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狐の住む岸辺  作者: マイソフ
第9章 マルクス
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6月11日 午後11時 ポン・アベ村


 久しぶりの休息をとっているアメリカ第90歩兵師団で、誰が最初に異常に気がついたかは定かでない。高い生け垣に潜む狙撃兵、さりげない地雷、針金に連動したブービートラップ。戦争とはその程度のものだと、ここ数日で思いこまされていたのであった。


 村の南方の橋の警戒が薄かったのが致命的であった。突撃砲1個大隊を先頭に立てた、戦闘団レベルの堂々たる反撃に対応するには、歩哨の数が少なすぎた。効果的な反撃体制を組み立てる時間が稼げなかったのである。


 勝利の立て役者は、到着したばかりの第17SS機械化歩兵師団であった。機械化歩兵師団は、戦車師団の半分しか戦車を持っていないが、対空、対戦車、偵察などいろいろな補助部隊で戦車師団に準じた戦闘車両を持っているので、戦車師団と同じか、歩兵が多い分だけそれ以上の価値がある。編成定数だけの車両があれば、であるが。


「各車、榴弾5発、目標は任意」


 突撃砲をはじめ、大小の砲を備えた車両があらかじめかき集められていて、一種の砲撃部隊を作っている。それらの砲が、一斉に火蓋を切った。


----


 対岸から見ていても、アメリカ軍の混乱ぶりはよくわかる。第17SS機械化歩兵師団長・オルデンドルフ少将は、傍らのマルクス中将にささやいた。


「深入りはできませんぞ」


 マルクスは頷いた。ファライの師団が、符丁を合わせて攻撃をかけるはずだ。オルデンドルフの貴重な突撃砲は橋の南側に止まったまま、村を欲しいままに射撃したあと、無傷のまま引き上げにかかった。


 ファライの攻撃により、ドイツ軍はポン・アベ村を一時的に奪回した。アメリカ第90師団とその高級将校は大恥をかき、士気は地に落ち、大幅な人事異動の嵐が吹きすぎるまで、コタンタン半島横断作戦は頓挫することとなった。


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