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狐の住む岸辺  作者: マイソフ
第5章 日没、あるいはソード・ビーチ
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6月6日 午後1時 オマハ・ビーチ


 撤収のための舟艇が次々に海岸に横付けされる。陣頭で指揮を取ってきたコータ准将は、名残惜しげに砲火の中で立ち尽くす。せっかく高いリスクを冒して上陸した戦車は、置いて行くしかない。撤収作業援護のため、ユタ・ビーチからまでかき集められた艦艇が激しく砲火を浴びせる。空軍がもう少しいい仕事をしてくれれば、とコータは空を見やる。


 さっきから、数両のドイツ戦車が丘の上に現れて、恐ろしく長い射程を示している。事前に見た資料にはあんなタイプのドイツ戦車はない。誰かがあれの写真を取っていてくれればよいのだが。ひどく大きい奴だ。


 じつはコータが見ているのは、生産が始まったばかりの新型重戦車である。ノルマンディー全体で6両しかない。もっとも夜明け前の爆撃で1両が失われたからあと5両である。


 ひときわ大きな爆発音が上がった。アメリカの戦艦が新顔の戦車を主砲で狙ったのである。巨大な戦車が横倒しになり、撤収中のアメリカ兵が快哉を叫ぶ。この瞬間、ノルマンディーの新型重戦車は4両になった。残りものそのそと撤退して行く。


 幕僚がコータの腕を引っ張って舟艇に乗せようとする。歩きかけながらコータは振り向いた。


「また来る」


 コータはマッカーサー大将がフィリピンで同じ台詞を使ったことを知らなかった。

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