138 運動会の成果
7月8日(火)からカドコミにてコミカライズ連載が始まりますのでお楽しみに‼︎
ここから先は保護者面談をしながらのアプローチとなる。
といっても、さすがに領主が直々に家庭を訪問して、「お子さんを私に預けてくれませんか?」などと口説いたりはできない。
顔役からどこまで聞いているのかもわからないし、聞いていたとしても本気にしていないかもしれないので、きちんと将来のことを説明できる人間を派遣しないとね。
派遣とくれば、優秀な派遣社員の出番だ。
この際、キーファーとスコットには、公爵家へ返すまで何でも屋さんになってもらおう。
実際に何でもできる男たちだし。
そう考えて送り出した二人は、私の期待通りの働きをしてくれた。
なんと、全員から私の下で働く意思確認を取ってきてくれたのだ。晴れて全員採用することができた!
ヴィッキーはレストランで働いていたし、ロディーは畜産業に、小作人の息子のフィルは両親と共に農業に従事していた。
働き手を奪うだけの暴君にはなりたくないので、三人の後任の調整ありきで進めてもらった。
ここからは公費――国のではなく、モンテンセン伯爵領の費用で教育と職業訓練を実施していくので、レイモンと相談しながら進めていく。
「ええと、平民の子ども用の学校――初等科を卒業していたのは、ヴィッキーとロディだけだったわね?」
「はい、マルティーヌ様」
「じゃあ、まずは残りの五人を学校にやらないとね。前期に間に合うかしら?」
「その辺はあまり厳格に運用されていないので大丈夫だと思います。家業を手伝っている者が多いので、諸事情で一、二週間入学が遅れることはよくあることですので」
「そうなのね。では、できる限り引越しの準備を急いでもらいましょう」
「かしこまりました」
「タウンハウスにはメイドが一人だけだったわね。さすがに料理と洗濯と掃除と子供の面倒を見るのは不可能よね」
「数ヶ月後にはマルティーヌ様も王都に戻られますし、学園入学後は何かとお付き合いで忙しくなられるでしょう。高位貴族の家で働いた経験のある者を二人ほど雇い入れてはいかがでしょう。入学手続きと併せてドニに連絡しておきます」
おっ。公爵家でレベルアップしたドニの腕の見せ所だね。
「そうね。そうしましょう」
平民が通う初等科の学校は基本的に半年制だけど、半年で習得できなかった場合は、更に半年間在学することが可能だそう。落第が一回まで許されるってことね。
まあ王都で半年間生活を延長することを考えると、裕福な家の子どもに限られる。
新人五人は公費で勉強してもらうのだから、落第なんて許されないよ?
その点はどの子にもキーファーが口を酸っぱくして言い聞かせているはず。
勉強が苦手な子には辞退してもらうことになっていたので、全員、やる気を見せたのだろう。
レイモンは「予算については心配なさらずとも……」と言ってくれるけれど、やっぱりそこは甘やかしちゃいけないと思う。
一応よそ様の子どもを預かる訳だし、節約のためにも、半年間は王都のタウンハウスの使用人部屋から通ってもらうことにした。
一瞬だけ、今後も継続するのなら領民用の学生寮が必要か? とも思ったけれど、毎年何十人も送り出す訳じゃないし、ゆくゆくは領内で教育するつもりなので、そこにお金はかけたくない。
とりあえず、一部屋を二人で使用してもらえば十人でも五部屋で済むので、当面はその運用でいく。
――という風に、私の運動会を通しての採用計画は無事に予定通り達成できたので、その他の採用計画の方を真面目に考える。
見習いではなく即戦力の騎士の採用だ。
「ねえ、ディディエ。前に、『心当たりを当たってみる』って言っていたでしょう? その後いかが?」
ふふふん。午後のお茶にディディエを招待してのミーティングだ。
「はい。かつての同僚やその知り合いから紹介してもらい、何人かと手紙をやりとりしているところです。おそらく近日中にはよいご報告ができるかと」
「まあ!」
「リエーフの交代要員を最優先に探しておりますので、女性騎士は必ず一人連れてきてみせます」
おぉぉ。心強い。ディディエはよくわかってくれているなぁ。
もう、じゃんじゃん食べてね。
「ありがとう、ディディエ。プリンのお代わりはいかが?」
「はい。いただきます」
ディディエは相変わらずプリン一択。最近はもう、「何が食べたい?」って聞くのを止めた。
それにしても、女性騎士かぁ。どんな人が来てくれるのかなぁ?
7月16日(水)に「転生した私は幼い女伯爵」の3巻が発売されます。
予約受け中ですのでよろしくお願いします!




