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【書籍化&コミカライズ】転生した私は幼い女伯爵 後見人の公爵に餌付けしながら、領地発展のために万能魔法で色々作るつもりです  作者: もーりんもも
第二章 領地を改革します

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142 従業員の追加採用

 屋敷に戻ると、ジュリアンさんは薬草畑にいる一番弟子の元へ行ってしまった。

 まあ、私が頼んだんだけど。

 一番弟子の彼――名前はエディだと少し前にレイモンから聞いた――は、ジュリアンさんと一緒に薬草を植えたときから指導を受けていて、現状、私以外で薬草の調合ができる唯一の人物だ。薬師見習いと呼んでもいいと思う。


 将来的には、エディには調合室の初代室長になってもらう予定。まあしばらくは接客担当として、ハーブのブレンドのアドバイスをしてもらうことになると思うけれど。

 そんな訳で、兎にも角にもエディには、ジュリアンさんが領地にいる間はなるべく一緒に作業をして、彼から薬草に関する知識を貪欲に吸収し、早く一人前になってもらいたい。そして、後任をたくさん育ててほしい!

 ――とまあ調合室の人事はひとまず置いておいて、他の人員についてレイモンと話さなくてはならない。


 ローラに呼んでもらうとレイモンはすぐにやって来た。

 オーベルジュから帰ってすぐに呼ばれたということで、彼は何の話かピンときているらしい。


「レイモン。オーベルジュは素晴らしい出来だったわ。順調そのものよ。私の願望がそのまま形になっているわ」

「それはようございました」


 うん。それでね。


「頼んでいた従業員の教育の件だけど――」


 そう。オーベルジュ&レストランの方は即戦力が必要だから、レイモンに「二ヶ月で一人前にして」と無茶振りをしていたのだ。


「その件でしたら問題ないかと。オープンには間に合うと思います」

「そう? よかったわ。それからフロント係なんだけど、この前相談したときには、オーベルジュという『レストラン付きの観光宿』が我が領都にオープンしたことが周知されるまでは、客室の稼働率は低調だろうから、ひとまずフロントは一人でいいという話だったわね?」


 あら? 今、レイモンの目が光った気が……?


「はい。オーベルジュは、裕福な平民だけでなく貴族の方々もご利用されるとのことでしたので、フロントは相応の対応ができる者が必要ですが、現時点では一人しかおりません」


 ……うぅぅ。そうなんだよね。それは私も思っていた。


「ドニが独り立ちしましたので、その後任を育てていたのですが、ひとまずその者にフロントの対応をさせたいと考えております。今はキーファーさんの下で経験を積ませておりますが、私の方でもしっかり鍛えるつもりです」

「そうね。あなたには苦労をかけるけれどそうしてくれると助かるわ」

「はい。マルティーヌ様が必要とされるときに自信を持って推薦できる人物がいないというのは、私の不徳の致すところでございます。これからは体が動くうちに後任の指導に力を入れたいと思います」

「レイモン! そんな……。それもこれも全部先代のせいじゃないの――」


 なんか、本当にごめんなさい。そこまで思い詰めなくてもいいのに。

 レイモンが後任の育成にまで手が回らなかったのは仕方がないことだもの。

 そんな中でよくドニを育ててくれたわ。


 経営が軌道に乗れば、フロントは早番と遅番の二シフトにしたいから最低でも三人で回したいところだけど、まずはオープニングまでに一人確保ね。


「ま、まあ、フロントはそういうことで。清掃と洗濯の担当だけど、彼女たちの教育は順調かしら?」

「はい。オープンまでには一人前に仕事ができるようになると思いますが、宿泊施設は洗濯の量が多いので、あの二人は主に洗濯担当として、清掃担当を別にされた方がよろしいかと。部屋数はそれほど多くないので、満室の稼働が続かない限りは一人で大丈夫だと思います。領都の宿屋で長年働いていた者を採用いたしました。引退してからは孫の面倒を見ていたそうですが、その孫も手を離れたそうですので問題なさそうです」


 うん? 孫が成長して手を離れた? いったい何歳なの?


「ええと、女性かしら? 大きな孫がいるということは――」

「五十手前だそうですが体力もありそうでしたし、本人がやる気を見せていたのでご心配はいらないかと」

「そう。よかったわ。じゃあ次はレストランの方だけど、料理人はオットーが紹介してくれたのよね?」


 あのチーズ工房のオットーだ。

 初めての視察でふらっと立ち寄ったとき、やけに食材が充実していたなぁと思っていたら、彼はなかなかの美食家らしく、領都の有名レストランの常連客だった。

 というのはジェレミー情報だ。


「はい。とてもよい方を紹介していただきました。ハンスという者なのですが、元々はレストランの料理長だったところ、客に口説かれて、さる商家の料理人になったらしいのですが、どうもその商家の商売が思わしくなく契約が終わるとかで、またレストランに復帰しようかと考えていた矢先に我々が声をかけることができました。あちらにしても願ったり叶ったりということで、こちらからの申し出を快く引き受けてくれました」

「そうなの?! すごいタイミングね」

「はい。マルティーヌ様のやる気に幸運の女神が微笑んでくださったようです」


 うわぁ、すっごいラッキー! 女神様ありがとうございます!


「ロディにはソース開発とケチャップ製造を担当してもらうつもりだけど、忙しいときには厨房を手伝えるように、ハンスに鍛えてもらいたいわね」

「そうですね。厨房は細々とした仕事がたくさんありますから、一通りはできるようになっていただきたいですね」


「そうね。客の入りに応じてホール係から厨房の補助に回す計画だけど、洗い場だけでも専任が一人いた方がいいかしら? 下ごしらえも大変でしょうしね」

「まあ、その点も含め、マルティーヌ様とはハンスの着任時に話し合っていただく予定です」

「わかったわ。ホール係はこの前採用してもらった彼ら――ええと、女性二人は洗濯担当だから、残りが男女三人ずつになるわね」

「はい。カントリーハウスでも手際よく仕事をしていますので、こちらのレストランでのやり方が決まれば臨機応変に対応できるでしょう」


「じゃあ残りは――」

「お客様の馬車と馬を管理する馬手は、やはり当面はグレンの仕事になりますね。フィルは基礎的な勉強をしてからカントリーハウスで馬の扱いを覚える必要がありますから」

「そうねえ」

「グレンはタウンハウスで馬の面倒も見ていましたので心配ないと思います」


 結構カツカツで人のやりくりをすることになったけれど、無理をしてもらうつもりはない。

 うまくいかないときは、必殺『臨時休業』で立て直せばいい。

 早期の黒字化よりもホワイトな職場が優先だからね!

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