次々と襲撃されて、魔女は大層お怒りです。
「だあぁっ! もうっ! 面倒くさい!!」
私は力の限り叫びました。
部屋の中には息子もグレーテルも聖女もいますが、もう今更口調を作る元気はありません。
「確かに。本当にしつこいですよね」
聖女が困ったように笑っています。
ただ、その目は凍えて冷え切って、部屋の中で芋虫のようにロープでぐるぐる巻きにきした、隊長、とやらを見ています。
そう、しつこいんです。
ロンダリア帝国、しつこいんです。
一度隣の国に引っ越したものの、数日でまた兵士たちが詰め掛けてきたのです。
何度追い払ってもやってきて、どこに引っ越しても必ず突き止めてくる。
なんなの。暇なの!? とそのたびに私は怒り狂います。
子供たちを気軽に外で遊ばせてあげられなくなりましたし、私も、一人じゃ危ないからって何時でも聖女が隣にくっついてくるんです。
なんで私は土属性なんですかね! 闇魔法チートで、うざったい!!って言ったら大分すっきりするんですけどね!!
「どうやら、国家間で魔女討伐の連合を作ったようですね。ロンダリア帝国の王子と聖女を攫った悪しき魔女の討伐が目的、と」
聖女が隊長をじっと見据えて何かを読みとっています。
「父は、目的のためなら手段を選ばない方ですから。ロンダリア帝国は救世の大国ですから、求められればどの国も協力するしかないのです」
申し訳なさそうに、グレーテルが言います。私も、あの腐れ元王子なら平気でやるだろうね! と荒んだ心で頷きます。
兵士たちがくる度に家は荒れるし、庭は作り直しだし、商品の納品は遅くなるし、大迷惑です。
聖女が全て一瞬でなんとかしてくれる? それが一番ストレスなんですよ! おばあちゃんじゃなくても、10も年上の女に詰め寄って何が楽しいんですかね。
「では、そろそろ、お仕置きの時間といきましょうか?」
聖女がもはや標準装備となった悪そうで男臭い笑みを浮かべます。
――――ロンダリア帝国、終わったかもしれない…。
準備したのは、全員の服。聖女は髪を元に戻して、息子とグレーテルは飾り立てる。私は魔女の黒装束。
「戦闘準備はOKですか? じゃあ、行くよ!」




