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mercy rain  作者: 塔子
49/57

【48】

でもさ~っと、実結は私の反応なんて気にする様子も無く話し続ける。



「美雨は、いつから兄貴の事、好きだったの?」

「………」



いつから?って、それは…、あの雨の日、迎えに来てくれた日からだけど…。


でも、それは、きっかけに過ぎない。


きっと、ずっと前から大切な存在であった事は変わりない。勿論、実結も華江おばさんも。



「好きな人が居るって、言ってたじゃない。それって、兄貴だったんだ?」

「……うん」



小さく頷いた。


今まで、隠してきたという事実がどこか後ろめたい。その反面、素直になるには照れ臭い。


「美雨も、言ってくれればな~」

「…そう、だね」



私が隠さず、気持ちを晒していれば、ここまでややこしくなったりしなかっただろう。


――でも



「――でも、ヒロ兄には、彼女さんが居たでしょう」

「まぁ、確かに…。でもあれは、美雨の事を諦める為だからね」


「えっ?」

「マズいでしょう!高校生が小学生をマジで好きになってしまいました!なんて…」



う、嘘?!


そんなに前から、私の事を?!


思わず、頬が緩む。胸の奥に嬉しさが染みていく。



「世間一般に言えば、変態!幼女趣味!犯罪者!」

「っ?!!!!!!!」


「でも、二人が両想いだったなんて~~~~~!!!!」

「~~~~~~!!」



実結の絶叫に、あわあわと慌ててしまう。


そんな私に実結は、じとーっとした視線を向けて「私、バカみたい」とポツリと言う。



「美雨と兄貴の為に、いろいろ考えていたのに!」

「そ、それは――」


「二人とも、お互いを想うあまりに気の無い振りしちゃってさ」

「実結……」


「私が二人の仲を引っ掻き回したみたいじゃないっ!!!!!」



むす~っと不機嫌な顔をして、実結は布団の中に潜っていく。


声を掛けずに様子を伺っていると、すぐに規則正しい寝息が聞こえてくる。


そう言えば、実結の寝付きはとても良かった。



「おやすみ、実結。今まで、ごめんね」



明日から、何がどんな風に変わってしまうのだろうかと不安に思う。


知られたくなかった想い。


知って欲しくて仕方なかった想い。


でも、私は私で何も変わらない。


私は変わらず、ココに居る。だから、大丈夫!


明日の朝、目が覚めたらいつもと同じ私であれば、実結もヒロ兄も同じで居てくれるよね?






     *    *    *





翌朝。



鹿島家のキッチンに、華江おばさんと実結、ヒロ兄。そして、私の4人が立つ。


さすがに4人も居れば、窮屈な感じ。


でも、それぞれが役割を振り分けて、朝の支度をするのは今回が初めてではない。


慣れた動きで、各々朝食の用意、お弁当の用意をしていく。



「さあ、食べましょう!」



と、華江おばさんが席に着くと、各自指定の席に座り朝食を食べ始める。



「美雨ちゃん、学校帰りにお店に寄ってね」


「え?」


「大樹に、送らせるから」


「あ、でも…」



美容師としての仕事があるんだから、いくら華江おばさんが「いいよ」と言っても――。



「ここで、ちゃんとけじめを付けないと!分かってる?大樹!!」


「分かってる」



何故か、他人の私には割って入れない親子間の空気。


ヒロ兄と華江おばさんは、力強くお互い見合って頷いている。


この先に、何が始まるの?


お、おばさん、ただヒロ兄が送ってくれるだけじゃないの?



「さぁ、そろそろ行く準備しないと遅刻する!」



顔を上げて壁に掛かる時計を見れば、もうのんびるしてる時間は無い。


お弁当を鞄に詰め込み、実結と二人していつもの様に学校へと向かった。



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