12部8章「報酬という名の訓練?」24話 「みんなの夢」
「あはははは、やっぱりそう言うところはリュウトだね。でも・・・そうだね。みんなで守っていこう。私たちならばきっとできる! だって、みんな同じ目的を持っているんだから!」
私の言葉に今度はリュウトがキョトンとする。そうだよね、リュウトはみんな違う目的持っていると思っているもん。確かに細かいところはみんな違うよ? でも大本はリュウトが大好きだからなんだよ。意味は違ってもレミーやコクトだって同じだよ
「目的が同じ?」
「そうだよ、でも何が同じなのかはリュウトが気が付かないと駄目かな?」
私の言葉にリュウトがさらに首をかしげて悩む。以前に比べればだいぶマシになったけど、それでもリュウトはやっぱり鈍いからね
「ご主人様も十分鈍いですけどね」
人の心を読んだように余計なことを呟いたミリーはしっかりと力を入れて握っておいたけど、今度は空気を呼んだのか声は上げなかった。なんか少し悶えていたような気もするけど・・・でも、なんで杖に痛覚があるのかな?
「なぁ、アキ? これって間違えていたら酷い自惚れも良いところなんだが・・・」
あっ、リュウトが気が付いた? そっか、私の前に皆も同じようなことを話したりしたのかもしれない。リュウトを成長なんていうとそれこそ自惚れで傲慢だけど、それをさせたのが私だけでないことに少しの嫉妬も覚える。でも、最後に背中を押したのは私だよね? あっ、流石にリュウトも言いにくそうにしているから
「うん、きっとそれであっているよ」
少しばかり目が泳いでいるリュウトが言いたいことなんてわかる。その程度もわからないほど、私とリュウトの間にあるものは薄くないと私は確信しているもん
「そ、そっか」
どっちみちリュウトが恥ずかしがるというか苦笑するしかないことに変わりはないんだけどね。でも、どうにもリュウトはこの手の方向に自信がないんだよね。強さとかそういう方向ならば自信があるというか竜神の誇り? みたいなものは持っているけど・・・ううん、違うよね。リュウトが自分の強さを誇れるのは先代以前の竜神に敬意を払っているから。自分が弱いことを認めることは先代以前を貶めるから。リュウトは自分以外のもののためならばどこまででも虚勢も張れるし、強くもなれる
「私だけだったらもっとよかったのかな」
「ん? 何か言ったか?」
リュウトだったら聞く気ならばしっかりと聞けたであろう私のつぶやきを聞き逃したことに少し安心する。リュウトって本当に普段はそうやって聞かれたくないような言葉を聞かないでくれる。うん、今のは間違いなく私の弱さであり醜さだった。ものすごく酷い嫉妬。だって、リュウトには、私たちにはさらなる力が必要なんだから。その力の源が多すぎて困ることはきっとない
「ううん、何でもないよ」
だから醜い私はリュウトには見せない。きっとリュウトはそんなところも可愛いとか嫉妬してくれるのも嬉しいとか言いそうな気がするけど、それを褒められるのはちょっと嫌と言うかプライドに触るというか
「そっか。でも、それならば益々負けられない・・・いや、死ねないな」
「当然だよ」
リュウトが負けること、イコール死ぬことは間違いなく全滅を意味する。リュウトの前に私たちなのか、リュウトの後に私たちなのかはわからないけど結果は同じ。万が一ある程度渡りあえるとしたらアシュラだけなんだけど、たぶんアシュラでもリュウトの最高潮には遠く及ばないしこれから差は開いていくんだと思う。そしてそれはアシュラも気が付いている。だからアシュラはリュウトと戦うのを好むし勝った後に苦々しい顔をほんの少しする。リュウト相手ならば共闘もするあたりもきっとそう。私たちがリュウトとかかわりのないことで頼んでもきっと応じてはくれない
「ただ、わかっているよね? それはレオンとか世界とか関係ないよ」
リュウトがいなくなった後に私たちが無事であろうと世界が無事であろうと結果は変わらない。そりゃ、みんながみんなリュウトがいなくなったことに悲観して死を選ぶってわけじゃないよ? 私だって復活の目があったとはいえリュウトのいない百年を過ごしているし。でも、その時に私たちが思いっきり不幸であるということは動かしようがないと思う。あの時だってそうだった・・・きっと今はそれ以上に苦しく思うと思う。体だけじゃない、心だって死ぬんだってそう思うから
「わかっている。ははっ、まさか俺がこんなことを言う日が来るなんてな」
本当にリュウトはこっちの方向に自信がない。でも、私たちの思いを素直に受け入れてくれるようになったのは前進かな? 願わくば、みんなが幸せに平穏に暮らせる日々がいつか来ますように・・・って、それは私たち次第だよね? みんなの夢、必ずかなえようね、リュウト
と言うわけで今回はアキ編でした
アキ「いつもいつも最後に回される方の気にもなってほしいよ」
でも最初と最後が一番印象に残るところでもありますしね
アキ「あれ? そう言えば今回の最初はお姉ちゃん・・・間に挟まったのがひっくり返って全部私たちの番?」
そんなリバーシみたいなルールはありません。それを言ったらリュウト・リデアの兄妹で途中でひっくり返りますしね
アキ「リュウトは当然のように必須だもんね。でも、ちょっと変わった章だったのも事実だね」
もう少しだけありますけどね、この章は。ともあれこれでリュウトは地味にかなり強化されたりしていますから戦闘パートもお楽しみに・・・でいいのかな?
アキ「私に聞かれても困るよ」
そりゃそうか、と言ったところで今回はお開きです。次回もよろしくお願いしますね~




