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狐の住む岸辺  作者: マイソフ
第10章 ライオン使い
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学生と教授の会話 #12


「ノルマンディーでドイツ軍が負けた理由っていうのは、何だったんですか」


 教授はほとんど目を白黒させた。


「戦争は5年前から続いていたんだよ。戦争の行方を決めた要素が全部ノルマンディーに集まっていたわけがない」


 回答をもらえずに失望する風もなく、学生は盛んにメモを取った。どうもそのままレポートに書くつもりらしい。


「ただ、これは勝因敗因と言うより、特徴だが」


 教授の口調が淀みないところを見ると、以前から考えてきたことらしい。


「ドイツ軍は役所に近かったし、連合軍は企業に近かった」


「なんとなく、わかりますね」


 学生もにっこりする。


「ドイツ軍も誠実に任務を果たしていたが、二者択一を迫られたときに、どちらを取るかは特定の人間の判断に委ねられた。多くの関係者が権限を分け持っている場合に、優先順位に関する合意はごく形式的なものに留まった」


「それに権限が縦割りですよね。権限の配分が先で、問題の設定は後、っていうような」


 教授は微笑んだ。


「人事が減点主義なのも似ているかもしれないね。連合軍は問題と優先順位の設定に多くの資源を費やした。いちばん厄介な問題で正面からぶつかりあったあとで、、明確になった分の結論はみんなで推進した。一部に不服従や失敗があっても、全体としてはひとつの方向へ資源がつぎ込まれた」


「そんなに普通の企業ってうまくいってるものなんですか」


 学生の質問に教授は大笑いした。


「中でのギクシャクを外に出さない点では、連合軍は企業と同じだよ」


 今度は学生が大笑いした。


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