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狐の住む岸辺  作者: マイソフ
第10章 ライオン使い
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6月17日 カーカニー村北方


「なめやがって」


 兵士が残骸の横腹を蹴飛ばす。


 戦車回収班が、道路上に放置されたイギリス戦車の残骸にワイヤーをかけ終わったところである。


「どれくらいかかる」


「30分もあれば」


 昨夜の悲報を受けて前線に出てきた戦車旅団長に、修理中隊長は厳しい顔で答える。忙しくなりそうだ。


「爆薬は仕掛けてないな」


「はい」


「ではやってくれ」


 中隊長の指示でけたたましく戦車回収車が動き始める。回収車と言うのは、要するに砲塔のない戦車である。ワイヤーのたわみが消える。


「ところで……」


 轟音。旅団長は台詞を飲み込んだ。爆発物を厳しくチェックしたはずの残骸が四散したのである。飛び散った鉄片がばらばらと落ちてくる。いくつかの破片は戦車回収車の薄い上部防弾板を突き破って、凄惨な結果をもたらしている。


 ドイツ軍は、重量物に対してだけ反応する対戦車地雷を、残骸のすぐ脇に埋めていたのである。イギリス軍は車両のブービー・トラップ(罠)には注意していたが、仕掛がすべて地中にあったので見落としてしまった。イギリス軍が残骸を回収しようとして、対戦車地雷の真上に残骸をずらしてしまったのである。


 戦車旅団長と修理中隊長には幸いけがはなかった。さらに手に負えない形で広がった残骸を見ながら、旅団長は尋ねる。


「あそこにも残骸が道を塞いでいる。どれくらいで処理できる」


 やはり道路上にうずくまるもう1台の残骸を見ながら、修理中隊長は答えた。


「明日までには、たぶん」


 旅団長はしばらく立ち尽くし、やがてうんうんと頷いて、後方へ戻って行った。


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