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狐の住む岸辺  作者: マイソフ
第9章 マルクス
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6月11日 午後11時 バイユー市


 連合軍の空襲を避けて、特に夜中に到着した列車は、重々しく郊外に停車した。防空カバーが手早くはぎ取られ、仮設された乗降台がその強度を試される。


 タイガー戦車は連合軍兵士に取ってドイツ戦車の代名詞であったが、無線誘導戦車部隊にいた数両を除くと、じつは今日到着したのがノルマンディー最初のタイガー部隊である。連合軍将兵は、ドイツ戦車をよく間違えてタイガーと呼ぶことがあった。


「待ちかねたぞ」


 ようやく起きあがれるようになったバイエルラインが、たのもしい新戦力を出迎える。この独立重戦車大隊は、戦車教導師団とともに戦うことになっていた。


「空襲がひどいようですね」


「東部戦線とは違うよ」


「肝に命じます」


 ヴェステルンハーゲン中佐は、さすがに跳ね上がったところがない。バイエルラインの視線は、すでにその背後に並ぶ士官たちに向いている。ヴェステルンハーゲン大隊長は慣れっこになった様子で、それでもくすくす笑いをしながら、ある若い士官を指した。


「彼です」


「君か」


「はい」


 恐ろしく不得要領の会話であるが、これでわかってしまうのである。バルカン半島と東部戦線を往来し、戦車及び突撃砲を撃破すること117両。更新されつつある世界記録の保持者である。


「ビットマン大尉です」


 士官は敬礼した。


 もはや連合軍の追い落としは不可能となった。ドイツの戦力はその限界に達しようとしている。連合軍は停滞の中で、その結束を試されようとしている。


 双方の背後で、それぞれに動く者があった。次の激動をもたらすために。


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