１２部１１章「突撃！　決戦の場はネフェーシア城！」１８話　「疑問と迫る決戦」

　ボクたちとリュウト、それぞれが気になった部屋を調べたボクたちは三階から四階へと上がった。ここはエルファリア宮殿ならばボクたちの私室がある階なんだけど、聞いた話ではここって後々増設された場所らしいんだよね。ボクが初めて来たときにはもうあったけど、リュウトがここに住み始めたころにはなかったらしいからボクたちやエルフ基準だと比較的最近の話になるんだと思う

「この階、元々あったのかなぁ」

　ボクのそんな呟きに少し青い顔をしたメイさんがピクリと反応する。アキがよく『エルフ族は耳が良い』なんて言っていたから聞こえていたのかもしれないね。でも、メイならば当然もう一つの可能性に気が付いていそうなもんなんだけど

「リュウトはどう思う？」

「俺に聞くか？　まぁ、そうだなぁ。ここはエルファリア宮殿の元になったネフェーシア城・・・とは言えオリジナルそのものではない以上はエルファリア宮殿の改築を受けてそっちに合わせたという可能性もある。俺たちとしてはそっちの方が嬉しいのは事実なんだが」

　うん、そうでなかったらエルファリア宮殿の四階が増改築されたのは既定路線。増築を決めたのがアキなのかメイなのかその他の人なのかは知らないけど、ボクたちの行動がある程度レオンに・・・というよりはボクたちの知らない遥かな過去に縛られているということになっちゃうから

「そもそもエルファリア宮殿が立てられた経緯がわからない。オリジナルのネフェーシア城よりは後に作られたのは間違いないのだから、どこからか設計図でも漏れたのか作られるべきして作られたのか。もっと言えば何故エルファリア宮殿がネフェーシア城をモデルとして造られなければいけなかったのか」

　そうなんだよね、例えばボクが暮らしていたヴァストラ城や名前は知らないけどカーミラの国の王城とかがそうであったとしてもおかしくはないんだ。たまたまエルファリア宮殿だったのか、たまたま似たような構造になっただけなのか・・・たまたまでこんなに似ているなんて考えにくいし、ボクたちのというよりはリュウトの拠点になっているエルファリア宮殿がたまたまで選ばれたというのも考えにくい。リュウトがそこにひかれる形で拠点にしたと言う目もあるけど、その場合は行動を操られていたのはリュウトってことになるから益々笑えない

「うん、いろんなことが考えられるから結論はわからないってことになっちゃうよね、やっぱり」

　でも、それは情報が足りないからだ。メイはあくまでも推測しているだけだから情報が不足していればボクたちと同じように結論は出せないはず。そりゃ自分が関わっているから多少の不安はわかるよ。でも、あの不必要な表情を隠すことが上手いメイが少しとは言え顔を青ざめさえたというのは少し不安のレベルじゃない。だったらどうして？　もしも、もしもだよ、メイがボクたちの知らない情報を知っているのだとしたら・・・そう、完全にオリジナルであるネフェーシア城を知っているとか

「ま、メイの反応を気にしていても仕方あるまい。レオンの能力が未知数である以上は操られている危険性がないとは言わないが、すくなくても意図的に裏切ることはないよ」

　・・・そうだね。確かにボクやリュウトを含めて操られる危険性は認識しておいた方が良い。でもメイが自分からリュウトを裏切ってレオンにつくことは絶対にないと、それだけは断言できるよ

「で、あれはなんなのかなぁ」

　特に見るべき部屋もない四階をさっと抜けてボクたちはエルファリア宮殿には存在しない階段を昇る。五階かな？　って思っていたけど、そこにあったのは空中庭園と言うやつで

「レオンはあそこにいるのでしょうね」

　問題は空中庭園があるってことじゃなくて、明かに不自然にそこから伸びている階段と空中に浮かんでいる巨大なドーム状の建物。接地しているのは階段しかないんだからどう考えても崩れないはずがない。ってことはレオンがオリジナルで作った決戦の場ってことで間違いないと思う

「へっ、つまりはやっと楽しい戦いができるってことだな」

　嬉しそうに指をポキポキと鳴らすのは美鬼。普通だったら鼓舞するためにわざと言っているとかなんだろうけど、美鬼の場合はたぶん本音百％だと思う。そうだとわかっているから頼もしいというのもあるけどね

「うん、いろいろ悩むのはもうおしまい！　リュウト、絶対に生きて帰ろうね」

　ボクの問いかけに笑顔で『勿論』と答えたリュウトのためにも頑張らないと！　あ、オルト、リュウトのことは噛まないで上げてね？