5話 「炎の竜」
そして、女の子チーム
「いくぞ! ファイヤーボール!」
「シャイニングアローだよ~。」
奴の、インキュバスの能力が女である私たちの心を操るものである以上長期戦は厳禁。一気に押し切らないと・・・いつもどおりの私のファイヤーボールの連撃とレミーの光を込めた矢の一撃!
「くっくっく、そんなもので我をどうにかしようと?」
背中の羽は飾りではないとばかりに空をヒラヒラと舞い私たちの攻撃をかわしていく。・・・でもね、罠にかかっているのはあなたよ!
「レミー!」
「うん、あーちゃん!」
私の炎とレミーの水がぶつかり合う。普通ならば対消滅するだけだけどタイミングさえ合えば・・・水蒸気爆発を引き起こす!
「くっくっく・・・甘い!」
インキュバスの周りの空間が歪む? ううん、あ・・・れ・・・は・・・。あ・・・たま・・・クラクラ・・・
「あ、あーちゃんしっかり!」
・・・はっ!? 私今一体どうしてたの? あ! 私が意識をなくしていた間に炎と水が・・・わ、私が足を引っ張っちゃうなんて・・・
「くっくっく、これでわかっただろ。女の身で我に逆らうなど無駄なこと。・・・我に従え、我を愛せよ。」
だ、誰があんたなんかを・・・くぅ、また・・・
「は・・・はい。インキュバス様・・・。」
「だ、駄目だよ! あーちゃん! しっかり!!」
・・・うう、また・・・でも、あなたなんかに! あなたなんかに!!
「この・・・これ以上私の心を貴様などいいようにされてたまるか!! ファイヤーバード!!」
「わたしも手伝うよ~! イリュージョンアロー!」
まだ私の実力では厳しい詠唱抜きのファイヤーバードも怒りに満ちた私の心を反映してか、それほど威力の低下は見られない。そしてレミー必殺のイリュージョンアロー
「な、何!? 我の支配を解いただと!? ぐぉぉぉおおおおおお!」
私の・・・リュウトへの思いはあんたなんかじゃ勝てないんだから!!
「・・・などと言うとでも思ったか?」
えっ!? しまった! インキュバスは夢魔・・・幻惑が得意だった・・・。
「くっくっく、我が名はシモン。シモン=ダルク・・・さぁ、迷うことはない。汝の思い開放するがいい。」
い、嫌・・・嫌よ~・・・私が好きなのはリュウトでこの人なんかじゃ・・・なんかじゃ・・・ああ、好きです~。
「ああ、シモン様・・・好きです。愛しています。」
くっくっく、やはり天使には少々効きは悪いがエルフの女は落ちたな。いや・・・今のままではまだ不完全だ。永久に解けぬ呪縛を・・・我を生涯愛し仕えるがいい。
「さぁ、新しいお前になる為の儀式だ。」
「はい・・・シモン様。」
エルフの女の周りを我が出した紫の霧が覆っていく。この霧が晴れたときこそ・・・何!?
あれ? 私は一体何をしてたんだろう?
「あーちゃん・・・気がついた?」
レミー? じゃあ、目の前のこの白いものは・・・レミーの羽!?
「よかった・・・とっさにあーちゃんをわたしの羽で包んで守ったんだけど・・・効果あったみたいだね。でも・・・ごめんね。わたしももう・・・・もちそうにないの・・・。」
私を守っていた羽がだんだん開いていき、虚ろなレミーの目が見えた。きっと・・・さっきまでの私もこんな感じ・・・ううん、もっと酷かったんだろうな。
「安心してくれ。・・・後は私がやろう。」
「うん、おね・・・がいね。・・・ああ~シーく~ん~。」
レミー・・・ありがとう、そして必ず助けるから・・・
「くっくっく・・・少々意外だったが、頼みの綱の天使は我が手に落ちた。お前も再び我が手の中に戻るといい。」
再び充満しはじめる紫の霧。・・・でも! 私の思いの全てをかけて必ず!!
「我が思いの形は常に一つ・・・汝の力を借りて、ここに現出させん!」
詠唱とは言霊。言霊はその言葉に重みがあればあるほど、真実があればあるほどその力を増す。だから、お願い・・・リュウト! あなたの力、私に貸して!!
「ドラゴンソウル!!!」
私の思いを! 願いを受けて現れたのは一匹の炎の竜。一匹と言えどもその力はファイヤーバードを遥かに凌ぐ。そして
「馬鹿な!? 我が幻術が食い破られていく!? くっ、離せ! 我は・・・我は~~~!!」
インキュバスは炎の竜の牙に噛み砕かれる。・・・人の思いを散々もてあそんだものにふさわしいでしょ? 思いの本当の力の前に散りなさい。
結構危ないところもありましたが最後はやっぱり真実が勝つものです。
アキ「ほほお、言うことはそれだけか?」
・・・あ、あの~なんか機嫌悪くないですか?
アキ「いいと思うか? わ、私が操られていたとはいえあんな奴を好きだと!? あああ、愛してるだと!? そんなことを言わされるなんて!! リュウトに知られて振られでもしたらどうしてくれる!!」
あ、いや・・・たぶんそれは大丈夫じゃないかと・・・ひっ! だ、誰か・・・た・・・す・・・け・・・て・・・。
レミー「う~、わたしも怒ろうと思ったけど・・・あーちゃんに任せておいたほうがよさそう。・・・ってことで次回もよろしくね~。」




