4話 「二人の兄」
「何故だ? 何故、レミー・・・お前はわかってくれない?」
「お、お兄ちゃん?」
お兄ちゃんの目には怨みも憎しみもない。ただあるのは・・・優しさと悲しみ?
「天使が、悪魔が、人が・・・神が一体何をしてくれた!? だから・・・俺が変える! 魔王たちが支配する世界・・・俺がそこの幹部ならば、レミー・・・お前が虐められることはけしてない!」
じゃ、じゃあ・・・お兄ちゃんはわたしのために? わたしの為にこんなことをしたっていうの!?
「じゃあ、そのためにお兄ちゃんは・・・私の前から姿を消して、リューくんの大切な人たちを殺して・・・まーちゃんを苦しめたの・・・?」
「そうだ! それが一体なんだと言うのだ!? 俺は・・・レミー、お前が幸せならばそれでいいんだ。」
違う・・・それは絶対に違うよ。わたしが欲しかったものは・・・そんな幸せなんかじゃない。
「話しにならないな。」
リューくん? リューくんがまるでお兄ちゃんからわたしを守るようにわたしたちの間に入った?
「貴様は・・・何故俺たちの幸せを邪魔する!?」
「俺たち? お前の間違いだろう。お前は何を守ろうとしたんだ? お前が守ろうとしたものの中に・・・レミーの思いは入ってはいないのか?」
わたし・・・わたしの思い・・・そうだよ。体は無事でも・・・そんな未来じゃわたし笑っていられない。
「そんなものは・・・そんなものは生きていてこそのものだ! だから・・・俺はまず!」
「そうか・・・ならばお前にレミーは渡せない!」
リューくん? なんかいつものリューくんらしくない。リューくんはこんなに自分を前面に出すタイプじゃなかったのに
「俺もな、レミーの兄を自称してるんだ。・・・どっちが本当の兄か、勝負といこうじゃないか!」
え? 自称って・・・ちょっとまって、だってそれはお兄ちゃんになってってわたしがお願いして・・・
「ちょ、ちょっとリュー・・・」
「そうか・・・レミーが俺の下に来ないのは貴様の所為か。兄だと? レミーの兄は俺だけだ! いいだろう! 今度こそその息の根を止めてやろう!」
「ああ、一対一の勝負だ! 貴様が勝ったならレミーは好きにしろ。そのかわり・・・俺が勝ったならレミーの元へ、元の優しい兄に戻ってもらうぞ!」
え、えっと・・・わたし、どうしたらいいの!?
「落ち着け、あんな奴にリュウトは負けん。そう、今の真実が見えていない奴にはな。」
アーくん?
「まったく、その鋭さをすこしは私に回してもらいたいものだが・・・レミー、リュウトはちゃんと見ているぞ。そなたが笑っていられる未来をな・・・」
あーちゃん? うん、わたし・・・信じるよ。リューくんを・・・そしてお兄ちゃんを
「殺す! 貴様がレミーの兄を名乗るなど絶対に許さん!」
俺が自称・・・つまりレミーの許可なく勝手に名乗っているようにいえば乗ってくるとは思ったが、ここまでとはな。
「食らえ!」
迫り来るヘルの剣。だが俺はリュムを地面に突き刺し、急所ははずしながらもあえて攻撃を受ける。剣にこめられた雷が俺の体を貫くが、それを無視して渾身の力を込めてヘルの顔を殴りつける。
「・・・っ!? 貴様、何を考えている!?」
「俺が気づかないと思っているのか? お前、本当の属性は雷じゃないだろ?」
アシュラの雷に比べてこいつの雷はどうも違和感があるんだよな。
「気づいていたのか・・・いいだろう、もうすでに隠す必要はないからな。」
ヘルが放り投げたのは機械?
「以前、ママナに埋め込んでいたものだ。本来は属性の力を雷に変換する使い方をするべきものだ。」
なるほどな。そしてそうまでしてヘルとコクトの関わりを隠したかったか。・・・一撃、手加減が加えられていたことを考えれば三人で攻撃した分のハンデにはなるかな。
「なら、ここからが本当の勝負だ!」
引き抜いたリュムの呆れたような声を聞きながら俺はそう宣言した。
リュウト対コクト。いえ、リュウトにとってはまだヘルですね。
マリア「う~ん? それどう違うの?」
ヘルは敵であり、コクトは優しいレミーの兄と言うことです。
メイ「そういうことですか。しかし、あえて攻撃を受けるなど・・・」
まぁ、リュウトもヘルも馬鹿ですからね。いわゆる頭の良い馬鹿って奴でレミーとは違いますが。
マリア「あのこったら融通が利かないのよねぇ~」




