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【書籍化&コミカライズ】転生した私は幼い女伯爵 後見人の公爵に餌付けしながら、領地発展のために万能魔法で色々作るつもりです  作者: もーりんもも
第二章 領地を改革します

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140 レストランの従業員の制服

カドコミでコミカライズ連載中です!

 ローラが淹れてくれた紅茶をティーカップの半分ほど飲んだ頃、待ち人がやって来た。

 意外にもパンツスタイルだった!

 この世界で騎士でもない女性がパンツを履いているのを見ると、先進的というよりも前衛的な感じがする。


 三十代くらいかな? レンガ色の長い髪を編み込みの三つ編みにしている。

 去年の私ならガン見していることがモロバレだったと思うけれど、公爵邸での特訓を終えて表情操作を習得した今では、微笑を保ったままでいられる。

 これで第一印象はバッチリだと思う。


 制服のデザインを任せる予定の彼女は、遠くの方で「ヒャッホー」と叫んでいる。

 ……あれ? もしかしてヤバい感じの人?

 ヒャッハー系の人とは付き合いたくないんですけど。


「ローラ。彼女で間違いない?」

「はい。マルティーヌ様。いつもは落ち着かれているのですが、今日はどうも様子が違うようです」


 え? どういうこと?

 ローラが私の側から離れてテーブルの前に立ちはだかった。

 なぜかリエーフまでもが反応して険しい顔をして、いつでも止めれるぞとデザイナーさんを睨んでいる。

 私もなんか変な汗が出てきそう。


「マルティーヌ様ぁ! お会いしとぉございましたぁ!」


 領内のドレスメーカーとはいえ、貴族への対応はちゃんとできるはず……。

 なぜ友達に会いに来た感じで手を振るかな?

 手を振りながら小走りに駆け寄ってきたデザイナーさんに、ローラが特大の咳払いをお見舞いした。


「コホン!」


 お! レイモンみたいな咳払いだ。

 デザイナーさんは、小走りから早歩きくらいにペースダウンして、「ん?」と小首を傾げた。

 そして数歩進んでようやくその意味を理解したらしく、ハッとした表情で立ち止まった。

 そうです。私、幼いながら領主様なのです。


 そこからは恐る恐るといった感じで近寄ってきて、しょんぼりと挨拶をした。


「お初にお目にかかります。私、昨年ドレスを注文していただきました店の店長兼デザイナーをしておりますヘイリーと申します。以後、お見知りおきを。それにしても、マルティーヌ様の方からお声がけいただけるなんて――もう――本当にもう――うぅぅ」


 どうしよ。本当にちょっと危ない感じが……。


「私、新しい領主様が着任されるとお聞きしてからは、もう嬉しくて楽しみで、本当に興奮して寝られないくらいでした。もちろんお屋敷での着任の挨拶もお聞きしましたし、昨年の収穫祭も一番前で食べてました!」


 お、おう。なんか、どうしよう。

 私、今、顔大丈夫かな。ものすごく引いちゃってるんですけど。

 ヘイリーは最初こそ大人しかったのに、喋っているうちにヒートアップしちゃってるよ。

 隣でお茶を淹れているローラは、不機嫌さがもろ顔に出ちゃってるし。

 

「ヘイリーさん。どうぞ。お口に合うとよいのですが」


 ヘイリーに、「まずは一口飲んで落ち着け」って言ってくれた。

 ヘイリーもさすがに商売人らしく、「ありがとうございます」と言って、おとなしく黙って紅茶を飲んでくれた。


 落ち着いたかな?

 ここで話題を振ったら、また興奮しないかな?

 だいたい、客にこんな風に気を遣わせちゃ駄目でしょうに。


 ヘイリーがティーカップをソーサーに置いたところで私の方から話しかけた。

 このまま彼女に喋らせていたら(らち)が明かない。


「ヘイリーさん」

「はいっ」


 うーん。仕事に集中してほしい。そんな推しを見るような目で見ないでほしい。


「今日はわざわざ出向いてくださってありがとう」

「そんな! マルティーヌ様のためなら、いつでもどこにでも参ります! 何なりとお申し付けください!」


 いったい私の何がそんなに響いたの?

 

「え? えぇ……コホン。あまり時間がないので単刀直入にお話ししますね。あれが、今、まさに建設しているレストラン付きの宿泊施設です」

「はいっ!」

「……。あなたには、レストランで働いてもらう従業員の制服のデザインをお願いできないかと思って――」

「はいっ!」


 えぇぇ?

 貴族との会話で食い気味に返事をするって許されることなの?

 ローラがぷるぷるしているから、やっぱりマナー違反なんだね。

 まあ、その辺は後でローラに任せるとして。

 

 早いところ仕事モードに切り替えてほしいので、簡単なイメージイラストを広げた。

 一応、絵心のない私なりにデザインを描いてみたのだ。補足のメモでいっぱいだけど。

 オーベルジュの宿泊チームのスタッフは、カントリーハウスの使用人の制服と同じにするつもり。

 フロントは執事みたいなものだし、客室清掃や洗濯といった仕事はメイドと同じで、馬車と馬の管理は馬手の仕事になる。


 本当に運動会をやっていてよかった。

 私の目に留まった子どもがカントリーハウスの使用人として採用された話は領内を駆け巡ったらしく、世話役のところに、『あの子が採用されたのなら、うちの子だって』みたいな話がまあまあ持ち込まれたのだ。


 来年は大人も参加できる運動会にするとして、今年は世話役の紹介の中から追加で、気立てがよくテキパキ動ける女性を五人、男性を三人レイモンに採用してもらった。

 そのうちの女性二人が清掃&洗濯担当で、残りはレストランのホール係だ。今はカントリーハウスで修行してもらっている。

 フロントはレイモンに然るべき人物を推薦してもらうつもり。来年はフロント係の見習いとして二人ほど採用しなくっちゃ。

 馬手はフィルが一人前になるまでは、当面グレンが担当してくれることになった。

 タウンハウスに出入りしていた時に馬の扱いを学んだらしい。御者もできるから助かる。


「マルティーヌ様? こちらがマルティーヌ様考案のデザインですか?」


 おっと。また意識が飛んでいた。


「ええ、そうなの。私のイメージを伝えたくて描いてみたのだけれど」


 ふふん。私の頭に浮かんだのは、ゲームの「あ○森」のメイドのワンピースのデザイン。

 うちの島の住人がたまに着ていた可愛いデザインだ。

 ピンクの膝下丈のワンピースで、スカート部分の前側に白いエプロンを付けてもらう。

 ワンピースの襟と袖口も白。白いボウタイを蝶々結びにして!

 うっふっふっふ。

 極め付けは、ピンクに白いフリルのついたヘッドドレス!

 年配の方にはキツいかもしれないけれど、オープニングのスタッフは若い人たちだから、とりあえず私の妄想に付き合ってもらう。


「マルティーヌ様。す、素晴らしいです……これは……この白いエプロンは取り外しができた方がよろしいですか?」

「ん? そうねぇ……」

「かしこまりました! マルティーヌ様の思い描いた色がどれなのか、色見本からお選び頂けますか? あ、それとサイズ展開もいかがいたしましょう? 男性のデザイン画がないのですが、こちらは私どもにお任せいただけるのでしょうか?」


 うんうん。ようやくエンジンがかかってきたね。


「色は明るめのピンクを選んでちょうだい。あなたに任せるわ。サイズは大きめの三段階で考えているの。ウエストはエプロンを結ぶときにぎゅっと縛れるでしょ? あと男性の制服は黒を基調にしてシンプルなシャツとパンツでお願いね」

「お任せください! 必ずやマルティーヌ様にご満足いただけるものを仕上げてみせます!」


 お、おう。頼んだよ。


「では、ヘイリーさん。以後は何かあればカントリーハウスまでお知らせください」


 ローラがいつの間にか有能な秘書になってる!

7月16日(水)に「転生した私は幼い女伯爵」の3巻が発売されます。

予約受け中ですのでよろしくお願いします!

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追放された悪辣幼女の辺境生活 〜チート魔法と小人さんのお陰で健康で文化的な最高レベルの生活を営んでいます〜
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あらすじやイラストは詳細ページをご覧ください。
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