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狐の住む岸辺  作者: マイソフ
第9章 マルクス
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6月10日 シェ・デュ・ポン村


 サント・メール・エグリーズから南東へ4キロ。第90師団はメルデレ川をすぐそこに望んでいた。アメリカ空挺部隊の兵士を多く飲み込んだこの川の両側には、まだグライダーの残骸がみられた。対岸にはちょっとした城館が見えている。先鋒部隊が橋にさしかかったときであった。ごく少数の人間が閃光を、ほとんどの者が地面の揺れを、そしてすべての者が轟音を感じた。


 橋が、爆破されたのである。士官や下士官が、パニックを防いで走り回る。


 全師団が師団長の別命を待って停止する中、一団の軽車両群がかき分けるように師団の先頭に進み出てくる。見慣れない部隊であった。隊長らしい人物が、周囲の士官に呼びかける。


「独立工兵大隊のものだ。仮設橋を敷設する。師団長に許可を求めたい」


 コリンズは軍団直属の独立工兵大隊の中でも、特に戦歴の長い部隊を選んで、新米師団のバックアップにつけていた。アメリカ軍はこういった用兵を好む。軍団レベルに独立大隊をつけて、軍団の裁量で各師団にピザの”トッピング”のように配属する。


アメリカ軍には戦車師団は少ないが、こうした方法で戦車大隊を配属されて、多くの歩兵師団は小振りの戦車師団の実力を備えていたのである。


 第90師団にもやはり戦車大隊が配属されて、じっと渡河の順番を待っている。こうしたお目付け役がいる限り、大崩れはしないですみそうであった。


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