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狐の住む岸辺  作者: マイソフ
第13章 クロス・カウンター
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エピローグ


 1944年7月16日、ロンメル政権は無条件降伏し、その施政権を連合国の共同管理に委ねた。ドイツは英米の占領するところとなり、東プロイセンを除いて1933年の領土を保全した。ドイツはソビエトが要求する巨額の賠償を払い続けているが、これは仕方のないところである。


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「最後に、個人的な質問で恐縮なんですけど、先生はなぜ軍の仕事におつきにならないのですか」


 教授は微笑んだ。


「お嬢さん、大人になると言うことはね」


 女子学生は首をかしげる。


「自分だけの秘密を持つことなんだよ」


 シュパイデルは、すべての秘密を胸に蔵して軍務を去り、母校のチュービンゲン大学で歴史を教えていた。失敗した陰謀は語れても、成功した陰謀は墓場まで持って行くしかない。


 シュパイデルはそれを、獄中にいるあの人物に約束したのであった。


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 1958年7月、ロンメルは無期禁固から仮釈放された。極右からはヒトラーの仇として、極左からは「最後の総統」として、ともに非難される身ではあったが、獄中で書いた回想録「私は狐」が全世界でベストセラーになったばかりか、1956年度のノーベル文学賞を授賞して、まあ食うには困らない。ロンメルは67才になっていた。


 日向ぼっこをしているロンメルに、ルシー夫人がコーヒーを持ってきた。


「ルシー、私のやってきたことは、正しかったと思うか」


 コトリ、とコーヒーカップが音を立てる。


「お仕事のことは、私にはよく分かりませんわ。ただ」


 ルシー夫人は、ロンメルのとなりに座った。


「あなたが家にいてくださるなんて、本当に久しぶり」


 夏の日差しは、さんさんとテラスに降り注いでいる。


「狐の住む岸辺」 完


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