12部9章「魂、託して」12話 「鏡と鍵」
それは一進一退の攻防と言っていいのだろうか? レーチェルを思い出させる転移、そして俺には幻影破りの風があるから一瞬だけしか効果がないとはいえ高精度の幻影、さらには回復も優れている。本当にどこかの誰かを思わせる能力だ。対して、こちらの方が数は多い。ゆえに相手の速度がこちらよりも上であっても手数と言う意味では上回っている。事実として太陽神は確実に疲弊しダメージも受けている。だが、同時にこちらはほぼ全員が満身創痍と言う形だ。まだ軽傷と言えるのは完全後衛のアキぐらいなものだし、そもそも彼女が多少なりともダメージを受けるというのは前衛および中衛の守りが突破されていることに他ならない
「ククク、これほど楽しき死闘は初めてだ」
「だねぇ、このズンとくる痛み・・・たまらねぇ」
そんな中でも戦意を全く失っていないどころか戦意を向上させている戦闘狂二人。あの二人に関しては心を折られるみたいなことはまずないが、他の皆は・・・
「大丈夫だよ、諦めている人は誰もいないから。リュウト、よく言うよね? 『俺が勝つんじゃない。俺達が勝てればそれでいい』ってみんな同じ気持ちだよ」
アキから送られてくる念波に俺の心が温まるのを実感する。確かにそうだ、俺たちは全員で勝利を目指せばいい。だが、このままではいつ脱落者が出るかわからない・・・この場合、脱落者とはすなわち死者だ。特に防御に集中しているコクトと回復に集中しているレミーの兄妹が崩れると一気に全滅となりかねない
「っ! これほどの劣勢で何故・・・?」
そんな思考をしていると太陽神が頭を押さえて後ずさる姿が見えた。特に頭部に致命的なダメージを与えたわけではない。だが、その動きも気になったがそれ以上に気になったのは
「また光った?」
ほんの一瞬だけ発光した彼女の胸元にある鏡だ。たしか八咫鏡とか言ったか? 単純な光の反射などではなく、間違いなく鏡自体が発光した。しかし、それによって何らかの効果があったようには到底思えない。また、その発光が彼女の意思であるようにも見えない
「あの鏡、何か妙だのぅ」
俺と同じことを考えたのかカーミラがブラッディクローを撃ちながらもそう話しかけてくる。俺はそれに対して頷きを返しつつも、うちの軍師様はどう見るかなとメイに視線を向けるが特に答えはない。正直な話、俺やカーミラが気付いたことにメイが気が付いていないとは思えない。ならば今は気にしなくてもいいことか、あるいはこの場では言えないことだろう
「いくら気持ちが強かろうとも・・・!」
圧倒的に有利な立場にいるはずの太陽神が何故か苦悶の表情で振った剣から多重に発動した波動を俺は存在の剣を大盾に変えることで受ける。コクトの土壁のサポートがあってなおカーミラ共々吹き飛ばされる威力に余計なことを考えている暇はないなと頭を振る
「気持ちで負けていては絶対に勝てないだろう?」
数キロほど吹き飛ばされたのをなんとかブレーキをかけ、俺は高速移動術である刹那を使って一気に詰め寄る。その上で繰り出した剣撃だったが、あっさりと弾かれて攻撃したはずの俺の骨がきしむことになる
「気持ちだけで勝っていても勝てないでしょう! ・・・っ! まだ速くなっている!? あなたたちはどれだけの力を隠して戦っていると」
追撃の突きを今度は完全にかわすことが出来た。だが、今のは突きだしが遅かったからだろう? 俺はいつでも全力で戦っているぞ? しかし、それを教えてやる義務はない
「はははっ、リュウトはそう言う存在だって知った方がいいよ。さぁ、オルト、ライカ、ボクたちも行くよ!」
「任せてよ、アイちゃん!」
「ガルゥ!!」
そして、何故か楽しそうに笑いながらオルトに乗ったアイが肩にライカを乗せて突撃していく
「いっくよ~、ライトニングアタ~ック! ラ~ン!!」
・・・どうやらラインボルトを直接拳を当てた状態で発動させる技をそう命名したらしい。しかし、間違いなく今の攻撃は効いている。アイの攻撃力が上がっている?
「っっっ!?」
そして、それが一番わかっているのは攻撃を受けている太陽神の方だろう。間違いなく自分が有利であり、追い詰めているのに敵は弱体化するどころか強くなっていく。そりゃ、混乱もするよな・・・いや、俺もなんでそうなっているかはわからないんだが
そんなアイに向かって剣が振り下ろされたがオルトの離脱の方が速かったため少しばかりオルトの体をかすめる程度にとどまる。とは言え、これ以上に時間をかけるとこちらのジリ貧になるのも明白。あと一手、何かがあれば・・・
「くっ!? い、今のは?」
一瞬、脳裏に映った光景。それは三つの扉、それ自体はドラゴニック・キーで力を開放するときによく見る光景だ。そして今、開けているのは二つ目の扉まで。確かに映った光景も二つ目まで完全に開いていた
「三つ目が開きかかかっている?」
もしもこの扉を開けられたのならば一手には十分なんじゃないか? と楽観的に思えるぐらいには一つの扉と二つ目の扉の効果の差は大きかった。その分、負担もまた大きくなるわけだが
「そこに可能性があるなら突っ込むだけだな。回れ! ドラゴニック・キー! そして開け! 第三の竜の扉よ!!」
鏡の謎、そしてドラゴニック・キーの3つ目の扉のお話でした
ククル「それで終わらせる気じゃないですよね?」
えっ? だってこの話はこの二つが主要な・・・
ククル「そう言うことを言っているじゃないです! 前回のあとがきでカーミラさんが文句を言ったら今回の話にちゃんと出て来たじゃないですか!」
あ~、出番か。ククルちゃんの場合は本来はサポートで味方の強化と敵の弱体化がメインですからね。反射能力も十分脅威ですが、さすがに彼女の攻撃を反射し続けるのは無理があります
ククル「・・・なるほどです。では、私もカーミラさんを見習って少し向こうでお話しすることにしますね?」
えっ? なんで腕を引っ張るの? カーミラを見習って? い、いや、あれは話し合いじゃなくてごうも・・・み、皆さま、急用が入ったようなので今回はここまでです! 次回もまたよろしくお願いいたします
ククル「逃がしませんからね!」
幕が下りるのいつもより遅くない!? 誰か助けて~~~!




