12部8章「報酬という名の訓練?」26話 「返された答え」
明日、間違いなく待ってる激戦のためか、いつもよりもにぎやかだった気がする食事も終えて多くのものが睡眠をとっている。俺も寝てもかまわないし、レオンがこの空間で奇襲を仕掛けてくるような奴ではないことはわかっているが、必要性も薄いということでなんとなくにたき火のそばにいると
「どうした? 用があるなら出てこいよ・・・アシュラ」
背後から感じる気配に俺はそう言う。まったく、わざわざ気配を出して気が付かせるのならば正面から普通に来ればいいものを
「さすがだな。オレの気配に気がつくとは・・・」
そんなことを言いながら正面に回るアシュラ・・・ん? このやり取り、どこかで同じことがあったような?(1部9章6話参照)
「ああ、そうか。あの時の再現か」
俺が気が付いたことにクククと笑うアシュラ。こいつがこんな悪戯を仕掛けるなんて随分丸くなったというかお茶目になったというか・・・良いことだけどな
「あの時もまたこうやって飲もうと約束したな」
まぁ、今飲むとしたら俺が作る粗悪品しかないわけなんだが・・・ん? そう言えばアシュラは食事の時にワインを飲んでいたような?
「ふん、貴様と飲むのも久しいと思っただけだ」
そう言えばそうだな。俺はあまり飲む方じゃないというのもあるが、さっきのような食事会ならばともかくこうやって飲む目的で集まるのは少ない
「ははっ、悪いな。しかし、今来たところで碌な酒はないぞ」
「ワインならば腐るほどある」
そんな俺の言葉にアシュラは黒い穴から何本ものワイン瓶を取り出して・・・そう言えば悪魔族には自分の拠点と繋がる穴を作る能力があったな。これこそ久しく見ていなかったから忘れていたよ
「なんだ、それならばこの空間を条件なんて満たさずとも抜けられたんじゃないか?」
そう問いかける俺に少しばかり機嫌を悪くして一本のワイン瓶を押し付けて来るアシュラ。こいつの持っているワインは数百年物のそれも元々結構いいワインということもあり美味い。ありがたく貰っておこう
しかし、要するにここから出れないという建前でアシュラはここに滞在し続けたということはだ
「レミーは楽しんでいたか?」
「知らん」
ぶっきらぼうにそう言うアシュラ。まぁ、レミーがアシュラと居て楽しめないということはないだろう
「あいつは俺にとっても妹みたいな存在だからな。アシュラにならば任せられるよ」
「ふん、コクトの奴に斬られても知らんぞ」
確かにあの重度のシスコンならば勝手に兄を名乗ったら斬りつけてきそうな気がする。いや、どっちかと言うとそれはすでにやったことがあるからレミーをアシュラに任せようとすることに対してかも知れないが
「違いない。俺も仲間に斬られるのは嫌だからな」
アシュラは特に何も言わないが、なかなかに面白い表情をしているな。まぁ、こいつの表情はそこそこにわかりにくいのも事実だが
「・・・あの時の答えは示されたようだな」
あの時とは邪竜神との戦いの前にこうやって飲んだときだろう。そうあの時に問いかけられたものは
「なんだ、俺はとっくの昔に答えが出ていると思っていたぞ? 光も闇も関係ない。俺の仲間たちを見ればわかるだろう? それにお前とはいまだにこうやって飲む関係だ」
光と闇は戦いあう関係、アシュラはあの時にそう言った。だが、今はどうだろう? アシュラだって光属性のものを仲間と認識しているだろう。レミーとだっていい関係になっているしな
「ふん、下らんことを言った」
アシュラは自身の発言をそう言ったが、俺はそれを下らないとは思わない。例え、わかり切った答えでも口に出してみるというのは案外大事なことだ。きっと、今の問いと答えでアシュラの中で何かが変わった・・・俺はそう思うよ
「おっ、良いもの飲んでいるじゃねぇか。俺にもそれくれよ」
そして真夜中過ぎに美鬼が俺たちの飲み会を発見して参入してくるまでほとんど会話のない有意義な飲み会は続いた
今回は少し短めでですがここまでです。そしてこの章の最後でもあります
レミー「えへへ・・・アーくん、わたしと一緒にいたかったんだ」
あってはいるんですが・・・何故に章最後のゲストがレミーなのか?
レミー「ム~、そんなの知らないよ?」
でしょうね。あの女神あたりの悪戯な気がしますが、それを言うと厄介ごとが起きそうなので早速次章の予告・・・えっと、この紙を読んでください
レミー「え~っと『渦を抜けた先にあったものは巨大な迷宮? そして襲い掛かる二人の・・・次章竜神伝説第12部9章「魂、託して」』ム~、よくわからないけど、きっとわたしも大活躍だよ~」




