12部11章「突撃! 決戦の場はネフェーシア城!」17話 「恐怖の根源」
メイは怖い。それは俺やリデア、そしておそらくは他の皆も含めた共通認識だが、何故に彼女は怖いのか。正直な話、メイの身体能力はそこまで高くはない。性格は・・・怖いには怖いが戦闘中はそこはあまり関係がない。メイの怖い部分、それは
「どうしました? そのような見え透いた攻撃が私に当たるとでも?」
タイプ的には俺やリデアなどと同じ魔法剣士と言うべき戦士の攻撃をことごとくかわしてカウンターを入れていくメイ。けして敵となる戦士の動きが遅いわけでも単調なわけでもない。身体能力の差を考えたら当たらない方がおかしい攻撃が雨とばかりに降り注いでいる。それでも当たらない
「あれは私には真似できませんね」
そう小さく首を振るのはククルちゃん。ククルちゃんも戦士としての分類をするのならばメイに近いタイプだ。相手の動きを読み、回避と反射を効率よく使い分けることで相手を翻弄、あるいは言い方は悪いが騙すことで勝利を手にする
「あれはメイにしかできないよ」
俺は素直にそう言う。メイには反射能力はない。使える技も実は俺やアキに比べると少ない。さっきも思ったが身体能力が優れているわけでもなければ、伝説級の武器とは言えメイの使うナインテイルウィップは俺の存在の剣やリデアのレキュオス、アキの魔法杖ミリーなどには遠く及ばない。だが、それでもメイは強い。初対面の敵であるというのにその思考を先読みして全ての攻撃を回避してくることが最大の強みだ。俺がメイと戦っても勝てるビジョンが見えないんだよなぁ
「つまらない攻撃ですね。あなたの攻撃はあまりに単調で読みやすい。もっとも、操られている故に仕方がないのでしょうが・・・私もそうであったように」
メイの表情が一瞬だけ歪む。それはきっと冥王に操られていた時の苦い思い出ゆえにだろう。しかし、あれは読みやすいか? パターンらしきものはあるにはあるが、手数的にはそんなものを読ませないほどの多方面からの様々な技で斬りかかっていると思うんだが
「隙を見せればそこに攻撃してくる。視線を向ければそこを防御しようとする・・・お話になりません」
あはは、確かにメイはそうだったな。何度か模擬戦はやったことがあるんだが、とにかくほとんどの隙はそこを攻撃させるためのフェイントに過ぎないし、あからさまに見てくるときは大体そこを攻撃してほしい時だ。かと言って他の部分を攻撃しても避けられるし、他の部分への攻撃を警戒しているとみている場所に攻撃が来るんだが。表があるから裏がある、正道があるから邪道が生きるとでも言うのか、とにかくメイは相手の裏をかくことが上手い。そう言えば以前にも言っていいたな、相手が予想できないことをするのが策だと。考えなしの突撃でも、それを相手が予想できなければ策として機能するのだと
「そろそろ終わりに致しましょう。さぁ、良い声をあげて逝ってください。さぁさぁさぁ!!」
そして満面の笑みでの鞭のラッシュ。一撃一撃の攻撃力は低いけど、逆に避けられなく痛い場所に連続で何百回と攻撃されるんだよな
「・・・兄さん、なんか兄さんはいろいろ考えていたみたいだけど、ワタシはメイの怖さの大部分はあれだと思うわ」
とメイの様子を見てリデアが少し青い顔で俺にそう言う。俺が考えていたことが普通にバレているのは最早そういうものだと諦めるが、やっぱりリデアもそう思うか
「痛いとか強いとかの前に怖いなんだよな」
コクコクと俺の言葉にうなずくリデア、ついでにアキ。痛い思いなんて何度もしているし、強敵との戦いも数多い。これから戦う予定のレオン分体なんてその最たるものだろう。だが、恐怖と言う意味ではメイの方が大きいのは何故かと聞かれたら、やっぱりあの言動なんだろう
「断末魔の声さえもろくに上げないとは面白くない相手でしたね。これでしたら四季の女神たちの方がよっぽど楽しい相手です」
そう本当につまらなさそうに言ったメイに俺は乾いた笑いを返すことしかできない。しかし四季の女神たちも可哀想に・・・いや、最近の彼女たちならばご褒美なのか?
「鞭うつだけならば一番楽しいのはリュウト殿なのですけどね。次点はリデア殿でしょうか?」
「なんでワタシなのよ!?」
とリデアが黙っていられないとばかりに突っ込むが、楽しげなメイに対してリデアが少し震えていたのは見なかったことにしよう
「うふふ、さぁ、なんででしょうか? でも、一番戦いたくないのはリュウト殿で次がレミー殿です。行動がとにかく読みにくいですから」
レミーの行動が読めないというのはわかるが、俺もか。まぁ、俺の場合は攻撃のパターンが多いからだと思っておこう・・・レミーみたいにお馬鹿すぎて理解できないとかじゃないよな? と俺は部屋から出て行こうとするメイの背中に心の中で問いかけた
身体能力は低い方、魔法は実は結構苦手、総合戦闘能力も下から数えた方が早い・・・にも関わらず苦戦するというイメージがほとんどないメイなのでした
メイ「実際には戦っている私はそこまで言うほど余裕はないのですけどね」
まぁ策士が焦ってはどうにもならないですからね。メイの真骨頂は策と罠にありますから
メイ「相手に気づかれないように必殺の切り札を進めておく・・・私にはそれしかできませんから」
そこがメイの怖いところなんですけどね。もっとも普段の怖さはそれとは別・・・
メイ「作者殿、何か仰りましたか? ああ、また例のお部屋を所望していると」
していません! 断じてしていません! だから引っ張っていかないで~~~!! で、では皆様今回はここまでです。次回もまたよろしくお願いいたします。それとた~す~け~て~~~!!




