第108話 ズボンを履かない! それが宗教理念だ!
デート、デートとはしゃぐエロス。こいつ、めちゃくちゃ気持ち悪い。俺の貞操のピンチだ!
『さーて、楔、楔、楔を打ち込んで〜! ヨーイチ君とデート! いえい!』
いえい! じゃねえよちくしょおおお! めちゃくちゃ良い笑顔しやがって!
「洋一、諦めなよ。エロス様の性格は、読めていたでしょ?」
わかっちゃいるんだが、俺の貞操がピンチ!
『さーて禊の儀を執り行うから、陣を描くね! 陣を描いたら、裸にして寝かせてね!』
そうか魔法陣が必要なのか。ただ、裸に寝かす必要性が全くわからない。何故裸にするんだ?
『魔術的な縛りがあるからねー。ちゃんと、身体に刻まないとね……グヘヘ』
おい、グヘヘってなんだ? 欲望が見え隠れしてるぞ!
『葵ー! 見えない! 目隠しやめてー!』
「ダメです! リュイ様に汚物を2つも見せる訳にはいかないのです!」
2つの汚物って片方は俺か? いやエロスだよなきっと。師匠、電撃浴びながらも目隠しを続行するなんて、すげえ。リュイの強化された電撃をくらって平気だなんて、なんて耐久力なんだ。出来れば、蘭やレイ先生の目隠しも希望したいんだが。
『さー! いくっよー! 裸、裸、裸ん坊! ドリル、ドリル、ドリルな男は、剥けるかな?』
最早、呪文でもなんでもない……。
魔眼が疼き、血の涙が出て来る。なんだこの魔力、尋常じゃ……あっ! 鼻くそほじってやがる! 鼻くそを亮で拭くな!
『ドリドリ、チェインチェイン!』
「あぎゃああああああああああああ!!!」
亮が、痙攣しながら大絶叫をしている。泡吹いてるぞ……
「おっおい、エロス大丈夫なのか?」
『大丈夫、大丈夫。パーペキですよ、パーペキ! 見事に楔を打ち込みました!』
「あっ怪しい……」
『僕、ヨーイチ君にだけは嘘をつけないよ? そう言う、愛の契約だから!』
愛の契約ってなんだよ、片一方からの強烈な愛は、ストーカーって言うんだぞ。
『あっ……』
「おい、エロス今、あっ、って言っただろ? なにやらかした? 言ってみろ!」
エロスをガクガク揺さぶる。
『思ったより、根が深くて、こっちもゴリゴリに刺したらね、ちょっとだけ、人格が削れちゃったかなーなんてね』
なんて事をしやがるんだこいつ!
「人格が削れた!? 大丈夫のかそれ!?」
『ちょっとだけ性格が変わるだけだよ? 以前の性格に大分問題があったんだしさー』
こいつ全く反省してないな。
「もし目が覚めて、イカれてたらデートは無しだ!」
『ひっ酷い! だがそれが良い! 毒舌なヨーイチ君も素敵だ!』
全くブレないとは……こいつこそ、最強のストーカーだ。
「ココハ……」
亮が起きた上がった、言葉がおかしいような……。
「アー! What on earth I have done!」
「えっ? なんだって?」
「オオウ、ニホンゴムズカシイネー」
やばい、亮が性格改変ってレベルじゃない。言うなれば、日本人から外人にコンバートされたような感じだぞ。
「ワタシ、ツミ、ツグナウ、ハラキリシマース」
なにを思ったのかいきなり、剣を腹に突きつけ切腹しようとしやがった!
「切腹しまーす! じゃないんだよ!」
「エロス様、性格改変ってレベルじゃなく、まるで別人なんですが……」
そうだ蘭言ってやれ!
『まあ良いじゃない! 罪を認めてるんだから! それ、ハラキリ! それ、ハラキリ!』
「オマカセクダサーイ!」
お任せくださいじゃないんだよ! 力強過ぎなんだよ!
『こら! ヨーイチ君を困らせるな! 僕が怒られるだろ!』
理不尽すぎるだろこいつ。
「ハイ! マスター!」
エロスが、マスター? マスターって主従契約なのか? いつの間に? ハラキリが契約の合図か?
『ヨーイチ君を、唯一の神として崇めるように! 背信行為は死罪だからね!』
神? 死罪? なに言ってんだ?
「イエス! ゴットヨーイチ! フー! アナタカミネー! スバラシイネー! キュートダネー!」
うざい! めちゃくちゃうざすぎる!
「うるさっ! いきなりなんだよ! 師匠助けて!」
「嫌だ、生理的に無理」
生理的に無理って……確かに今の亮は、気持ち悪いけど……。
「ゴットヨーイチ! ゴメイレイヲ!」
「えっとじゃあ、人に迷惑をかけない様に生きて下さい」
「イエッサー!」
敬礼してる……。蘭は、目を逸らして亮を見ない様にしている。そらそうだよな、だってエロスも亮もフルチンだからな。二つの龍が、ブラブラしてるもんな。
「亮、先ずはズボンを履け。エロスは帰れ!」
『オッケーヨーイチ! また来るね!』
オッケーグーグルみたいな言葉を残して、エロスは帰っていった。亮はズボンを履こうとしない。
「ズボンハカナイネー。ワタシタチエロスキョウハ、フルチンガセイソウネ」
「ズボン履かない宗教って、なんなんだよ! 履けよ!」
フルチンの宗教とか嫌過ぎる!
「洋一、なんとかしてね」
蘭に丸投げされた! ちくしょう、味方がいない!
「蘭、助けてよ!」
「いや!」
もうなんなの、皆んなして! エロスの宗教が第一か……。宗教が第一、宗教が一番、宗教が……。あっ思いついた!
「亮ズボンを履かないと、エロスに言って破門させるぞ」
亮の表情が、見る見るうちに青ざめ、凄い速さでズボンを履く。
「ワタシ、ズボンハイタネ! ズボンハイタカラ、ハモンナシネー!」
そんなに、あの適当神の宗教が大事なのか。宗教って恐ろしいな……。
「蘭、宗教って恐ろしいな」
「洋一、変な宗教にだけは絶対にハマらないでね」




