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狐の住む岸辺  作者: マイソフ
第10章 ライオン使い
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6月16日 ゴールド・ビーチ南方


 パットンの成功を見て、モントゴメリーは不承不承、イギリス軍にも大規模な攻撃作戦を認可した。目標はバイユー市とカーン市の中間に進出して、バイユー市を包囲占領することである。


 ドイツ軍は第15軍をまだ2個師団(第2戦車師団と第346歩兵師団)しかノルマンディーに動かしておらず、第7軍管区の西半分から増援を送っている。だから最もドイツ本国に近いはずの戦線の東の端が、いま最も薄い部分なのである。


 イギリス軍戦車部隊は、上陸当初の激戦地クルイリー村を抜けて、カーカニー村を目指していた。ここでカーンとバイユーを結ぶN13国道を遮ろうと言うのである。道中に点在する村にはたいてい果樹園がついていて、視界が遮られる。絶好の待ち伏せ場所であった。


 戦車が燃え上がる。直ちに支援砲火が要請される。村がまるごと火に包まれる。対戦車砲も破壊されたことを確信して、戦車が前進を始める。


 まだだ! また先頭戦車が燃え上がる。姿勢の低い突撃砲が伏せられていたのである。突撃砲はそれなりの装甲を持っているから、上部装甲に直撃を受けない限り榴弾では破壊されない。


 ようやく戦車が至近距離まで殺到して突撃砲を見つけ、仕留める。損害比はひどく不利であった。上陸当初のイギリス軍はやや戦車を集中運用し過ぎていて、共に行動する歩兵が戦車に比べて少なかった。そのため、対戦車兵器の巣に突っ込んでしまうと、一度に大きな損害を被ることもあったのである。


 ドイツ軍が時間を稼ぐ間に、とうとう夜がやってきた。ようやくN13道路にとりついたことに満足して、イギリス軍は野営する。あとでこの戦車部隊指揮官は軍法会議にかけられた。歩兵部隊が十分広い範囲に警戒線を張っていないのに、最前線のカーカニー村に戦車を集中させたままにしたからである。


「敵襲!」


「戦車に戻れ!」


 うろたえるイギリス兵。


「教育してやろうじゃないか」


 救援に駆けつけたビットマンは、配下の中隊に檄を飛ばす。


「夜はまだ、ドイツのものだ」


 ドイツ軍は4台程度の小隊単位で村の周囲を動き回り、道路上から村を砲撃した。反撃があると砲火で位置を知り、別の小隊が攻撃する。少数で動き回るドイツ戦車をイギリス戦車は捕捉できない。


 開けた麦畑を海岸へドイツ戦車が逆走する。クルイリー村の北側にある橋を爆破されようものなら、進出したイギリス軍は孤立する。反転するイギリス軍との間で、戦艦同士が撃ち合うような並行戦になった。イギリス軍は友軍に構わず榴弾砲で阻止砲撃を開始する。


「後進!」


 ドイツ戦車は左右のキャタピラを後進させる。自然、イギリス戦車は弱い背面装甲をドイツ軍にさらす格好になる。あわてて指揮官が旋回を命じるが、混乱してもたついた車両は前後の車両と衝突する。ある戦車は僚車の射界に飛び出して後ろから砲塔を吹き飛ばされる。1台が燃え上がると、その周囲が照らし出されて砲火が集中、被害が増大する。


 ドイツ戦車はイギリス軍の榴弾砲を避けて、悠然と後退して行った。


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