エピローグ
ヒロユキは語り終えると、コーヒーを一口飲んで喉をうるおした。この店に、二人でかなりの時間滞在している……だが、店のマスターからは文句を言われる気配がない。ひょっとしたら、マスターは目の前にいる自称ルポライターと、何らかのつながりがあるのかもしれない。
「なるほど……まあ、にわかには信じがたい話ですよね。ところで、私には幾つかわからない点があるんですよ。まず……あなたは何故、自首したんです? しかも、あなたは五年の刑期を務めあげた。少年法のおかげで軽くなったとは言え、五年というのは決して短くはない年月だ。それを……なぜ素直に務めあげたんです?」
天田士郎の問いに、ヒロユキは苦笑して見せた。
「普通の人なら、もっと根本の部分を突いてくるんですが……あなたは、本当におかしな人だ」
「あなたは強大な魔力を手に入れた、と仰ってました……ならば、さっさと逃げられたはずですよね? 行こうと思えば、外国でも……なのになぜ、わざわざ自首なんかしたんです?」
士郎の目は真剣そのものだった。それを見て、ヒロユキの表情も真剣なものに変わる。
「ぼくはね、罰を受けなきゃならなかったんですよ。自分の犯した罪……それに対する罰を――」
「ハザマを殺したことですか?」
「違いますよ……あんなクズを殺したことなど、ぼくは罪だと思っていません。ぼくの罪、それは……カツミさんとタカシさんを死なせてしまったことです」
「それは、あなたの罪ではない」
「いえ……ぼくにも責任の一端はあります。ぼくの決断が遅かったから……あの二人は死にました。ぼくの決断がもう少し早ければ……どちらか一人は助けられたかもしれない。なのに……ぼくは……」
ヒロユキは言葉を止め、唇を噛みしめる。あれから何年経ったのだろう……しかし、二人の死に対する後悔の念は未だに消えない。自分にも、責任はあった……。
だからこそ、自らの力を封印して刑務所に入ったのだ。もっとも、それだけが目的ではなかったが……。
「わかりました……今日はどうもありがとうございます。いずれまた、お話を聞くことになるかもしれませんが……」
そう言って、士郎は立ち上がる。そしてテーブルの上に封筒を置いた。
「少ないですが……こいつは取材にご協力いただいた謝礼ということで――」
「いりません。それよりも……あなたは、ぼくの話を信じてくれたようですね。どうしてです?」
ヒロユキは座ったまま、士郎を見つめる。一見すると、ただの人だ。イケメンとは言えないがブサイクでもない、特徴のない顔。中肉中背の体。雑踏に紛れ込んだら、見つけるのは難しいだろう。平凡……士郎を表現するのにはピッタリの言葉だ。
しかし、ヒロユキにはわかる。
士郎は平凡ではない。恐らくは、裏社会の住人だろう。それだけでなく、国や社会といったものに対する帰属意識が極端に薄いようにも見える。
この男は、使えるかもしれない。
ヒロユキの問いに、士郎は不敵な表情で口を開く。
「私も今まで、いろんな人間を見てきましてね。大体わかるんですよ……嘘を言っているのか、そうでないかくらいのことはね。それに、私も見たことあるんです……数人の人間が、別の世界に行くのをね。目の前で数人が消えたんだ……信じるしかないでしょう」
「消えたんですか……」
「そう、消えましたよ。私はね、不思議なものをたくさん見てきました。だから、あなたの言うことを信じる気になったんです」
「そうですか……」
そう言うと、ヒロユキも立ち上がった。そして頭を下げる。
「では、そろそろ失礼します。ぼくもそろそろ行かないと……」
そう言って、店を出ようとした時――
「ちょっと待ってください……最後に一つだけ。ガイさんやニーナさんたちは、今どこにいるんです?」
後ろから、士郎の声が聞こえてきた。ヒロユキは振り返らずに答える。
「それは……いずれわかる時がきますよ。あなたは、面白い人だ。あなたになら、教えてもいいかもしれない」
そして数分後――
ヒロユキは南の無人島に来ていた。ここには人間が住んでいない。たまに付近の島に住んでいる漁師たちが立ち寄ることがあるくらいのものだ。砂浜にはさまざまな物が漂着している。ビンや発泡スチロール、靴や魚網など……近隣の島に住む漁師の物だろう。無人島と言えど、こういった文明の生み出した物からは逃れられないらしい。ヒロユキは思わず苦笑した。
そして、島の奥に入って行く。
海岸から少し歩くと、木が密集して生えている。地面もでこぼこで非常に歩きにくい。さらに、いたる所から小動物のたてるものらしい音が聞こえてくる。普通の人間ならば、引き返すだろう。
だがヒロユキは何のためらいもなく、島の奥に進んでいく。まだ陽は沈んでいないはずだが、周囲は薄暗い。密集した木の枝が日差しを遮り、視界は悪くなっている。
不意に、ヒロユキの足が止まった。じっと前を見ていたかと思うと……足音を忍ばせ、ゆっくりと歩き出す。森の中では、物音をたてずに歩くのは困難だ。しかし、ヒロユキはまるで空気と化したように静かに動く。
少し行くと、そこには開けた場所があった。かなり広いスペースだ。その中心には湖もある。湖の周りは、木もまばらにしか生えていない。よく見ると、道のようなものもそこかしこにできている。どうやら、何者かが木を斬り倒し草を刈り、人が通りやすくしたようだ。
そして、湖のほとりには……毛皮の服を着た幼い子供がいる。
子供は湖のほとりにしゃがみこんでいた。お尻からは長い尻尾が生えており、時おりくねくねと動いている。どうやら、子供の気持ちが尻尾の動きに反映されているようだ。じっと湖を覗きこんでいる。恐らく、湖に棲む魚や蟹などの動きを見ているのであろう。
ヒロユキは、その光景のあまりの可愛らしさに思わず微笑む。子供の後ろ姿と尻尾の動きは本当に微笑ましく、時間を忘れて見つめていた。
しかし――
「誰だお前は!」
突然、横から聞こえてきた怒鳴り声……ヒロユキがそちらを向くと、別の子供が一人、警戒心を露にしてこちらを睨んでいる。湖のほとりにいた子供よりは大きいが、それでもヒロユキよりは遥かに小さい。恐らく、四、五歳ではないか……毛皮のベストと腰巻きを身に付け、釣竿らしき物と草で編んだカゴを持っている。顔は可愛らしいが……その目付きの鋭さには見覚えがあった。
あの目付きの悪さ……ガイさんにそっくりじゃないか……。
ヒロユキの顔は、思わずほころんでいた……だが、少年は敵意丸出しの表情でヒロユキを睨みながら、鋭く叫ぶ。
「タカコ! お前は逃げろ! 早くお父さんを呼んでこい!」
その言葉に、湖にいる子供――女の子だったのだ――がすかさず反応する。
「わかった! カツミ兄ちゃん! すぐにお父さん連れて来るから!」
叫ぶと同時に、タカコと呼ばれた女の子は木によじ登った。猿のような早い動きだ。さらに、カツミと呼ばれた少年はヒロユキめがけ飛び蹴りを放つ――
カツミ少年の体格は、成人男性の半分以下だろう……にもかかわらず、その飛び蹴りの威力は凄まじいものだった。並みの男なら、まともに食らえば倒せるくらいの威力だ。
しかし、ヒロユキはその飛び蹴りを受け止めた。と同時に、蹴り足を掴んで抱き寄せる。そして、カツミ少年を抱えたまま消えた――
次の瞬間、木の枝の間を飛び移るタカコ――猿のような動きで木の枝の間を渡っている――の前に、ヒロユキがいきなり出現したのだ。
「きゃ!」
タカコはヒロユキを見た瞬間、衝撃のあまりバランスを崩した。そして枝から落ちる……しかし、ヒロユキはまたしても瞬間移動した。タカコが地面に激突する寸前、ヒロユキが抱き止める。
そして言った。
「ねえ、君たちのお父さんとお母さんに会わせてくれないかな? ぼくは……お父さんとお母さんの友だちだよ。ヒロユキって名前なんだけど……聞いてないかな?」
それは不思議な光景だった。
カツミとタカコに案内され、やって来たのは開けた草原だった。尻尾の生えた十人近い幼子たちが遊んでいる。カツミやタカコよりも、さらに小さく幼い子供たち……皆とても楽しそうに、思い思いの遊びに興じている。
そして子供たちの中心にいるのは二人の女だ。
一人は毛皮の服を着て、子供たちと同じく尻尾を生やしている。だが、子供たちとは違う点もあった。猫のような耳が頭に付いていたのだ。歳は若く、十五歳から十八歳くらいか。
そして、もう一人は二十歳過ぎ。こちらは尻尾が生えていない。草原にしゃがみこみ、ニコニコしながら子供たちと遊んでいる。
「ヒ、ヒロユキさん? ヒロユキさん……ヒロユキさんですにゃ! ニーナさん、ヒロユキさんが帰ってきましたにゃ!」
真っ先に気づいたのはリンだった。リンは慌てふためき、横でしゃがんでいたニーナを力ずくで立たせたのだ。そして、こちらに顔を向けさせる。
その瞬間、ニーナの表情が一変した。ニコニコしていた顔が一瞬、仮面のように表情が固まったかと思うと……一気にぐしゃぐしゃになる。
そして、声にならぬ叫び声を上げながら突進し、ヒロユキに抱きついて行った……。
「ニーナ……ただいま。もう、どこにも行かないよ……ぼくは、ずっとここに居るから……」
ヒロユキはニーナを抱き止め、優しい声をかける。一方、リンは大声で叫びながら、物凄いスピードで森の中に走っていく。
「ガイさん! チャム姉さん! ヒロユキさんが帰ってきましたにゃ!」
ややあって、ガイとチャムが森の中から現れた。そして、こちらに向かい走って来る。
「ヒロユキ! バカ野郎! 帰って来るなら先に言えや!」
「そうだにゃ!」
ヒロユキのそばに来て、怒鳴りつける二人……そして子供たちは皆、何事が起きたのか把握できないままだった。ポカンとした様子で、自分の父と母が来客と抱き合い、そして泣き笑いしている様を眺めていた。
その後、皆で焚き火を囲んで食事をとる。
「みんな……ガイさんとチャムの子供なんですか……凄いですね、こんなに大勢いるなんて……」
ヒロユキは周りを見回し、感心した口調で言う。子供たちはいかにも美味しそうに、鳥のスープを食べていた。ニーナとリンが手分けして、子供たちに配っている。鍋や皿は漂着してきた物を用いているようだ。
「な? しょうがないにゃ……ガイは交尾が好きだから――」
「子供の前で言うな!」
無邪気なチャムの発言に、顔を真っ赤にしながら突っ込むガイ。二人の相も変わらぬやり取りに、ヒロユキは思わず微笑んだ。その横で、子供たちは楽しそうにキャッキャッ笑いながら、リンに話しかけたりチャムにじゃれついたりしている。
ヒロユキは微笑みながら立ち上がった。そして、ガイを見つめる。
「ガイさん、ちょっと来てもらえますか? お話があります」
「なあヒロユキ、話って何だよ?」
ガイの口調は朗らかだった。表情も昔に比べ穏やかである。ここでの生活は、ガイにとって満ち足りたものなのだろう。
「ガイさん……ぼくはこの五年間、ずっと考えてきました。ぼくたちは何のために、異世界に行ったのだろうかと……その答えがわかったんです」
「え……」
怪訝な表情になるガイ。ヒロユキは言葉を続けた。
「もし、ぼくたちの異世界での旅が……神によって書かれたシナリオであったとするならば、その主人公は誰だと思います?」
「ヒロユキ……お前なに言ってんだよ……オレにはわかんねえよ……」
ガイは困った表情で口ごもる……まったく想定外の話なのだろう。ヒロユキは気の毒になってきた。しかし、ガイには告げなくてはならない。
真実と……これから起こりうる事態を。
「ガイさん、このシナリオの主人公は……あなただったんですよ」
「はあ? 何を言ってるんだよ?」
「ガイさん、ちょっと聞いてください。あなたとチャムの間には、子供が出来ています。あれは……本来ならあり得ないことなんですよ。人間が交配して子孫を残せるのは、人間が相手の時だけなんです。人間とニャントロ人との間には……子供は出来ないはずなんですよ」
「え……」
「ですが、あなたとチャムの間には子供がいる。これは何故でしょうねえ?」
「し、知らねえよ……」
ガイは呆然としている。だが、ヒロユキの話はまだ半分も終わっていない。核心はこれからなのだ。
「ガイさん、ぼくはこう考えました。あなたは……火事をきっかけに超人と化した。人間離れした身体能力と傷の再生力、そしてニャントロ人と交配可能な繁殖能力を……神はそんなあなたに目を付け、異世界に送り込んだんです。チャムと出会わせるためにね」
「……」
「ガイさん……神の描いたシナリオの主人公はあなたなんですよ。あなたを異世界に送り込み、チャムと出会わせる……しかし、いくらあなたでもレイコには勝てない。いや、それ以前に……あなた一人では、異世界で生き延びることは出来なかった。だから、神は四人の人間を一緒に送り込んだんです。最強の兵士であるカツミさん、最強の交渉人であるタカシさん、最強の指揮官であるギンジさん……そして、ぼく」
ヒロユキは言葉を止め、ガイの反応を見る。ひょっとしたら、ガイはヒロユキの言ったことをちゃんと飲み込めていないのかもしれない。
少し間を空けた後、ヒロユキは言葉を続ける。
「ぼくは……あの世界に行った直後、自分の役割がわかりませんでした。皆さんはそれぞれ、凄い力を持っている。しかし、ぼくには何もない。なぜ、ぼくが異世界に……しかし、今思うと、誰一人欠けてもいけなかったんですよ。ぼくには知識があった。さらに、ぼくはニーナと出会い強くなった……あのギンジさんですら、認めてくれるほどにね」
「……」
ガイは黙ったままだ。真剣な表情で、ヒロユキの話に聞き入っている。ヒロユキは話を続けた。
「そして、異世界を旅した結果……あなたはチャムとリンという、本来ならこの世界に存在しないはずのニャントロ人を連れてきてしまったんです。そして、人間でもニャントロ人でもない……全く新しい種族を生み出しました。ガイさん、あなたとチャムは……新しい種族のアダムとイブなんですよ」
「待てよ……じゃあ……オレのせいで……みんなは――」
「ガイさん、これは仕方のないことなんですよ。それに、話はまだ終わっていません。肝心なのは……ここからです」
ヒロユキの言葉を聞き、ガイの困惑はさらに大きくなったようだ。さすがのヒロユキも、この先を続けるのはためらわれた。
だが、言わなくてはならない。
「ガイさん、ぼくの考えを言います。あなたの子供たちは……人間に変わってこの世界を支配する、新しい種族なんですよ」
「はあ?」
呆気に取られた表情で、間抜けな言葉を返すガイ……だが、ヒロユキの表情は真剣そのものだった。
「ガイさん、もし他の人間たちがカツミくんやタカコちゃんを見つけたら……どうすると思います?」
「そ、それは……」
「人間に似ているが……尻尾が生え、凄まじい身体能力を持ち、人間と同レベルの知能も持っている新種の生物。人間はカツミくんたちを、そう判断するでしょう。そして捕まえ、実験動物として扱う――」
「ふざけるな!」
ガイの表情が一変した。恐ろしい形相でヒロユキを睨み付け、言葉を続ける。
「オレの子供に手ぇ出す奴は……誰だろうとブッ殺してやる!」
「ええ……ぼくも同じ気持ちです。しかし残念ながら、人間は確実にカツミくんたちを忌み嫌うでしょうね……ガイさん、ぼくはギンジさんから教わりました。人間の本質は、悪だと」
「なんだと……」
「思い出してください、あの世界で何があったかを。例えば、山賊のオックスとラーグ……奴らは権力者の狂った好奇心と、魔術師の狂った研究心によって生み出された、人でも怪物でもない生物です……人間は平気で、そんなことをするんですよ」
「……」
ガイの表情が、またしても変わる。青ざめた顔で下を向いていた。恐らく、あの二人のことを思い出したのだろう……。
「それだけじゃない。ガイさん、ホープ村はどうなりました? 何の罪もない村人たちが皆殺しにされたんですよ。老若男女構わずに……病人だったり、人と見た目が違っているという理由だけでね」
「違う……この世界の人間は……奴らとは違う……」
「いいえ、違いません。ぼくが何のために刑務所、いや、医療少年院に行ったのか……最悪の環境で、この時代の人間たちの行動を観察するためでもあったんです。結論は……人間の本質は、やはり悪でした」
ヒロユキは笑みを浮かべる。ガイはうつむいていた。異世界での荒々しい姿が嘘のようだ。ヒロユキはガイの肩を叩く。
「ガイさん……腹を括りましょう。あなたの子供たちと人間とは違う種族なんです。このままいけば、人類と戦わなくてはならないんですよ。少なくとも、その可能性は非常に高い」
「オレたちは……ずっとこの島で……家族だけで……ひっそり暮らす……それなら問題ないだろ?」
「無理です。カツミくんたちは成長し、そして増えていきます。リンとカツミくんの間に、子供ができるかもしれません……皆が暮らすには、この島は狭すぎます。それに……いずれ人間には気づかれることになるでしょう」
「共存は? 人間と話し合い、上手く共存していくことは出来ないのかよ?」
尋ねるガイ……いや、懇願していた。ヒロユキはガイの目を見つめる。荒々しく、好戦的な男だったガイ……だが今の彼は家族のために、争いを避ける道を探している。
それでも、真実は告げなくてはならない。
「ガイさん、共存はまず不可能でしょうね。人間は未だに、人種間の差別すら解決できていないんです。しかも、あなたの子供たちは人間よりも遥かに強い上、知能も高い……人類にとって脅威と認識されるでしょう。人間に取って代わるかもしれない種族……人類は全力で排除しにかかるでしょうね。人間には異質なものを排除する習性がありますから……ホープ村がいい例ですよ」
「どうしても……無理なのか……」
「断言は出来ません。ひょっとしたら、ぼくは間違っているのかもしれない。共存の道はあるのかもしれません。確かなことは、ぼくはいざとなったら……人類と戦い、カツミくんたちを守るために、この力を使うつもりでいるという事実です」
「ヒロユキ……」
「神がぼくに与えた役割、それは……ここに新しく誕生した種族の繁栄を助けることなんです。そのために、ぼくは力を手に入れたんです。もし人類がカツミくんたちの前途を阻む障害となるならば、ぼくは人類を駆逐するつもりです。ガイさん、あなたにも覚悟して欲しいんですよ。いずれ、人類と戦争になるかもしれないことを……協力してくれそうな人間にも、目星は付けてあります。人類がどうなろうが知ったことじゃない、ってタイプの男をね」
「ヒロユキ……お前はそれでいいのかよ?」
「今のぼくは、人間じゃないんです。それに、あなたはぼくを助けてくれた……あなたの子供のためなら、ぼくは何でもします。まあ、個人的主観を言わせてもらえれば、カツミくんたちが人類を駆逐し、この世界の支配者になった方がいいように思いますがね――」
「二人とも、いつまでひそひそ話してるにゃ! ヒロユキ、ニーナが寂しがってるにゃ!」
突然、会話に割って入ってきたチャムの声……ヒロユキが振り向くと、チャムは赤子を抱いたままこちらに歩いてきた。原始人のような毛皮の服から片方の乳房をはみ出させ、そこに赤子が吸い付いていた……ヒロユキは苦笑し、ガイに視線を戻す。
「行きましょうか、ガイさん。そうそう……後で日本に戻って、美味しいお菓子や便利な道具をあちこちから拝借してきますよ。人類を駆逐する前に、まずはここの生活を便利にしないとね。いずれは、この近辺の小国を乗っ取ることも考えないと……」
ヒロユキは喋りながら遠ざかっていく。
その後ろ姿を見ながら、ガイはたまらなく不安になった。そして、後悔の念が頭をよぎる。
オレは間違っていたのだろうか?
向こうに残るべきだったのか?
しかし……。
もう、遅いのだ。
全ては始まってしまったのだから……。
最後までお付き合いいただき、改めて感謝いたします。どうにか終わらせることができました。実は、途中から欲をかいて、百万字くらいまで書いてやろうかと思ったのですが……さすがにそれはないな、と思い止めました。また、この作品では主要人物五人のうち三人が壮絶な死を遂げるという形になりましたが……私はバトルものを書く以上、味方の犠牲者を0で終わらせたくはないな、という思いがあります。多くの命を奪った報いは誰かが受けなくてはならない……殉死した者は命を、そして生き残った者は深い悲しみという代償を……まあ、そのあたりは好き嫌いの問題になるので、これ以上は申しません。何はともあれ、無事に完結させることができました。嬉しいですね。
あと……実はこの作品、『ss紹介 ネット漁り - アメーバブログ』というブログにて紹介されていたのです(2014年5月20日)。私は自慢話めいた発表が嫌いなので、あえて黙っていましたが……完結した今ならばと思い、発表させていただきました。ブログを書いている、ろろろどんさんにはとても感謝しています。取り上げていただいて励みと自信になりました。本当にありがとうございます。
そして……レビューを書いてくださった立花黒さん、里見ケイシロウさん、かきくけ虎龍さん、鴉野 兄貴さん、上地流水さん、本当にありがとうございました。また、感想、評価、ブックマークを下さった皆々様、心より感謝します。最後まで読んでくださり、ありがとうございました。




