12部10章「決戦を前に」7話 「きっと、あなたは」
「起きなさい、ママナ」
どこか冷たさえも感じさせる声で倒れた私に言うお母さん。普通だったら悲しいだろうそれは今の私にとってはとても嬉しいこと
「当然・・・だよぉ!」
私が、私たちがこれから戦うことになる相手は強い。それこそ本当は私なんかが戦うことは無謀以外の何物でもないぐらいに強い。それでも私はリュウトと一緒に戦うって決めた。だって無謀なことに挑もうとしているのはリュウトだって同じ。それでもリュウトが私たちを守るために戦うというのならば、私はリュウトを守るために戦う・・・その対価が私の命であったとしても
「それは立ったとは言いません」
プルプルと震えるような足で立った私を鎌の柄で打ち付けるお母さん。痛いけど、これぐらいならば少し跡が残るぐらいだし、跡だってレミーあたりに頼めば奇麗に消してくれる。だから気にする必要はないんだけど、お母さんは一瞬だけ辛そうな表情をする。本当だったら鎌で斬られていたところだよね? 少しでも強くなることは微々たるものかもしれないけど私の生存率を上げるから厳しくしてくれているんだよね。全部わかっているから辛そうな顔をしないでほしい
「だったら・・・こうだよぉ!」
打ち倒された私は追撃の一撃が来る前に隠密で体を消滅させる。勿論、本来はこういう用途の技じゃないんだけど、肉体を消滅させて一時的に精神体だけになるこの技は緊急回避にも使えないわけじゃない。それに体がなくなるって言うことは肉体的な疲労なんかも回復する。ちなみに怪我はさっきの跡みたいに軽傷ならば無くなるけど、大きな怪我は肉体の再構成時に再現されてしまうことがある。手足の欠損とかを隠密解除の肉体再構成で治そうとすると大きく不足している物質を補うために大きくエネルギーを消耗するから、その関係で大きな怪我も意識してやらないと治せないのかもしれない
「そうね、でも私には通用しないわ」
ズキリとした痛みに私は隠密を解除する。そして使う前には無かったっはずの胸元から走る一本の傷を見て理解したの。隠密を使いながら攻撃することのできるお母さんのあの鎌は隠密中の相手を傷つけることも出来るんだって。リュウトの剣やアシュラの爪なんかも同じことが出来るからあり得ない話じゃない
でもなんだろう? それとは別にこの傷がすごく嬉しい。私も女の子だから誇りとして残しておきたいとかそんなことはまったく思わないし、むしろリュウトに見られる前に消したい気持ちでいっぱいだけど、表面を軽く切り裂いただけの傷は出血量もそれほど多くはない。それでも人間だったら出血死をしてもおかしくない程度の怪我、一応悪魔らしい私だってもう少し深く斬られていたら危なかったかもしれない。そんなギリギリの攻撃をしてきてくれた信頼がたまらなく嬉しいの・・・レーチェルさんだったらもっとギリギリというか、私が今みたいに気づかずに受けていたら確実に死んでいたぐらいの攻撃してきそうだし、お母さんもここまでならば大丈夫と見極めて攻撃しているのかもしれないけどね
「でも! 私だって負けないよぉ!」
生き残るだけじゃ駄目なの。役に立つだけでも駄目なの。さっきは対価が私の命でも構わないなんて思ったけど、それは本当に最悪の場合。恨まれてもリュウトが死ぬよりかは私が死んだ方がいいってだけ。役に立ったうえで尚且つ生き残る。そうじゃないとリュウトの心と体の両方を守れない・・・私はリュウトのお姉ちゃんなんだから
「私にだって戦う力は・・・ある! ダークハンドブレイク!」
実戦ではほとんど使われたことのない私の数少ない攻撃技。地の殻を纏った闇の槍はただただ真っ直ぐにお母さんへと延びる。それはお母さんのわき腹辺りを掠る程度で避けられてしまったし、すぐに動けなかった私はお母さんの鎌の柄の一撃をもう一度受けてまた倒れてしまったけど
「強く・・・なったわね。ママナ」
「まだまだだよぉ。守りたいものはいっぱいあるのに私にはその力がないから」
今までに何度もリュウトと一緒に戦えるみんなを羨ましいと思ったことはある。みんなの強さに嫉妬したこともある。一番でなくても構わなかった。ただ、自分はこれでリュウトを助けられるって誇れる何かが欲しかったんだ。でも、きっとリュウトは
「戦力だけが力ではないなんてリュウトくんは言いそうね」
「うん、私もそう思うよぉ」
お母さんと同じことを考えていたことに笑いが漏れる。きっとリュウトはそう言うんだ。私の隠密がすごく助かっているって。例え、私がそれさえも使えなかったとしてもリュウトは『ママナがいてくれて助かる』ってきっと言ってくれると思う。でも
「いま必要なのは戦う力だから」
「・・・そうね。じゃあ、少し休んだ後に再開しましょう」
リュウト、見ていて。私もいつまでもか弱い小悪魔じゃない。絶対に、絶対に役に立って見せるから
今回はコーリンさんとママナのブラック母娘の話です
ママナ「ぶ~! 確かに私たちは色彩は黒いしファミリーネームもブラックだけどぉ! なんかそう言う言われ方をするとすごく嫌!」
あ、あの、早速のポカポカパンチの体勢に入らないでほしいんですが
ママナ「殴られるようなことを言う作者が悪いんだよぉ」
・・・あの発言はそこまで罪が重いものなのか? ママナは自分では小悪魔とかか弱いなんて言うけど、普通の小説やゲームだったら大魔王とか邪神とか言われていてもおかしくない実力者だってことを・・・だ、だからポカポカパンチは駄目ぇぇぇぇぇぇええええ!?
ママナ「ふんだ! 人のことを邪神呼ばわりするからだよぉ。うん、作者も気絶したし今回はここまでかな? みんな、次も見に来てね。可愛い小悪魔からのお願いだよぉ」




