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王子による昔語り③

【王子:現在は呪いが解けたグレーテルによる回想】




 突然父に呼び出されて、私の結婚が決まったと告げられました。

 結婚相手は、異世界から召喚する聖女。名前も顔も分からず、性格も信念も分からない。そんな相手と結婚しろと告げられて、私は驚きましたが、了承しました。

「異世界の女は変わっているが、おもしろいぞ。お前も気にいるだろう」

 父が楽しそうに言います。

 しかし、私は気が重くて仕方ありません。

 私の様な歪な人間と結婚しなければならない不幸な女性。彼女を幸せに出来る自信が、私にはひとかけらもありませんでした。


 王宮の奥にある神聖な間で、儀式はひっそりと行われました。

 父の側近である宮廷魔術師と、懐刀の近衛隊長。隣の部屋には集められるだけの魔術師が集い、魔力を高めて練っています。想像もつかないような大量の魔力を込めて、異世界召喚の呪文を宮廷魔術師が唱えました。


 そして、部屋に光が満ちます。

 その中から零れるように現れたのは、誰もが目を魅かれるような、魅力的な人でした。


 その人は、突然ここに連れてこられたにも関わらず、取乱しもせずに父の話を聞いていました。

 異世界であることにいち早く気づき、何かを納得し、私との結婚を聞いても眉ひとつ動かすこともなく微笑んでいました。

 その全てに不信感を持つべきなのに、私はなぜか納得してしまいました。


 私はこの人を待っていたのだ、と。


 その人は名前を尋ねられたので、鈴の音を鳴らすような声で答えました。

「コウキ=イガラシと申します。どうぞコウキとお呼び下さい」

 にこりと笑います。

 不思議な響きの名前は、何故だかとても耳に優しく、私の心に届きました。


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