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狐の住む岸辺  作者: マイソフ
第8章 ガイル
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6月8日 午前10時 オックスフォード市(イギリス第2戦術空軍 第84グループ司令部)


「12時になったら、1個中隊を哨戒に出してくれ。ゴールド・ビーチからバイユーまで」


 管制官・ジャーヴィス中佐は、ソーニー・アイランド基地に簡潔な指示を与えた。12機の戦闘機中隊が何か獲物を見つけたときは、この作戦室からソーニー・アイランドの第123航空団、あるいは別の航空団に、追加の飛行中隊を差し向けるよう指示が飛ぶ。数百機の大所帯であるグループにこのような調整機能を与えるのは、ドイツ空軍の無力なフランス上空ではやや現状に合わなくなってきていた。


 それにしても、とジャーヴィスは思う。モンティ(モントゴメリー大将)は空軍がすっかり敵をミンチにしてから、スプーンだけつきだそうと言うつもりか。アフリカ戦線で黙々とモントゴメリーを援助して、結局手柄を独り占めされたテッダー大将が奴を嫌うのは当然だ。いましがた発した指示も、地上部隊の侵攻経路からドイツ軍を一掃する命令である-地上部隊の侵攻経路に高射砲がいるかどうかは、誰も尋ねてくれないのだ。いるに決まっているのだが。


 哨戒が始まると忙しくなる。ジャーヴィスはコーヒーを飲みに外へ出た。ゴールド・ジュノー・ソードの3海岸の上陸部隊を統括するイギリス第2軍もつい最近まで同じ建物に司令部を置いていたが、一足先にゴールド・ビーチへ渡ってしまって、喧噪が半分になってしまっている。


「危ういバランスだな」


 ジャーヴィスはふと口にした。陸・海・空のバランス。国と国のバランス。ジャーヴィスは、アイゼンハワーをはじめ一部の将軍が、特定のヒーローを作らぬよう腐心を重ねていることを知っていた。その努力がちょくちょく危機にさらされることも。


 ジャーヴィスは、現状がせめてもう半年ばかり保たれることを願った。長くても、今年のうちには戦争は終わってくれるはずだ。ヒトラーもそれほど馬鹿ではあるまい。


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