表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
狐の住む岸辺  作者: マイソフ
第7章 バイエルライン
61/132

学生と教授の会話 #9


「どうして第21戦車師団は、上陸第2日にまったく動けなかったのですか」


 学生は細かい質問をした。


「燃料の融通がつかなかったからだ」


 教授の返答は短い。


「近隣の部隊から、分けてもらうことは出来なかったのですか」


 教授は答えを整理するのに少し時間を取った。


「いろいろなクラスの部隊が、いったん手にいれた装備や物資を手放したがらないのは、万国共通だ。ただドイツ軍ではこの問題は他の国より深刻であったかも知れない」


 学生は首をかしげる。


「ドイツ軍の師団は、エリート部隊と二線級部隊の差が開きすぎていた。標準化されていれば、機械的なルールを配分の原則として定めた上で、一時的に特例を作ることもたやすい。ところが不揃いであればあるほど、お互い納得する配分ルールを見つけるのに時間がかかるから、実績にこだわらざるを得ないわけだ」


 学生は頷いた。


「それと、縦割りの組織が色々ありすぎたこともいけなかった。例えば空軍や海軍がそれぞれ補給のためのトラック部隊を抱え込んでいて、上陸直後の肝心なときにも陸軍に貸してくれなかったのだよ」


「ひどかったんですね」


 学生は慰めるような口調になっている。


「連合軍にも色々問題はあったのだが、要所要所に憎まれ役がいて、限りあるものの配分についてはひとつの筋を通した。もちろんそれが唯一最善の策と言うわけではなかったろうがね。ドイツ軍は個々には誠実で勇敢な人間が多かったが、すべての努力をコーディネートする人間の存在を、ヒトラーは決して許さなかったのだよ」


 教授はため息をついた。


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ