表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
【書籍化&コミカライズ】転生した私は幼い女伯爵 後見人の公爵に餌付けしながら、領地発展のために万能魔法で色々作るつもりです  作者: もーりんもも
第一章 伯爵家の当主になりました

この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

24/180

24 領地視察④

 冷や汗を吹き出しそうなご主人に無理やり案内させて、私たちは無事に厨房に辿り着いた。


「これのことでしょうか?」

「(知らない。でも多分)そう」

「えーと。温めましょうか?」

「待って!」

「ひゃっ。ひゃいっ」


 いや、怒ってないから。


「落ち着いて、ご主人。どうせならちゃんとチーズが生きるように食材と一緒に食べたいと思っただけなの。この厨房にある食材もいただいていいかしら? もちろん料金はお支払いするわ」

「そ、そ、そ、そ、そんな。りょ、りょう、料金!?」


 何も、「領地にある物は全部私の物」だなんて思ってないんだけど?


「手間をかける分、卸値じゃなくて商店で売られている売価をお支払いするわ。レイモン、お願いね」

「かしこまりました」

「じゃ」


 全員が、「じゃ」とは? と、怪訝な表情を浮かべた。

 ご飯の準備に決まっているでしょうが!







「結構いろんな食材があるのね」


 厨房には予想以上に食料が並んでいた。


「ローラ。とりあえずバゲットはいるでしょ。それからブロッコリーとジャガイモと人参。一口大に切って茹でてちょうだい。あら。ハムもあるのね。これもいただきましょう」

「かしこまりました」


 野菜だけじゃ物足りないな。やっぱり肉と野菜だよね。チーズなら鶏肉に合いそう。


「ご主人。鶏肉はあるかしら?」

「は? はい。こちらに」


 あら。やっとかまずに返事できたじゃない。


「ローラ。鶏肉は皮をパリパリに焼いて、その後一口大に切ってちょうだい」

「かしこまりました」

「言い忘れていたけれど、ここにいる全員分を作ってね?」

「マルティーヌ様。それは――」


 レイモンに最後まで言わせたら私の負けだ。この戦いは絶対に負けられない。


「ここで、()()()でお昼をいただきましょう。もうお昼でしょ?」


 少なくとも私の腹時計は昼だ。


「ですが――」

「別々に食事を準備する方が時間がかかるし、こちらにご迷惑をおかけすると思うわ。あとリエーフ。あなた、昨日の視察ではろくに食べなかったでしょう? レイモンと交代でもいいから、今日は食べてね。これは命令です」


 




 ――ということで。


 調理した食材とチーズを先ほどの食堂に運んでもらった。

 長テーブルのお誕生日席に私、その反対側にレイモンとローラが座った。レイモンとローラが先に食べて、二人とリエーフが交代するらしい。


 私の前には、バゲットと野菜とハムとチキンがお皿の上で、今か今かとチーズの雪崩を待っている。


「で、では。失礼致します」


 くぅ。やっとだー!

 ご主人がお皿の上にチーズを流しかけてくれた。

 キター! これ! これ! これ!


 目で私の表情を窺っているけど、あともうちょっとだけお願い。大丈夫。お皿からこぼれる手前で「ストップ」って言うから。


 全ての食材がチーズで隠されてからも、これでもかと重ねがけしてもらって、ようやく私は、「ありがとう」とご主人の手を止めた。


 ぐふふふ。

 テーブルの向こうでも同じ作業が行われ、ご主人も一緒に席に着いた。


「それではいただきましょう」


 私の合図で皆一斉にフォークを手にした。

 私はバゲットがあった辺りにフォークを刺して、見事的中。バゲットを掘り起こし、あぶれたチーズをすくえるだけすくって口に運んだ。


 きゃー!! そうコレ! うーーん、美味しい!! 塩気を含んだチーズと合うわー。

 じゃ、次はチキン。もう、ローラったら。お子ちゃまの口に合わせて、ものすごく小ぶりな一口大に切ってくれている。

 どれどれ。はぅぁっ。いいっ! しっかりパリンパリンに皮を焼いてくれている。あ、さすがローラ。言わなくてもちゃんと塩、胡椒してから焼いてくれたんだ。


 ローラの料理センスは信用しているから、細かいことは言わなかったけど嬉しいな。

 あぁそしてチーズにくるまれたチキンは美味しい! うん。この鶏肉ジューシーだわ。うちの領地にいい品種の鶏がいてよかった!



 え? はやっ。レイモンとローラはもう食べ終わったの? でも心なしか表情が緩んでいるみたい。堪能できたのかな。それならよかった。

 リエーフも早食いだな。あれ? でもちょっと。気のせいかもしれないけど目が輝いている?


 …………? もしや()()のこと? この感情がそうなの? 若い男の子にご飯をお腹いっぱい食べさせてあげる快感……。

 うわー。あっという間になくなっていく。私はずっとリエーフを見ているから、彼が正面を向くと必然的に目が合う訳で。あ。目を逸らされた。くぅ。


 それでも手を休ませることなく食べ続ける美少年の様子は眼福もの。ん? 今、目をパチパチって――あ、目を大きく見開いた。

 うっふっふっ。感激しているんでしょ。

 レイモンの指導によるものなのかわからないけど、リエーフの表情筋の動く範囲は狭い。いつか満面の笑顔も見せてほしいな。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
追放された悪辣幼女の辺境生活 〜チート魔法と小人さんのお陰で健康で文化的な最高レベルの生活を営んでいます〜
第二部の連載を再開しました!

12月17日(水)に発売される『転生した私は幼い女伯爵』4巻の書影が公開されました。
あらすじやイラストは詳細ページをご覧ください。
予約受付中です!amazon 楽天紀伊國屋書店ヨドバシカメラなど
i1056363

カドコミ にて『転生した私は幼い女伯爵』のコミカライズ連載中です。

『転生した私は幼い女伯爵』コミック1巻 好評発売中です!
amazon 楽天紀伊國屋書店ヨドバシカメラなど
i1033447

『私が帰りたい場所は ~居場所をなくした令嬢が『溶けない氷像』と噂される領主様のもとで幸せになるまで~』
DREノベルスから全2巻発売中!
購入はこちらから。amazon 楽天紀伊國屋書店ヨドバシカメラなど
i929017
― 新着の感想 ―
[一言] かなり無茶苦茶やる領主様だと後世では評判になりそう
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ