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狐の住む岸辺  作者: マイソフ
第5章 日没、あるいはソード・ビーチ
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6月6日 午前7時半 ロシュ・ド・ギヨン(ドイツB軍集団司令部)


「明日のことは考えなくて良い。今日、今、海岸に弾丸を送るのだ。榴弾砲の位置を暴露してもかまわん。なんのために高射砲大隊がいるのだ」


 結局フォイヒティンガーに細かい指示を次々に与えているロンメルである。ロンメルは自分の性格に気づいていない。


 この時点で、B軍集団は第21戦車師団と密接な連絡を取っていて、その周囲の状況はかなり分かっている。イギリス第6空挺師団は最後の降下部隊が戦車連隊と鉢合わせして大損害を被り、残余があちこちに孤立していたが、いくつかの重要な任務を完遂していた。最もドイツに取って痛いのは、オルヌ川の東に並行して流れるディーヴ川にかかる橋をことごとく爆破されたことである。これによって、第15軍管区から第7軍への増援は著しく妨げられることになった。


 オルヌ川東岸を担当する第711歩兵師団も、師団司令部にまでパラシュート兵が迷い込んでくる有り様で、混乱のうちに戦闘に巻き込まれていた。くだんの第346歩兵師団にはすでにオルヌ東岸への移動命令が出ていたが、自動車や馬車といった輸送手段が不足している状況では、移動に明日まではかかると思われた。


 それ以外の戦区の状況はまったく混沌としている。あちこちから空挺降下の情報が入ってくるし、戦車教導師団は戦闘に巻き込まれているようだし、第12SS戦車師団からは連絡がないので、さきほどエニグマ暗号電文で報告を求める指示を出したところだった。ある意味で、これはロンメルの予想通り、指示通りの状況である。


歩兵は混乱の中でそれぞれの持ち場を守り、戦車師団は数時間のうちに最寄りの海岸を応援する。上陸初日に情報が混乱するのは分かっていたが、それでも上陸初日で大勢は決するのだ。


 シュパイデルは不安げにロンメルの顔色を見ている。ロンメルは視察に出たがっているとき、こんな顔つきをするのだ。


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