから」
「わかっているさね。あたしの手で殺せる相手ならばとっくにやっているさね」
ググッっと握りしめたリリィの手から鮮血が落ちる。彼女の中に蠢いているのは復讐心であり、それ以上に自分よりももっと復讐に染まってしまった妹への心配でもある。レオンがいなくなることで彼女の復讐心が解放されるのならばリリィはそれこそ何でもするでしょう
「で、あんたは何をしに来たのさね? まさかまた酒でも置きに来たわけじゃないだろうさね?」
恐らくは危険がないのならば一度ぐらいこの目で見ておくか程度のつもりでついて来たのだろうリリィは私にそう聞く
「あの娘と違ってお土産は必要ないわよぉ。これは私なりの決別の儀。そして覚悟よ」
次の戦いでは裏方ではいられない。表立って協力できるほどの信頼関係があるのかと言われたら悩むところだけど、私たちもまた当事者になるのだから
「じゃないと肝心なところで緩むかもしれないから」
「あんたはそんなたまじゃないと思うさけどね」
カラカラと笑うリリィだけど、本当は気が付いているはず。私とリリィの目的がレオンの命であることには変わらない。でも狙う理由が違うのよ。リリィは自身の復讐心であり妹を復讐から解放するため。でも私は・・・
「ふふ、いい女って言うのは悩むものなのよぉ」
「あたしの目にはそんなか弱い女は見えないさね」
いざという時にレオンを助けてしまうのではないかと危惧する私がいる。それを知っているはずなのに、そんなことはしないと笑うリリィ。竜の坊やじゃないけど、私も仲間には大概恵まれているわね
???
この世界のどこでもなく、同時に世界の全てでもある場所。そこで一人の男がどっかりと座り込んでいる。いや、そう表現するにはいささか語弊があるか。一人の男とその男の無数の分体がそれぞれに池のようなものを見ている。中には場所がなかったのか水平ではなく垂直にしたそれを見ている分体もいる故に池でも水でもないのだろうが
「・・・なるほど、全知全能が無数にいる世界はこうなるのか。つまらないな」
その中の一人がポツリとそう言い、そっと池のようなものから目を離すと一瞬のうちに池は消滅する。その中にいた慈愛を説いた全知全能も他者を支配しようとした全知全能もその他多くの全知全能たちが最後の瞬間まで自分が世界ごと消滅しようとしていることに気が付くこともなく。そしてそれをした当人はさして気にした様子もなく次の池を生み出す
「竜神、やはりマルトの血こそがネフェーシアに必要なのか? くくく、どうでもいい。だが、今世の竜神よ。早くこの場に来い。そして俺を殺して見せろ」
池の中に映り込むリュウトたちがその視線や声に気が付くことは・・・ない
12部 『新旧の争い』終わり
13部 『終焉迫る平和の中で』へ続く
というわけで、ようやく第12部が終わりました! こんなに長くなる予定はなかったのに・・・ともかく今回の話についてはともかく言いません。今回のあとがきのお題は
アキ「前回のあとがきで言っていた奴だよね?」
はい、とりあえず先ずは13部のお話、この13部のラストでついにリュウトとアキが結ばれることになります。こっちではさらっとそうわかる程度にしか書きませんが、その話がアップすると同時にノクターンに詳細版を上げるつもりでいます。18歳以上で興味のある方は是非上がったら見てやってください。URLなんかはその回のあとがきに乗せると思います。もっとも僕はR18作品を書いたことがないのであまり過度な期待はしないでいただけると助かります
アキ「うう、進展するのは嬉しいけど、みんなに見られるのは恥ずかしいよぉ」
そして最終部である第14部の話。これは今までと戦いの形状が違うので全員で乗り込んで全員で戦うという風にはなりません。勿論全員登場も活躍もしますが・・・どう描かれるのかお楽しみください
アキ「ここまで来て最後だけ傍観者でなんていられないよ、私たち全員!」
そしてその後の話、最終話後のアフターストーリーを少しだけやるつもりではありますが、これは本当に数話程度だと思います。で前述のリュウトとアキの夜の詳細版に各ヒロインたちの話が追加される予定になっています。その後にPixivでお題を見てから30分で書き上げるという即興小説企画で書いた『ショタ魔王様とショタコン女勇者』(https://www.pixiv.net/novel/show.php?id=280014)の連載版をこっちでやろうかな~とだいぶ先の話ですしプロローグ部分は即興小説で書いた部分そのままになりますが、こちらもぜひ楽しみにしてもらえたらと・・・同じ即興の巫女さん幽霊の話(https://www.pixiv.net/novel/show.php?id=280172)や即興出身で通常版も少しある『天才 夕凪美佐』シリーズ(https://www.pixiv.net/novel/series/35400)とも少し迷ったんですが、魔王様の方が短く終わりそうでしたのでw
アキ「でも、その前に私たちの冒険を最後までちゃんと見届けてね。お願いよ」
ではいつもどうり、部をまたぐときは次回予告はなし。ということでここで終わらせていただきます。ではでは




