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mercy rain  作者: 塔子
13/57

【12】

奥深く沈めたはずの想いは、もうどうする事も出来ないほど膨れ上がり、暴走寸前まで来ている。



そんな想いをママには気付かれていた。



――どんな気持ちも、言葉にして伝えないと苦しくなるばかり。



そう言われ、想いを伝えようと心に決めてから、1週間が過ぎた。



ありったけの覚悟を決めて、ヒロ兄の下へ行こうとしても、肝心のヒロ兄の姿が何処にも無い。



実結の家に行っても、華江おばさんの美容院に行っても、会えない。



と言うより、存在自体初めから居なかったんじゃないかっていうぐらい。



もしかして、感づかれているの?



答えるのがイヤで、面倒だから?



私、ヒロ兄に避けられているんだ。



だからと言って、このまま引き下がる事なんてしたくない。



会えない分、逆に想いは募るばかり。半ば意地になってる所も有るけど……。









「食欲無い?美雨」


「え?」


さっきからお弁当を見つめてばかりで、と目の前に座っている実結が私の様子を伺ってくる。


ここは学校。今はお昼休み。


実結と一緒にお弁当を食べようとしている所。


「さっきから、ボーっとしてるし」


と心配な顔をしてる割には、ミートボールをぱくっと美味しそうに食べている。


誰のせいで!と思うけど、一連の出来事を思い返すと実結がだけが悪い訳じゃない。



“美雨接近接触禁止令”



未だに、この令を実行に移しているこの兄妹。


あれから2週間経っても、ヒロ兄に会えない。



「ちょっと、考え事してただけよ」

「考え事?」


「えーっと、今日の晩ご飯、何にしようかな~?とか」

「ハンバーグ!ハンバーグがいい!!」


咄嗟に浮かんだ言い訳に、実結はキラキラとした顔を見せて、私の――つまり私たちの晩ご飯のメニューを勝手に決めてしまう。


仕方ないな~って、思う反面――少し閃いた。



「分かった、実結。ハンバーグ作るよ」

「やった~!美雨のハンバーグ、最高に美味しいんだよね~~!!」







大皿に4人分のハンバーグを乗せ、ラップに包み普段は階段で上るけど、今日は慎重にエレベーターに乗って行く。


ママは、今夜は高梨さんと会うって言ってたから、丁度良い。


少しぐらい遅くまで実結の部屋に居ても、誰も何も言わないだろう。



――ヒロ兄が帰って来るまで、絶対!家には戻らないんだから!!



強い意志を込め、大皿を持つ手に力が入る。



――揺るがない。もう、ここまで来て引き返したりなんて出来ない。私自身も、私の心も。




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