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狐の住む岸辺  作者: マイソフ
第9章 マルクス
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6月11日 午後12時 ディエップ市


 化学薬品の燃焼によって加速されたピストンが、最初の飛行爆弾を引っ張って発射台から押し出した。ピストンを振り落とした飛行爆弾は、パルス=ジェットの推力で目標へと突き進んで行く。


 いわゆるV1号の、これが最初の発射であった。機材と爆弾そのものの輸送に対する連合軍の航空妨害は、ノルマンディーの戦況悪化でややゆるみはしたが、初回に発射できるV1号はわずか32発であった。


 目標は、ユタ・ビーチ。ロンドンを目標とするはずであり、発射基地はカレー地区を中心に建設されていたが、ロンメルの懇請にヒトラーがまたしてもあっさりと折れたのである。つまり、最も西寄りの基地を使って、最初の発射を行うということである。V1号の射程は200キロほどであった。


 32発のV1号のうち、10発は発射直後にあえなく爆発した。7発は、その行方をだれも知らない。残った15発のうち、4発は海岸の仮設飛行場に落ち、ワイヤーネットをずたずたにした。2発は貨客の積み下ろし現場に落ち、直接のけが人はなかったものの、積み下ろしを2時間停止させた。3発はドイツ側地域、とくにカランタン市周辺に落ちて、艦砲射撃で神経を参らせている兵士たちから翌朝厳重な抗議が来た。最後の6発は、連合軍支配地域に落ちたものの、安眠を妨害する以上の実害はなかった。


 ヒトラーは報告を聞いて、目標をロンドンに再変更させた。目標を20キロ以上はずれることもあると分かった以上、ロンドンのような巨大な目標がよりふさわしいと判断したからである。ロンメルは肩をすくめて、反対しなかった。


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