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「買い物に行きましょう」
「水晶玉を買いに行きましょう」
「でもアタシは魔女だ。街中には出られないよ」
「服を変えれば分かりません。それに、化粧をすれば印象は大分変わりますよ」
聖女が指を鳴らすと、私の服が変わっていました。
これも一種の『協力魔法』ですが、着せ替えに使う人はもちろん居ないでしょう。
国の上層部が知れば、勿体なさにハンカチを噛むに違いありません。
鏡を見ると、刺繍の入ったブラウスに臙脂色のガウンを羽織り、チェック柄のロングスカートを履いた老婦人がいました。
ぼさぼさだった白髪は綺麗に整えられ、まるで銀髪のように輝いています。血色の悪かった肌は化粧をされて、皺が減りシミが隠れ、頬がピンク色。目の周りは微笑んでいるように優しげです。
どこからどう見ても、良い意味で歳を重ねてきた貴婦人のような女性でした。
「はあ、あんたはセンスが良いんだね…」
呆れて呟いただけなのに、聖女は随分喜んでいました。




