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狐の住む岸辺  作者: マイソフ
第11章 嵐
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6月22日 ソード・ビーチ


 ドゥーブルの村はほとんど廃虚と化している。守備隊は何度も交代していたが、地形を一変させるほどの艦砲に、ついに撤退命令が下った。


 イギリス軍は海岸に最も近いルートで、再度カーン市占領を狙ってきた。占領地域は細長くなって守りにくい面があるが、海上からの支援は最も受けやすい。歩兵師団の抵抗は、激しい海陸の支援砲火で制圧される。


 カーン市の町並みが見えてくる。ノルマンディーでは随一の都市である。兵士たちの顔がほころぶ。ドイツ軍の反撃は散発的だ。もっと早く攻撃すべきだった。


 何だ、あの甲高い響きは。


 ネーベルベルファーだ! ドイツ軍のロケット砲である。カーン市の市街地に展開していたのだ。イギリス軍の先鋒が士気をくじけさせる。士官が声を枯らす。道路上の混乱が特にひどい。散布界に入ってしまった小村がまるごと炎に包まれる。


 出てきた! カーン市から戦車が出てきた。算を乱すイギリス軍に近づいてくる。ようやく異変に応じたイギリス軍の支援砲火が、慈悲深い煙幕を張る。付近の小村に立てこもるイギリス歩兵。


 ドイツ戦車は損害を避けて退却した。重装備の補充は難しく、あってもエリートの戦車教導師団やSSの戦車師団に回ってしまう。第2戦車師団からの分遣隊は、自分たちの価値を知っていた。代わって、カーンにいるありったけの榴弾砲が、地図を頼りに激しく周囲の小村を打ちすえる。観測機も飛べず、敵兵は煙幕の向こうならば、位置を知られて反撃を食らう心配がない。


 雨は連合軍の補給路を細らせたが、ドイツ軍の補給路を太らせた。爆撃がないので鉄道の補修が進む。昼間もトラックが移動できる。ずっと昔に約束されていた物資が、思い出したように届き始めている。


 届かないのは、航空機だけであった。


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