137 採用者たち
さてさて。ここからは、目的だった人材登用の問題を片付けなきゃね。
予定していた採用枠はちゃんと埋まった。
まず、『騎士見習い』。
ヒースという十四歳の少年が選ばれた。
てっきり五十メートル走や障害物競走の上位入賞者から選ばれるかと思ったのに違った。
ヒースは悪い意味で印象に残っていた子だったので驚いた。
平均台を渡るとき、前の子どもを突き飛ばしていたし、麻袋に入った状態でアレスターの真似をしたかったのか、他の子どもに突進したりしていた。
随分な悪童じゃない?
意外な人選だったので、遠回しにディディエにその理由を尋ねたら、アレスターが横から口を挟んできた。
「ああいう悪ガキくらいがちょうどいい」
……は?
「生まれたときから人間に飼い慣らされた動物は、野生に帰しても生きていけないのは知っとるか? 野生味をなくした動物に何の価値がある? 野生のままの状態で飼い慣らすまでじゃ!」
……は? はぁ?!
何それ!? それだと、まるで私が野生の動物を求めていたみたいじゃないの! 違うでしょ!
まさか障害物競走で無茶苦茶していた子どもをアレスターが面白がって指名したりしていないよね?
ちょっとだけ心配。
「なあに、ご心配には及びません。礼儀作法ならなんとでもなります」
なぜかディディエが笑顔でそう請け負った。
本当に? そういうものなの?
でも、まあ。どんな子を騎士見習いとして採用するかはディディエに任せるという約束だったし。
「そうはいっても、それなりにものになりそうな子なんでしょうね?」
「ええ、まあ。元気がよいだけでなく、話をちゃんと聞く子でした」
そ。じゃ、アレスターとは違うってことね。
それでも女の子も一緒に選んでくれたのは助かった。
こちらはニーナ、十一歳。
女子の中の数少ない五十メートル走と障害物競走の参加者だ。
あのアレスターの試技を見ても躊躇せず参加した度胸は私も買う!
次に『文官見習い』。私の将来の補佐職。
これはもう文句なくイアンに決まった。レイモンも賛成してくれた。
あの謎解きでの活躍は今思い出しても見事だった。
後で十歳と聞いて驚いたもんね。
それに神経衰弱でも優勝したから記憶力もある。うんうん。いい子が見つかった。
そして『ロゴ製作者』。
もちろん絵の上手なヴィッキーしかいない。
二十歳って言って申し訳なさそうにしていたけれど、来てくれてよかった。
連れてきてくれた世話役にも感謝したい。
あの才能に出会えなかったらと思うと震えるもんね。
『ソース開発者』は、アルマとケイトからロディという青年を推薦された。
十八歳なので、大きな少年の中の一人だ。
例のケチャップ製造の五段階の過程を全て正解したらしい。
正解者はロディただ一人だったし、クッキーをこねたり成形したりする手際も問題なかったとのこと。
私は味覚が合うことが第一条件だったので異存なし。
そして、五十メートル走で優勝したフィルが『馬手見習い』に採用されることになった。
フィルは小柄に見えたけど十六歳だった。
馬手見習いに必要な資質は特にないらしく、レイモンやドニたちの中で、足も速く健康ならいいんじゃないかと決まったらしい。
馬手については運動会での採用職種に入っていなかったので、完全にお任せ状態。なので、もちろん異存なし。
同じく『庭師見習い』も急に思い立って採用することを決めたので、運動会での成績は関係なく
十二歳のシムズが選ばれていた。
ブルースが、アルマから『手先が器用そうな子がいる』と聞いて、本人と少し話をしたらしい。
シムズの人柄を見てブルースが決めたのなら私も賛成だ。
7月16日(水)に「転生した私は幼い女伯爵」の3巻が発売されます。
下記の通り書影も公開されました。マルティーヌがちょっと大人っぽい。
予約受け中ですのでよろしくお願いします!




