12部11章「突撃! 決戦の場はネフェーシア城!」25話 「笑っていこう」
「さぁ、行くぞ! 竜神流暗殺術奥義・・・無明!」
超高速で風も起こさず気配も消し予備動作なしでの突撃術で背後を取る。剣としての威力が上がるわけでは全くないが、並の相手ならば十分に必殺と言える技でもある
「なかなか」
「余裕をもって避ける奴に言われたくはないがな」
きっちりと背後を取ったにもかかわらず俺の剣は簡単に空を斬る。そのままの勢いで投げられたが、空中で反転して着地する。レオンも距離を置くために投げたのだろうし、俺としても一旦距離は置きたかったから問題ない
「面白しろいな、お前たちは。大半は脱落すると思っていたが」
「そうだな、単独で戦っていたのならばそうなっただろう」
操りでも洗脳でもない。ただただ絶対的な存在と認識させる何か・・・一人だけで戦ってなお闘志を折られないのはアシュラと美鬼ぐらいしかいないのではと思う。だが今は違う。仲間がいるならば戦える。大切なものがいるのならば戦えるんだ。まだ青い顔をして震えているものはいる。だけど、戦うことが出来ないものは一人もいない
「全員、お前なんかよりも怖いものがあるってさ」
失いたくない。それは後ろ向きなのかもしれないが、間違いなく原動力でもある。その対象はそれぞれに違ってもみんな失いたくない者のために戦っている・・・俺だってそうだ。きっと世界と仲間を両天秤にかけられたら俺は迷わず仲間を取るんだろう。ならばこそ、仲間を失うかもしれない今恐れているような場合じゃない
「そうか。ならば・・・守り切って見せろ!」
レオンの突撃をコクトが壁を作って防ぐ。壁自体は簡単に突き抜けられたが、一瞬でも足止めが出来たというのは非常に大きい
「当然! 守り抜くさ、どこまでも!」
レオンの狙いは俺ではなくアキ。まぁ、今までも散々見てきたのだろうから俺が最も失いたくない者ぐらいわかっているのだろう。だが、勿論そんなものを許す気はない。全身全霊を込めた横払いでレオンを弾く。ただの突撃とは言えレオン相手ならば全力で行かなければ止めようがない
「・・・リュウト」
アキ? 青い顔ではなくなったが、逆にそこで顔を赤くしないでほしいんだがな? そう言う俺も可愛らしすぎるアキの表情に顔に血が集まっているのが実感できるが今はそんな場合じゃないと気合を入れなおす。いつの間にか警告の声は随分と小さくなった。これならば十全に戦うことが出来る
「そこ、自重しなさい。って言いたいけど、リュウトくんの力の源だからしょうがないか。でも、ちゃんとお姉ちゃんたちも見ること!」
姉さんがビシって音が鳴りそうな勢いで俺を指さしながら俺の横を通り抜ける。元々姉さんは少々手が出るのが早い側面はあったが根本は優しい人である。完全に俺が戦いに巻き込んでしまった形だよなぁ。なんて今更思ってもきっと姉さんは怒るだろう。姉さんはきっと自分がみんなを守りたいから戦うのだと言うだろうから
「その前に、あなたに注目してもらわないとね!」
姉さんに基本的に物理攻撃は効かない。だが、その例外が数多くあるようにレオンもきっと例外であろうことは想像できる。それは姉さんも同じはずなのに恐れもせずにレオンに近づいて投げて見せる
「い、今のうちに強化をかけ直します!」
どうやらレオンが本気を見せた時の波動のようなものは俺たち全員にかかっていたククルちゃんの強化を解いていたらしく姉さんが時間を稼いだ隙にククルちゃんが慌ててかけ直していく。きっとそれもあって姉さんは囮を買って出たんだろうな。そう言うのは俺かアシュラあたりに任せておけばいいものを
「アシュラくんは良いけどリュウトくんは駄目よ? 言ったでしょう? あなたが切り札なの。あなたは止めを刺す最強の一撃のことだけを考えておけばいい。隙は必ず私たちが作って見せるわ」
そう笑いながら、でも真剣に俺に言うのはレーチェル。そうか、ならば俺がする返事は一つしかないな
「信頼している」
「上出来よ」
俺の返事に満足したのかレーチェルの笑みはさらに深まる。俺は自身を守っていた結界も防御に回していたエネルギーもすべて解除してその時に備える。ほんの一瞬後に死んでもおかしくない戦い。他人どころか自分を守ることさえも困難な状況。だが、それがどうした? 信じると俺は言った。ならばそれだけのこと! 俺の最強の一撃なんて考えるまでもなくわかっているのだから
アキとマリアにレーチェルの違いって感じの今回でした
アキ「リュウトを守りたいんだけどね。守られるのも嬉しいの」
アキはまさに守り守られの相棒の関係にあるんですよね。勿論それとは別に恋人という要素もあるんですが(ゆえに前回のあとがきの話で言えば大魔導士の影響大)。でマリアはと言うと
マリア「リュウトくんは特別だけど、私は皆を守りたいのよ。だって私は皆のお姉ちゃんなんだから」
過度なスキンシップと過度な悪戯好きに隠れてますが、大切な一人はいるけれど他も見捨てられない。これがマリアの芯ですね(こちらはあえて言うなら慈愛の武道家の影響が大きいです。敵にまで情けをかけたりはしませんが、近接攻撃主体で10年も一緒に居たのにライバルが出現するまで全く自分の思いに気が付かなかった人でもあります)。そしてレーチェルは
レーチェル「犠牲になった多くの人たちのために何としてでもレオンを倒すの・・・でも本当は世界よりもリュウトくんが大事な自分もいるのよ」
最優先されるべきは世界の平和。それは今まで多くの犠牲を強いてきた自分の責任。けれどその仮面を剥がした素顔は・・・って言うのがレーチェル(こちらもあえて言えば王女様の影響を受けています。パーティ1番の回復魔法の使い手なんて言うのもそうですね。特に意識して作っているわけでもないんですが、冷静に考えると本当に大きく影響受けているなぁって感じです)。と言ったあたりで今回はお開き! 次回もまたよろしくお願いいたします




