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魔物(マンドラゴラ)ってバレたら討伐ですか?~花の魔女はひっそり平穏に暮らしたい~【WEB版】  作者: Mikura
三章

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63話



 拠点の建築から数日、何事もなく過ごした。どうやらやりすぎて化け物だと疑われる、ということはなかったようだ。

 あれ以降、緑株と桃株は交代でニコラウスを監視しているが、桃株は村のお手伝いさんとして村民に愛されているらしく、そちらの友好関係を疎かにできないので主な監視役は緑株のままである。


(ん? ……なんか信号が出てる気がする。緑株だから、ニコラウスさん関係……?)


 子株たちは私に向かって信号を発することができるため、彼らから何かしらの知らせがある時は私に伝わる。その詳細までは不明だが、何かあるということだけは分かるのだ。

 緑株に同期して確認しようかと思っていたら大きな気配が近づいてきてすぐに内容を把握した。……なるほど、ニコラウスがこの家に向かっているという先触れだったらしい。



「あ、魔法使いさまが来るんですか? 俺、出迎えしてきますね」



 突然立ち上がって鏡の前で自分におかしな部分がないか再確認する私を見て、ノエルはニコラウスの来訪を察したようだ。家の前に出て彼を迎えに行った。

 ニコラウスが来ると分かっていればヴェールをつけるのが習慣である。少しでも隔てるものがあれば心の余裕が布一枚分だけ違うというわけだ。


(文字が書ける板と……この前貰った薬の小瓶と……他に用意するものは、ない、よね?)


 テーブルの上にそれらを置いて準備はできたが、まだ機嫌悪く睨まれたらどうしようと不安になってきた。他にできることはあっただろうか。とりあえずニコラウスは怖いのである。


(……いっそテーブルの上に花を飾って衝立代わりにしちゃおうかな……)


 さすがに植物の壁を作るのはあからさますぎるので、大輪の花を飾るか小さな花を寄せ集めて飾るかしてテーブルの中央に置けば、怪しまれずにちょっとした壁を作れるのでは――と考えていたところで家の扉が開いて、ニコラウスを連れたノエルが戻ってきてしまった。

 そして二人の背後で緑株は敬礼し、閉まっていく扉でその姿が見えなくなる。……しまった、子株をテーブルの上に置くという手段を取ればよかったのに、今からわざわざ二人の背後の扉を開けて子株を持ってきては何をしているのかと怪しまれるかもしれない。


(ま、間に合わなかったぁああ……!)


 せっかくいいアイデアを思い付いたのに、実行するまでの時間がなかった。内側では嘆きの声を上げているがそれが誰かに届くことはない。届いたら死んでしまうので別に届かなくていいのだけれども。

 ノエルは客人をもてなすためにお茶の用意で台所に入り、傍にいてくれない。椅子を勧める前に当然のように席に着いたニコラウスの前に私も仕方がなく座った。……次こそは花を飾って仕切りをつくろうと心に決めながら。だって怖いもの。



「……ちゃんと飲んだみたいだな」


(はい……あ、お礼書いた方がいいよね……?)



 彼にもらった魔法の板に文字を書き込む。「ありがとう」とそれから「美味しかった」と感想も添えたのだが、鼻で笑われてしまった。……まあ、怒ってはいないみたいなので大丈夫だろう。



「今日は……先に仕事の話をするけど。お前に一つ、国から要請があって」


(えっと……なんだろう。この前は防衛に協力するように、だったけど……)



 追加の仕事だろうか。それとも拠点でやりすぎたことで疑いをかけられ、身柄を拘束されたり出頭を命じられたりするのだろうか。いざという時は全力で逃げるべきかそれともおとなしく従うフリをしてごまかす方法を考えるべきか。

 私が怯えているとニコラウスは呆れたようにため息を吐いた。



「笑ってなんでも引き受けようとするな。無理だったら断っていいんだからな。……魔力の使い過ぎは、僕たちには毒なんだから」


(あ、この口ぶりだと仕事の話かな……? よかった。でもそんなに難しい仕事なのかな)


「……これが書簡。要約すると、隣国に輸出する浄花を用意してほしいって内容。その後も確保できるならできるだけ欲しいみたいだね」



 私は現代の文字が読めないため、ニコラウスから丁寧に説明をしてもらう。

 現在、魔境は毒や呪術系の魔物が増えた影響で、汚染区域となっている。しかしこちら側は私が生やした浄花が汚染を食い止めているため、影響がない。そしてその浄花は少しずつ範囲を広げているものの、()()()には届いていないのだ。


(あ、そっか……そうだよね。考えてみれば川があるのはここだけじゃないか。山の向こう側にも人間の国があるんだ……)


 私はたまたま()()()()に来ただけで、山の向こう側にも人間の国がある可能性を忘れていた。

 だとすれば、私が来た時のビット村やノエルの故郷のように、魔境の影響で酷いことになっている人間の区域があるのではないだろうか。……それは大変だ。



「一応、隣国ルサットではそこまで甚大な影響はでてないよ。向こう側はしばらく山脈が続くからね。……まあ、その自然区域がだんだんと浸食されていて、こちらの状況も確認したうえで打開策の協議をしてるところなんだけど」



 山の向こう側にはルサットという国があるらしい。山のあちら側は浄花がないせいで魔境が広がっていて、そういう意味でも打開策を求めて同じ状況にあるはずのこのヴァニリア王国と連携をとろうとしたところ、花の魔女が浄花を広げているおかげで浸食が食い止められていることを知り、魔境をこれ以上拡大させないため、そしてルサットを守るために花の提供協力を願われているということだ。


(うん、それは必要なことだもんね。いいよいいよ、浄花くらいどんどん作って送ってあげるよ)


 浄花が増えるには魔力が必要だ。魔境という魔力の溢れる土地だから浄花は勝手に増えるのであって、人間の住むような区域では増やせない。

 ここにあるのは私が多様化で作った浄花なので、私が命じて魔力を使えば簡単に増えるけれど、人間には本来養殖できない植物なのだ。これを魔境の境界にぐるりと植えれば、これ以上の毒や魔境の浸食を食い止めることができるというわけである。

 どう考えても必要な措置だ。私はこくりと頷いたが、ニコラウスはとても不服そうな顔をした。



「魔境の浸食を抑える分はともかく、この以降の継続的な浄花の要求は……国中の衛生環境の向上に使う気だね。ここまでやる義理はないと思うけど」


(公衆衛生だね。この村も最初はトイレも簡易的で、肥溜めだったもんなぁ……)



 魔道具があまりないド田舎なせいかもしれないが、ビット村は上下水の整備がされていなかった。都会では違うのかもしれないが、人間の衛生環境を向上するためというならば協力するのはやぶさかではない。

 きっと皆が私に感謝して、花の魔女という存在はとても役に立つのだと認めてくれるだろう。こちらも頷いたのだが、ニコラウスはもっと不機嫌そうな顔になる。……何故だ。



「……浄花を作るのは、魔力を使うだろ。僕じゃ植物の魔法を極めたお前みたいには増やせないから、お前頼りになるのに……求められてる量は結構あるぞ。せめて代わりになんでも要求しなよ。……お前は財に興味なさそうだけどさ、必要なものとかないの?」


(うーん……必要なものかぁ……あ、じゃあ……)



 ニコラウスが作っていた、子株に与えていた植物の栄養剤。あれが欲しいところだ。おそらく魔力回復薬よりも私にはそちらの方が有効である。まだ本体である私は味わったこともない。

 花を育てるためだとなれば要求しても不自然じゃないはずだ。そう思って、私は文字を書いてニコラウスに見せた。



『貴方の作った栄養剤がほしい』



 それを見たニコラウスは一瞬面くらったような顔をして、何故かうつむいたあと、盛大にため息を吐いた。



「……わかった。いくらでも作ってやる。飛び切り高級な材料を用意させて、作るから」



 これで取引成立だ。書簡にサインをする間、ニコラウスはなぜかずっとそっぽを向いていた。



隣国にもしちゃうんだ…株分け……



いよいよ明日、一巻の発売です。

緊張しています…。楽しんでもらえたら嬉しいな…。



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― 新着の感想 ―
明日の発売を楽しみにしています! 大根様の願い通り、人間との平和的生活がくりひろげられて嬉しい!隣国とも友好が深まりそうですね。いつか隣国に招待される旅行編がありそうで楽しみです。浄花は大根様が命じれ…
遂に隣国へ根を伸ばす侵略根菜怖い。 世界征服待ったなしの大魔王大根誕生しちゃう。
シンプルにニコラウスが可愛すぎて最推し。幸せになって欲しい。
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