157 ワークショップ
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王太子たちは昼食後にいったん部屋で休むとのことだったので、私もカントリーハウスに戻ろうと思ったら、護衛の方が一人足早にやって来た。
「恐れながら、モンテンセン伯爵」
「はい。なんでしょうか?」
「……主人がそちらの店舗も気になるとのことでしたので、よろしければご案内いただけると助かるのですが」
今、王太子のことを何て言おうか迷ったね?
そりゃ、『ガイ』なんて呼べないもんね。
「こちらでは、お好きなハーブをブレンドして自分だけのハーブティーを作る体験をしていただく場所になります。もちろん私どもがお勧めするブレンドティーも販売する予定ですが。体験を希望されるのでしたら私がご案内いたします」
「さようでございましたか。それでは、その旨を主人に確認して参りますので、少々お待ちいただけますでしょうか」
「ええ、もちろん構いませんわ」
結局、三人とも「体験してみたい」と、ちっとも休まずに揃って降りて来た。
何も言わなくてもローラがお湯の準備のために厨房に行ってくれる。
「それでは皆様ご案内いたします。こちらのドアからお入りください」
接客をしていた前世の癖で、ドアを開けて押さえ、お客様に「どうぞ」と言うと、公爵に眉を顰められた。
今の私ってどういう立場なの? 店員じゃなくてオーナーだとしても、『伯爵』である私がやるのは駄目だった?
急に手が軽くなったと思ったら、先ほどの騎士がドアの上の方を押さえてくれていた。
「女性に、しかも子どもにそのような真似をさせたとなると、僕たちは随分と礼儀知らずな人間になっちゃうよ」
あ、そっちか。多少の逸脱は気にも留めないパトリックに注意されるとは心外だけど。
「失礼いたしました。初めてお客様をお迎えするものですから、つい」
「何が『つい』だ」と言いたげに公爵は睨みつけてくるけど、謝ったでしょ。
でも気をつけないと平民に対してもうっかりやっちゃいそうだなぁ。
とりあえずさっさと中に入って始めてしまおう。
「コホン。まずは簡単にご説明させていただきます」
今から喋るよって言ったのに、王太子が先に話し出しちゃった。
「この大きな瓶は中身がよく見えていいね。こうして並んでいると、いい具合に目移りするから色々と手に取りたくなるね」
はい、特注しました。単に私がそうやって並べたかっただけなんですけどね。
「ありがとうございます。そちらの壁面の棚に並べてあるのが乾燥ハーブになります。まずはミントティーをどうぞ。こちらは裏の畑から摘んだばかりの新鮮なミントになります」
部屋に入る前から、既にローラとホール係の一人が準備してくれていたのだ。
平民なら立ったまま受け取ってソーサーを持って飲みそうだけど、さすがは高位貴族の三人。ちゃんと椅子に腰掛けてサーブされるのを待った。
一応、中央の大きな作業台の両側にそれぞれ、立ち飲み屋にあるような小ぶりな丸テーブルが二つと、カフェの一人がけのテーブル席のようなものを二セット置いてある。
「すごい香りだね! ミントティーか。僕は初めて飲んだよ。ジュリアンに頼めば王都に帰ってからも飲めるかな?」
パトリックが最初に褒めてくれた。
「ええ。ジュリアンさんも育てられていると思います。こちらのレモングラスもお勧めですので、ぜひお味をお確かめください」
ちょうどローラが二つ目のポットを持ってきてくれたところだ。
「レモングラスはブレンドしやすいので、こちらをベースに気になるハーブを足すのがよろしいかと。ミントをブレンドしてもよいですし、柑橘系やローズなどもお勧めです」
ええと。女性が好むブレンドの話になっちゃったけど、男性にも通じるかな?
「マルティーヌ嬢は博識だね? いったいどこでそんな知識を?」
王太子はさっきからうるさいね。
「もちろんリュドビク様が支援なさっている薬師のジュリアンさんです。私も縁あって昨年からジュリアンさんに師事しております」
「へぇ……。だとしたらフランクール公の功績はすごいね」
まあ、そうなるのかな?
公爵は無言のままレモングラスティーを飲んでいる。王太子とあんまり仲良くないのかな?
……ん?
今ちょっと……見てはいけないものを目にしたような……?
うわっ! 何で!? どうして!?
ハードルを低くするため、外からワークショップの様子が見えるようにと高額な透明ガラスを特注したので、部屋の中からも外の様子がよく見える。
公爵も気がついたみたい。
――そう。
どうしてアレスターがニタニタ笑っているんでしょうね。
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