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鷹と一緒に異世界転生!〜相棒任せの異世界大冒険〜  作者: 貝人
第九章 神獣か聖獣か
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第179話 降りる事ができない螺旋

 何故かアリメリアもホワイトホースと一緒に着いてくる。解呪の代金の支払いか? それは師匠に任せよう、なんなら身体で払って貰おう。イケメンなんだから、それぐらいは良いだろ。


「アメリメリアは、なんでついて来るの?」


 アリメリアは不思議そうな顔をして


「貴方が呼んだんじゃない。きっと魔王様の指示なんでしょ? じゃなきゃ私が呪術を解呪できるなんて知らないはずよ。私こう見えても勘がいいのよ」


 クルリとターンして、バチコーンとウィンクをしてきた。勘は良くないと思うが、男だって知らなかったら見惚れてしまう姿だな。


『アリメリアも普通にしてれば凄いんだけどねえ。まあ普通にしてればだけど』


 普通にしてればって……まあ堺さんが好き過ぎてちんちん取っちゃったしなあ。


『僕はイケメンだからね』


 グギギギギ事実だからムカつく……。俺もイケメンになりたーい!!


『ははは来世が君を待っている!』


「死ねってか!」


「「え?」」


 俺の大声で、師匠と蘭が同時に振り向く。


「いや堺さんにイケメンになるなら来世でって煽られたから思わず叫ん「魔王様! ちょっとあんた! 魔王様にかわりなさいよおおお!」ぎゃー!!!」


 アリメリアが凄い力で俺の肩を揺さぶってくる。やめろ、やめろ、やめてえええ! 肩が取れちゃううう! 爪がくい込んでる! 堺さん! 早くアリメリアを止めてお願い!


『はあ、仕方ないね。ちょっと柊君の口を借りるか』


「『アリメリアよ、葵君の呪いを解いくれた事感謝する』」


 俺の口で堺さんの声が出る、前にも経験したが不思議な感覚だ。腹話術みたいだ、声が渋く聞こえてくるよ?


「まっまっまっまっまっまっまっまっまっまっまっまっまああああああああああ!」


 アリメリアが、まを連呼して絶叫する。耳が痛いし翼はかかるし……


「まあああああ!! 私、私いいいいい!」


 泣き崩れた瞬間、おじさんの声に変わる。声を作っていたのか……堺さん並みに良い声じゃないか。


『うるさーい!! ちょっと静かにしてよ! 今から輪廻転生の儀式に入るんだから!』


 着替えを終えたアナスタシアに怒鳴りつけられる。あいついつ着替えたんだ? そういや師匠は……


「鼻血が、鼻血が止まらない……! 洋一君僕はもう死ぬかもしれない! いや今なら天国にいける!」


 ああ、蘭の警戒網を突破してアナスタシアの着替えを覗いたんだな。


「葵、お前なあ、嬢ちゃんの裸位でなにを興奮してんだよ。相変わらずムッツリスケベなんだな」


 ため息をつく大和さんだが、小脇に抱えた生首が怖すぎる。いつまで持ってるんだ? 捨てないのか?


「『やあ大和。久々だね、元気してたかい?』」


「んー? おお! 魔王か! そんなに前でもない気がするが、あん時は過去に俺が行った時だからえーと」


「『ああ、凄く凄く長い時が経ったよ。君もまだ若かったしね』」


 ちょっとお二人さん! アナスタシアが睨んでるから! 昔話は後にしてください!


『もーう! 始めるからね! 蘭、聖属性の結界を貼りなさい、貴女のスキルならできるわよね?』


「えっええ……聖なる檻(セイントプリズン)


 あれ? この結界俺も対象に入ってるけどいいのか? アリメリアは結界に弾かれて、吹き飛ばされてたけど。


 アナスタシアが着物を着て、膝を突き勝利君の遺体の前で祈り始める。


 アナスタシアを見ると涙を流していた。


『……貴方の魂が受けた恐怖、痛み、苦しみ、罪、咎の全てを私が引き受けます。貴方の魂を私が許します。さあ元いた輪廻の輪に帰りましょう。貴方がいるべき世界へ』


 アナスタシアの言葉が終わると、勝利君の身体から球状の光の魂が抜けていく。勝利君の身体が、砂となり散っていく。


 その光景を俺は絶対に忘れない。異世界に拉致され、無理やり身体をいじられ、俺が助けられなかった子供の事を。


『魔王あんたは下がりなさいよ。柊洋一、あんたに彼から言伝があるわよ。聞きなさい』


 勝利君が俺に?


『お兄ちゃん、助けにきてくれてありがとう。化け物って言ってごめんなさい、ちゃんと助けて貰えなくてごめんなさい』


 やめろ、謝らないでくれ……俺は助けられなかったんだ、間に合わなかったんだ。


『お兄ちゃん、本当にありがとう。宗二お兄ちゃんを助けてあげてね。だって、最後の宗二お兄ちゃんって私には誰かわからないけど。ってあんた泣いてるじゃない! 大丈夫なの?』


 アナスタシアの言葉に、俺は答える気力すらない……。膝を抱え俯く


『柊君、立ち上がるんだ。君は立たなければならない、立てないのなら無理やり立たせるぞ。君に謝り、礼を言った彼の方が余程立派だ。柊君に恨み言の一つも言わずに、最後に他人の心配までして……。彼程高潔な男はいないだろう。その思いを無碍にするなら、無理やり立たせて歩かせるぞ』


 堺さんの厳しい言葉が、俺の心を責める。


『ちょっと! 魔王! あんたには人の気持ちがわからないの?』


『柊君は止まる事をもう許されないんだよ。彼に何人の人が託して逝った? 彼の為に人が動き死ぬ。彼はこんなところで、膝を折らせる訳にはいかない。立て』


 堺さんが俺の身体を無理やり立たせる。


「洋一!」


「『蘭ちゃん、君も甘やかしてばかりいるんじゃない。柊君はその身がどうなろうと、戦い続けなければならない。彼が自ら選んだんだ、状況に流されていたとしても何度も降りるタイミングはあった。だが、彼は戦う事を選んだ。誰かが死ぬ度に、何度も何度も立ち止まる気か? 僕は許さないよ』」


 ごめんなさい、ごめんなさい、ごめんなさい、ごめんなさい……


「『ふう。君が立てないのなら。柊君の手で君の仲間を殺そう、先ずはそうだな。アースから行こうか』」


 堺さんが俺の身体を使い、俺の手でアースを握り潰そうとする。


『グェッ! くっ苦しい! 逃げられない! おい、操られてんのか!?』


 俺の手の中でアースがジタバタともがいている。やめろ……やめてくれ


「『アースが死んだら、次はアナスタシア、次はリュイ、最後は蘭ちゃんだ』」


 堺さんが俺の身体で、皆んなを殺す? 俺が立ち止まっているから? 


「『蘭ちゃんは君を傷つけられない。さあどうする? 柊洋一』」

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