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狐の住む岸辺  作者: マイソフ
第7章 バイエルライン
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学生と教授の会話 #10


「ノルマンディーに兵力を集中することを妨げたのは、やはりヒトラーとOKWなのですか」


「全般的にはそうだが」


 教授は意外なことを言い出した。


「最初の3日間は、ロンメル元帥も、第15軍を動かせという意見ではなかった」


「それは通説と違いますね」


 学生はすかさず食いつく。


「ロンメル元帥も、第二次上陸がカレーにあると信じていたのですか」


「ロンメル元帥は何も信じていなかったが、多くの場所を疑っていた。例えば南フランスの地中海沿岸との同時上陸だ」


 教授は学者らしい修辞を操ってみせる。


「どうせ第15軍があわてて動き出しても、決定的な最初の3日間にノルマンディーには間にあわん」


 教授は学生の理解が浅いと見て取って、さらに説明する。


「空軍に移動を妨害される、という点でロンメル元帥の現状分析は一貫しているのだよ。上陸軍の体制が固まらない最初の数日は特別な意味があるからね。間に合いもしない部隊を輸送するより、いまいる部隊の補給物資を送ったほうがいい」


「ノルマンディーが連合軍の主な上陸地であることは、じゃあいつごろわかったんですか」


「連合軍がもう一度上陸することがありえない、とわかった時点かね」


 学生は頷く。


「戦争が終わるまで、再上陸の可能性はあった。連合軍は陸上部隊をどれだけ持っているのか巧妙に隠していたし、ノルマンディーで使った上陸用舟艇はごっそり残っているからね。このころ連合軍は南フランスへの上陸のために多くの艦艇を地中海に回していたけれども、この舟艇がイングランドにいたら、ボルドーにだってオランダにだって再上陸はできたさ」


 学生は泣きそうな顔をした。レポートが出来上がるのは思ったより先のことになりそうだ。


「ついでに言うがね。OKWだって、第二次上陸がカレーに違いないなんて信じてはいなかったと思うよ」


 教授は無慈悲にもインタビューを更に錯綜させる。


「カレーにいちばん近いところにいる戦車師団は、第2戦車師団だった。OKWは上陸の4日後にはこの師団に移動命令を出している。もっと奥のほうのブリュッセルにいる第1SS戦車師団はもう2週間ほど留置になっていた。OKWが第二次上陸を用心してはいたけれども、どこだか確信がなかった印だよ」


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