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狐の住む岸辺  作者: マイソフ
第12章 フォニー・ウォー
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7月8日 午後10時 ラ・ロシュ・ギヨン近く


「個人的なお便りの時間がやってきました」BBC放送のアナウンサーが、いつものようにフランス語のメッセージを読み上げ始めた。4人の暗殺メンバーは、全身を耳にして聞き入る。


「ジョセフィーヌ、私が悪かった。帰ってきてくれ - 修道僧が衝立に描いた自画像はよい出来だ - 2月2日にトムさんは射たれた - ジムの受け取ったフィルターは形が違う -」


 各地のレジスタンスとの間であらかじめ取り決められた暗号が、淡々と読み上げられる。


「赤ん坊は資料をかじるから注意しろ」


 4人は顔を見合わせた。中止指令だ。なんてこった。


「至急最寄りのレジスタンスを通じて、新しい指令を受け取らねばならない。手配してくれるか」


 ジョンは言った。


「もちろん」


 アンドレはにこやかに答える。


「短い間だったけど、楽しかったわ」


シモーヌがジョンの首に手を回す。


 アンドレがグレンに当て身を食らわせた。驚いたジョンの背中に激痛が走る。


「なぜだ……」


 背中にナイフを突き立てたまま、ジョンがうめく。アンドレはすでに、グレンの首に紐を巻き付けている。


「ロンメルはソビエト抜きで講和をしようとしているの」


 シモーヌがささやく。その声はごく日常的な響きしかない。


「チャーチルはその話に応じそうよ」


「なぜ……」


「モスクワはもう知っているわ」


 フランスのレジスタンスは、反独というたった一点でつながった組織である。その構成組織の中には、極右もいれば、共産党系もいる。


「中止命令は届かなかったのよ。あなたがたがロンメルを殺したことにすれば、とても都合がいいの。あら」


 シモーヌは、ジョンがすでに最後の息を吐き出しているのに気づいて、微笑んだ。


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