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狐の住む岸辺  作者: マイソフ
第13章 クロス・カウンター
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7月11日 午後6時 マーリニー村(サン=ロー市西10キロ


「タイガーだ」


 ビットマンは放棄されたタイガー戦車を見つけた。黒こげになっている。


「使える弾丸はなさそうだな」


 連戦のために弾薬が心細い。


「左の繁みに人影があります」


「友軍だ。射つな」


 なんと、マイヤー師団長その人が率いる歩兵の一群である。ビットマンはハッチから身を乗り出した。急を聞いて、ピットマンの属する独立重戦車大隊が昼間移動の危険を冒して駆けつけてきたのであった。


「助かるな。全般的状況はどんな具合だ」


 師団長が尋ねる台詞ではない。


「各所に部隊が孤立しています」


「撤退許可は」


「ディートリッヒとロンメルが出払っているようです」


「あいつら、また前線に出ているな」


 マイヤーはその場での最高位者の特権を行使して、自分のことは棚に上げた。ディートリッヒの奇禍はまだ前線に伝わっていない。


「遺憾だが、戦線を分断されすぎた」


 空を見上げてマイヤーは言った。


「撤退だ」


 ようやく、ドイツの長い長い一日が暮れようとしている。


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