6話 「抱擁」
ルーンがいなくなったことで空間に綻びが出来る・・・待ってろアキ、今助けに行く!!
インキュバス(シモンなんて名前呼びたくないもん)がいなくなったことで空間に綻びが出来た・・・待っててリュウト、すぐに私が行くから!!
「アキはどこだ!」
「リュウトはどこ!?」
夢魔たちの異空間を抜けた先は薄暗い森の中。きっとここが深層魔界なのだろう。そんな場所で俺の耳に届いたのはお互いのそんな声だった。・・・よかった、とりあえずアキは無事だったようだな。
「あああああ、あのな・・・その・・・私凄く嬉しいけど・・・恥ずかしいんだけど・・・」
ん? どうしたアキ、そんな真っ赤な顔をして? ふむ、リンゴかトマトかというその顔を珍しいが・・・随分距離が近いような?? って、ええ!?
「ご、ごめん! その、抱きつくつもりはなくてな。アキの顔を見て安心したらその・・・」
というより抱きついた自覚も覚えもなかったんだが・・・ってあのな、抱きついてしまった俺が言う権利はないのかも知れんが、その胸に顔を擦り付けられるのも相当恥ずかしいんだけど?
えへへ~、リュウトに抱きしめてもらっちゃった。ちょっと・・・ううん、凄く恥ずかしいけど、それ以上に嬉しいよ~! んん~、やっぱりこの匂い好きだな~。インキュバスなんかに嗅がされた匂いとは比べ物にならないよ。
「あ、あのな・・・いきなり抱きついちまったのは謝るし、悪いと思うけど・・・その顔を擦り付けるのも止めてもらいたいな~。っていうか俺はもう手を離してるんだからアキが何時までも抱きついている必要もないって言うか・・・」
・・・はっ!? わ、私今何してたの!? うう~、恥ずかしいよ~。
「あ、いや、そのな・・・すすす、すまん!」
うう、言い訳のしようがないよ~! 私なんであんな恥ずかしいことやっちゃったんだろう?
「まぁ、なんにしろ無事でよかったよ。」
「は、はい! 無事です! 元気です! リュウト様!」
「・・・様?」
・・・あ~!!! なんで!? なんで様なんていっちゃったの!? そ、そりゃちょっとそういう風に呼んでみたいなって気持ちもあったけど・・・うう、これというのも全部あのインキュバスの所為だよ~!! 絶対あの時の後遺症とかそんなのだよ~!!
「りりりり、リュウト? なななな、何のことかな。ささささ、さぁ、お互い無事だったのだから先に行くとしよう。」
「・・・まぁいいけどな。」
まったく一体あいつらは何をやっているんだ? ここが危険極まりない深層魔界だと理解しているのだろうか。
「ム~! あーちゃんもリューくんもわたしたちのことすっかり忘れてるよ~! っていうかリューくんわたしの心配はしてなかったの~!!」
・・・こいつもか。いや、あの二人があの調子でこいつがまともなはずはなかったな。
「ねぇ、アーくん・・・わたしもあんな風にして欲しいな~?」
「・・・寝言は寝て言うものだ。」
「ム~! アーくんも冷たいよ~!」
問題は奴だ。あいつは本当に死んだのか? ・・・いや、もし生きていてオレたちの前に現れたらその時こそ叩きのめせばいい。
「ね~、アーくんったら~!!」
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「あんたがあんなに慌てるなんて珍しい物が見れたねぇ。」
暗闇の中、背後から私に語りかける声。姿なんて見えなくてもこの声の主がわからないなんてことはない。
「あら? 私じゃなくて私の分体の一人よ?」
そう、坊やたちにやられたのは私の分体。本体の私に比べたらずっと弱いわ。
「そりゃそうさねぇ。まだあの坊やたちじゃあんたの相手は出来ないからねぇ、ルーン。」
「フフ、それ以上は言っちゃ駄目よ? それに私の分体やシモンぐらいは破ってもらわないと困るわ。・・・なんて言っても私たちが見込んだ子達なんだもの。」
とはいっても最後のあの力は意外だったわね。・・・ますます興味深い。ううん、私たちの目に狂いはなかったってことね。
「あの坊やたちにはまだ生きていてもらわないとねぇ。・・・あたしたちの目的のためにもねぇ。」
またいつか会いましょう、坊やたち。それまでに・・・魔王たちなんかに負けちゃ駄目よ。
え~、再会した(ってほど離れていたわけじゃないけど)恋人にちょっと満たない二人の様子はどうだったでしょうか?
レミー「ム~! わたしは無視されて面白くなかったよ~!」
・・・キミを楽しませるためのものじゃないからな。(これだけサービスしてればアキのお仕置きは当分ないかな?)
レミー「でも、あーちゃんも怒ってるんじゃないかな~?」
な、なんで?
アキ「ほ~? 私にあんなに恥ずかしい真似をさせておいて怒らないとでも?」
え? あの・・・その・・・え~、闇に潜むルーンと謎の人物にも注目です!
アキ「私を無視するな~!」
レミー「あ~、あーちゃん? そんなにやっちゃったらサーくん死んじゃうよ? あ、そうそうわたしもお仕事あったんだ。『夢魔たちの罠を破り深層魔界を進むわたしたちの前に立ちふさがるはあの人! 竜神伝説第二部7章「妹と兄」をお楽しみに~!』う~、どうしてわたしたちこんなになっちゃったの? おにいちゃん・・・。」




