163 足裏マッサージ①
カドコミ(下にリンク有り)で4話②が更新されています。
いよいよ成形魔法のお披露目です!
オーベルジュを利用されるお客様への一番のおもてなしは『料理』。
風光明媚な場所にあるオーベルジュなら、それだけを目当てに訪れ、周辺の散策などをしてのんびり過ごせばいいけれど、うちは違う。
なので、宿泊客の満足度を上げるために――食事以外何もすることがないなんて言われないために、ワークショップコーナーを設けたり、森林浴プランを提案できるよう整備した。
若干女子寄りなのは置いておくとして。
お客様によってはどちらも興味ないかもしれないし、そもそも商談等で他領から訪れただけで、ただ宿泊するだけのつもりで予約される方もいるだろう。
そういう方たちにもちょっとしたサービスを提供したいので、宿泊客へのおもてなしとして、希望される方に足裏マッサージを受けてもらおうと思う。
森林浴帰りやお仕事終わりでチェックインされた後などに、お部屋で足裏マッサージを受けていただくのだ。
貴族ならば使用人の手で体も髪も洗ってもらっているだろうから、それほど感動はないかもしれない。
でも普通の平民は誰かに丁寧にマッサージされることなんて、ほとんどないと思う。
コースは足湯五分プラスマッサージ五分程度の軽いものから始めてみるつもり。
お客様の反応がよければ、追加料金を取って、首や肩などのマッサージを含めた六十分コースとかを設計すればいい。
準備等含め三十分あれば足りるかな。あ、マッサージ後のお茶とかまで含めるともう少しいるかも。
満室になったとしても時間をずらせば二、三名で対応できるので、レストランの客がまばらなランチからディナーの間にリソースを有効活用できる。
担当はお客様と同性の従業員が原則だな。
男性のお客様から「もう少し強くしてほしい」という要望があった場合、力の強い男性の方がいいだろうし、万が一にも閉鎖空間の部屋で間違いが起こってはいけないもんね。
――ということを、オーベルジュへ向かう馬車の中でニマニマした顔で考えていた。
ローラは何も言わないけれど、絶対に締まりのない顔をしていたと思う。
「コホン」
「ん?」
「マルティーヌ様。最近はお休みの日は毎日オーベルジュへいらっしゃっていますが、お疲れではありませんか?」
「大丈夫よ? 一日中いる訳でもないし、行っても指示するだけだからちっとも疲れないわ」
「それならよいのですが」
まあ全然疲れないというのは嘘だけど。
だって口で説明するだけでは正確に伝わらなくて、結構ストレスが溜まるんだよね。
そう思うと今日の指示は過去イチ難しい。
マッサージなんて受けたことのない人は、何を言ってんだ? って思うよねぇ。
でも領主の私が平民の足裏をモミモミなんて絶対にできないしねぇ。うーん。伝わるかなぁ……。
今日も護衛は贅沢にリエーフとシェリルの二名だ。
今日のお茶の時間に私が訪問することは連絡してあるけれど、馬車がオーベルジュに到着する少し前にシェリルが馬を走らせて私の到着を知らせてくれた。
私が馬車を降りると出迎えのために従業員が二人立っていた。
「ようこそお越しくださいました」
私にもお客様対応をするように言ってあるので、これでいい。
でも今日のミーティングは客室で行うので、現時点では使用していないフロントへと繋がるドアから入り二階へ上がる。
うちのオーベルジュでは東側の角部屋が最上位の部屋となっている。だって王太子が泊まったんだもんね。
なので、私もそこへ通された。
「マルティーヌ様。お茶は後ほどということで、ご指示通りお湯をお持ちしました」
出迎えてくれた使用人とは別の使用人が、直径四十センチほどの盥と、お湯が入っている大きなポットを持ってきてくれた。
深さ十センチくらいまでお湯を入れるので、深めの盥を作るよう依頼していたけれど、ちゃんと注文通りの物ができている。
使用人はソファーに座っている私に見えるところに盥を置き、ポットのお湯を注いだ。
中身は熱湯で湯気がもうもうと上がっている。
そして空になったポットを持って部屋を出ていくと、すぐにまたポットを持って戻って来た。今度はお水を入れて来たのだ。
「気をつけてね。人肌よりも少しだけ熱めでお願いね」
「はい」
本来なら自分の足で確かめたいところだけどグッと我慢する。
貴族令嬢が人前で裸足を晒すのは御法度なので。
仕方がないので心を鬼にしてローラを差し出す。
「ローラ。裸足になって、その盥の中に足を入れてちょうだい」
さすがに、「え?」とは言わなかったけれど、ローラがバッキバキに睨んできた。
うん。ごめんね。絶対反対されると思ったし、嫌がるかなぁ? と思って事前には言えなかったんだ。
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