第97話 復活のリュイ
光が、脈を打つように明滅する。まるで、心臓が鼓動を鳴らすように。クリスタルの中の光が強くて、リュイがみえない。大丈夫なのかな?
━━ドクン
━━ドクン
━━ドクン
「師匠ー! ヘルプミー!」
鼓動が、早まっている。
そうこうしている内に、神殿のドアが開く。そこには、師匠が立っていた。やっぱり聞こえたんだな!
「やれやれ。凄い魔力を感じたから来てみれば、精霊の格が上がる瞬間だなんてね。とりあえず……そうりゃ!!」
師匠が剣を抜き放ち、その剣を地面に突き刺す。
「踊れ、マナよ! 大地に息づく、遍く精霊よ! 僕に力を貸せ! アースバリアフィールド!!」
師匠が詠唱を始めると、俺の紅い魔眼が共鳴し疼き出す。紅い魔眼を入れられた目から血が滴り落ちる。
「なっなんだよこれ! 師匠と師匠の剣に、精霊の魔力が……!」
「洋一、目から血が……!」
師匠が剣を軸に舞い踊る。剣舞って奴かな? イケメンだから様になるけど、凄い魔力だ……
「踊れ! 祝え! 新たな、大精霊の誕生を! 世界よ、祝福しろ!」
剣を引き抜き、リュイに剣を向ける。赤、青、黄、緑、黒、白、の魔力が、リュイの中に入っていく。
「さあ! 産まれよ、世界の落とし子たる、大精霊リュイよ!」
俺と蘭は、その場から動けなかった。リュイを見守るしか出来ない。
瞬きをした後、世界から色が消える。
「なっなんだこれ? 蘭? 師匠?」
二人が動かない。ん? あれ? 師匠が瞬きしたような……。
『ニシシシ! アタチ、完全復活! ババババーン!』
リュイの笑い声と、完全復活と言う言葉が聞こえた。
「リュイ? リュイなのか?」
だが、姿は見えない。
『アタチの誕生の時の中でも動けるなんて、やっぱりヨーイチは化け物ね!』
ケラケラ笑いながら語るリュイ。誕生の時? とにかく、リュイが復活か? また遊べるのか? やったぜえ!
「うおおお! リュイ! お前、急にクリスタルに入りやがって、心配したじゃねえか!」
『あはは、よく寝たー! アタチ、スーパー強くなったからね。どう? スーパーボディのアタチは?』
はて? スーパーボディとは?
「姿が、見えないんだが……」
リュイの声だけが、辺りに響いていた。
『あはは。どうしよう、どうやって戻ろうか……あっ!』
二ヒヒと笑うリュイ。
『ヨーイチ、刮目しなさい! リュイちゃんのハイパーフラッシュ!』
「目があああああああああ!」
やばい……。今回は、絶対失明した……。
「洋一! 急に目を、押さえてどうしたの?」
蘭の声が、聞こえたって事は、戻れたのか。
「……リュイにまたフラッシュされた……」
もはや、目潰しの域だ。
「いやー! 頑張ったかいが、あったなー。どっこいしょっと。お茶でも飲もうかな、あっ蘭ちゃんも飲む?」
お茶!? 俺の目は? なにも、見えないんだが……。
「あっどうも……」
蘭も、どうもじゃないよ!
「呑気にお茶を飲んでる場合か! 蘭、師匠、俺の目を治してくれー!」
早く治してくれ! 見えないって、めちゃくちゃ怖いんだが……。
「あっ洋一……今治すね」
ありがたいけど、もう少し早く治して欲しかった……。あれ? そう言えば、リュイは?
『ヨーイチ! 目は治ったの? 私のナイスバディを見なさい!』
身長が5cmから、一気に10cm位になったリュイがいた。プロポーションに変化はない、当然ナイスバディではない。
「ちょっと、身長が大きくなったかな? ナイスバディではないけど……」
『ちょっとって、なによー!! くらえ!』
極太の雷光が、俺を貫く。
「あぎゃああああああああ!!」
いつもより、痛いし、痺れる。こっこれが、大精霊の力か……。恐るべし……ガクッ
『あっあれ? ヨーイチ? いつも効かないのに? なんで? どうして?』
リュイが、慌てふためいてる。
「そりゃあねえ。リュイちゃんは、大精霊になったんだから、技の威力が、上がってて、当たり前だよ。ツンツン、ツンツン」
あっ、しっ師匠やめて、鞘で、ツンツンしないで……。俺は、うんちじゃないから……んちゃ! って言えないから……。さりげなくリュイを名前で呼んでる……イケメンスキルか。
『よっヨーイチ? 大丈夫だよね?』
リュイが、心配している。早く立ち上がらないと。まいった上手く足に力が入らん……。
「あっああ。出来れば、次から雷はやめて……」
俺は、フラフラとしながら立ち上がる。
『ヨーイチなら、大丈夫だと思ったんだけど』
リュイに悪気はないんだよな、強くなったリュイに俺が勝てないだけか……。なんだか、少し悔しいな。
『ヨーイチも、強くなったんだよね?』
「うん、一応。そのはずなんだけど、師匠、どうなの?」
「いや、全然」
師匠は、真面目な顔をして、首を横に振る。
「全然ってマジで?」
「うーん、技が使えるようにはなったし、レベルも多少は上がったけどねえ。まだまだだよ。こんなところで、慢心して貰う訳にはいかないからね」
師匠は不適に笑う。慢心はしないつもりだが、まだまだかー。強くなる為の、道のりは険しいな。もっと強くならなきゃだよなあ。
「洋一。まあ、焦らずにいこう。リュイ様も目を覚ましたんだし」
「そうだな! リュイ、改めてよろしくな!」
『うん。アタチ、がんばるよー! バリバリやっちゃうよー!』
「よーし。じゃあ、この国から出発するよ!」
「「『え?』」」
師匠のいきなりの、出発発言に、一同唖然としてしまう。
「もうですか?」
「うん。この国を、これ以上の戦禍に巻き込みたいならゆっくりしてても良いけど?」




