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狐の住む岸辺  作者: マイソフ
第13章 クロス・カウンター
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7月11日 午後8時 ロンドン


「とりあえず停戦命令を出そうではないか。我々がドイツ国境まで無傷で進めば、ドイツに軍事的圧力をかけられる」


「軍事的圧力ですと」


 アメリカ副大統領・トルーマンは、チャーチルの言葉に驚いた。いまは実際に戦争をしているではないか。


「仮にそれから戦闘が再開したとしても、ロンドンはV1号の恐怖から永久的に救われる。アメリカはこれ以上の損害に耐えられるのか」


 大量の物資援助のスポンサーに対して、やや無遠慮すぎる物言いだったが、トルーマンは紳士的にこれを忍んだ。


「これは無条件降伏の原則への例外ではない」


 チャーチルは言い張った。1943年1月に、アメリカとイギリスはカサブランカ会談の後の声明で、独伊日に無条件降伏を求めている。これは、ソビエトがドイツと単独講和することを避けるために、自分たちもドイツと単独講和の条件交渉を行わない、と約束するものであった。


「西部戦域のドイツ国外での停戦に過ぎないのだ」


「ロンメルは西方軍を完全に掌握している。もしこのままドイツの国内対立を放置すれば、ドイツの東部戦線だけが崩壊してしまうぞ」


 チャーチルの言い分は多分に詭弁であったが、トルーマンはルーズベルトほどソビエトへの警戒心が薄くなかったから、この話に強く心を動かされた。


「本国と協議してみましょう」


 トルーマンはとうとう言った。


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