101 公爵親子はピッカピカのキッラキラ
本日11/15は『転生した私は幼い女伯爵』の①巻の発売日です!!
(地方の書店に並ぶのは明日以降になると思いますが)
呱々唄七つ先生が描いてくださった元気いっぱいなマルティーヌの表紙を見かけられたら
ぜひ手に取ってくださいね!!
眩しいのは部屋の中央に座っている二人。公爵と前公爵夫人。美男美女。
もちろん、応接室自体も豪華絢爛だけどね。
広い部屋の中には、何ヶ所かにソファーとテーブルが配置されていて、二人は部屋の真ん中の一際大きくて豪華な一人がけのソファーにそれぞれ座ってくつろいでいる。
映画のセットの中の役者さんみたい。ものすごく絵になる二人。
――などと、俯瞰して見ていた視線を公爵にピントを合わせると、その表情がピキッとなっていることに気づいた。
あぁ、やってしまった。どうしよう。隣の前公爵夫人の方を見れない。私の第一印象が、大事な第一印象がぁぁぁ!
「入り口に立っていないで、そこに座りなさい」
「あらっ。うふふふ」
何、今の可愛らしい声は。まさか前公爵夫人?
「うふっ。マルティーヌちゃん。そんなに緊張しないでちょうだい。あなたのことはダイアナから聞いているから、初めて会った気がしないわ。私のことはダルシーって呼んでくれていいのよ」
えぇぇっ!? ちょっと、サッシュバル夫人!!
あ、そういえば、友達だとか言っていたような……。
ひ、ひとまず挨拶を、ちゃんと挨拶をしなくっちゃ。先に名乗られてしまったよ。
「お初にお目にかかります。ダルシー様。お言葉に甘えてそのように呼ばせていただきます。マルティーヌ・モンテンセンでございます。この度はお招きいただきありがとうございます。至らぬ私のために、こちらで様々なご指導をいただけるとのこと、本当にありがたく存じます。後見人を引き受けてくださっただけでなく、このようなお取り計らいまでしていただき、リュドビク様にも心から感謝申し上げます」
よいしょ。
着慣れないドレスの裾をちょこんと摘んで、片足スクワットをする気概で身をかがめて挨拶する。
「まあ、上手にご挨拶できたわね。今、お菓子とお茶を持ってこさせるから、さあ、そこに座ってちょうだい」
……ええと。私、平均よりも背が低いかもしれませんが、十二歳なんですけど。
あ、公爵もため息をついている。ドニはこういうところを見て、『妖精』だと思ったの?
「母上。マルティーヌ嬢は子どもではありません。来年には王立学園に入学するのですから」
「何を言っているの。まだまだ子どもじゃないの。随分と苦労してきたそうだし。せめて学園入学までは、うーんと甘やかしてあげたいところだけど、伯爵になってしまったのですものね……。残念だわ」
「伯爵令嬢と伯爵とでは天と地ほどの差があります。本人もそこは覚悟しているようなので」
公爵の言う『覚悟』って何?
最初に会ったときの野望に満ちたプレゼンのことを言ってる?
親子の会話には口を挟めないので、妖精さんが『そこ』と指した公爵の近くのソファーに黙って座った。
後ろを振り向けないけど、ローラは壁にピタリと張り付いて空気になっているんだろうな。
背もたれに寄りかからず、ピンと背筋を伸ばしたままお行儀よくして、話を振られるのを待っていると、急に部屋のドアが開いて、男性が入ってきた。
このお城でノックもしないで部屋に入ってくるなんて、誰?!
「マルティーヌ! 来たね、来たんだね! お菓子も持ってきたんだろう?」
何故パトリックがここに? そしてお菓子? そりゃあ、持ってきたけどさ。公爵への貢ぎ物だよ?
「パトリック兄様」
え? 間違いなく妖精さんの声なんだけど、その一言で、なぜか部屋の中をブリザードが吹き荒れた。
妖精さんのお顔は汚れを知らぬ少女のような清らかさで、声色も軽やかで甘い声だったけど。
――けど。なんというか、思念? 見えないんだけど、確かに妖精さんから何かが放出されている。
そしてそれがパトリックを黙らせ、部屋の温度を一瞬にして十度くらい下げた。
「あ、ダルシー。あは、あはははは――は」
うわぁ。あのパトリックがたじたじになっている。そういえば前に公爵が、「私の母の兄に当たる方」と、言っていたね。
「……伯父上。マルティーヌ嬢は貴族としての嗜みを身につけるために来たのですよ。大人が手本を示してくれないと困ります」
「そうですわよ、パトリック兄様。悪い見本になるようなら私にも考えがあります」
「は? 考え? えー、嫌だなぁ。なんかとっても嫌な予感がするなぁ。僕はマルティーヌの勉強の邪魔なんてしないよ? でも、それは明日からでいいんじゃないかな? 今日は着いたばかりなんだし、少しくらいは休ませてあげようよ。なんなら僕がこの屋敷を案内してあげようか」
賛成! それがいい。そうして欲しい!
パトリック、カモン!
あー、とにかく早く連れ出してほしい。筋力がないせいか、この姿勢のままでいるのが苦しくてたまらない。
「伯父上。確か、お菓子がどうとかおっしゃっていましたね。マルティーヌ嬢が持参した荷物は全てアーロンが片付けているはずですが」
「はあー!」
私もうっかり、「えぇっ!」と声を上げるところだった。お菓子はちゃっかり差し押さえ済みってこと?
『お口に合うかわかりませんが。おほほほ』
『まあ、お気遣いありがとうございます。おほほほ』
――的なやり取りは? 絶対マナー違反だと思います!
「くぅ。……行こう、マルティーヌ! まだ間に合うはずだ!」
は?
気を引き締めていたはずなのに、ポカンとした顔になってしまった。
パトリックの馬鹿!
「ほらっ、行くよ」
そう言うと、パトリックは私の手を掴んで立たせた。
「伯父上!」
「パトリック兄様!」
パトリックは二人の制止を無視して、ドア目掛けて足を早めた。私は強制的に早歩きをさせられている。
嫌だぁ!! これじゃあ共犯になっちゃうよ!!
新刊コーナーに平積みしてくださっている書店もあるようですが、表紙が見当たらない時は棚に入れられていると思います。
『転生した私は幼い女伯爵』は「あ」で始まるアース・スターノベルなので、おそらく棚の一番上に、『私が帰りたい場所は』は「ど」で始まるDREノベルスなので中段あたりに並べられていると思います。
書店にお寄りの際はよろしくお願いします!!




