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狐の住む岸辺  作者: マイソフ
第8章 ガイル
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6月9日 午前10時 ラ・ケーヌ村(ドイツ西部戦車集団司令部)


「躊躇している場合ではない」


 ディートリッヒは午後からの攻撃を主張した。


「今日かかるのでなければ、全面的な防御に移るべきだと思う」


 ガイルは煮えきらない顔をしている。申し入れている弾薬・燃料の補給ははかどらないし、統一した作戦会議を開くのは今日が初めてなのである。


 普段は上級者に逆らわないフォイヒティンガーも、補給の話となると口を開く気になる。


「補給が届くスピードよりも、既存の燃料集積所が爆撃されるスピードの方が、残念ながら上回っています」


「バイエルライン将軍はどう考えるか」


 ガイルに問われて、バイエルラインは重い口を開いた。何と言っても、独断に近いかたちで攻撃に踏み切り、戦力を減らすだけに終わったのだから、肩身が狭い。


「連合軍は確保地域を広げつつあります。重砲の本格的な陸揚げが始まらないうちに、連合軍を押し込めるべきです」


 さきほどディートリッヒを通じて師団長に発令されたばかりのマイヤーは、むっつりと無言である。


「マイヤー将軍」


「我が師団は第352師団と交代、艦砲射撃の最も激しい海岸寄りに布陣を完了しています」


 マイヤーは静かに言い放つ。


「攻撃開始が遅れれば、我が師団の戦闘力はそれだけ低下します」


 ガイルが野放図な物言いに眉を上げたが、マイヤーは気にとめた風もなかった。


 第47戦車軍団長、フンク中将が男爵らしく鷹揚に座をまとめる。


「表現こそ違え、みなさん積極的な攻勢をお望みだ。司令官閣下は、どうお考えかな」


 フンクは第21戦車師団と、第15軍管区にいる第2戦車師団を傘下に持っているが、形式上のことで、戦闘指揮や補給は地域の軍団に任せている。いま大あわてで体制を整えているところであった。


 師団長・軍団長が揃って即時攻撃を主張したとなると、ガイルも折れる他はない。


「よろしい。あとは……」


 ガイルは空を見上げた。


 今日はDデイ以来初めて、朝から曇天続きである。


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