ある休日にて。
休日、家族を病院に連れて行くため車で二時間かかる県庁所在地へ遠征。とはいっても定期検診みたいなもんなのでそんな大事でもないんですけどね。で、ついでにそこに住んでる親類を訪ねて近況報告というのがいつものルーチン。なので、せっかく県庁所在地に行ってもそんなに遊べないという。でも、どうせ遊ぶっつっても古本屋で立ち読みするくらいしかないし、いっか。
しかし数カ月ぶりに行ってみるとこれまた街の様相はかなり様変わりしてて、またも時代の移ろいをしみじみ感じちゃったり。
で、妙に派手な看板が目に入ったので運転しながら横目で眺めると炎のエフェクトで彩られた「業界最安値に挑戦!」とかいう挑戦的な看板。これ自体はそんなに珍しくない。新手のリカーショップか、ブランドショップか。スーパーだったら帰りに寄ってみよっかな、とか思ってたら、なんとその文言の脇には愛らしい子犬子猫の写真が……
「ええええーっ!?」と思い、即座に車をUターンさせて二度見しようかと思ったほどです。交通量多いのでムリでしたが。
つまり、その車で横を通り過ぎた情報のみで判断すると、その店はペットショップで「業界最安値に挑戦!」という挑戦的なコピーを打ってるわけですな。いいのか? これ……
なんかもう愛らしい子犬子猫を商品としてしか扱わないその商魂たるや、いや、商売人としては間違ってないと思いますよ? ペットショップってのは動物売りさばいてナンボなんだし、商品を安く提供したいって志は間違ってないと思うし。でもそれを生きた動物にまで適用ってのはどうなんだろう?
動物好きな人は眉をしかめやしないか? いやいや、待て待て。動物飼うってのは所詮人間のエゴだろ。捨てられた動物保護するってのは多少、エゴでもない気もするけど、それだって全ての動物を救えるわけじゃないし、そもそも保護しなきゃいけない動物が出る事自体が人間のエゴの結果なんだし。
それ考えたら件のペットショップの看板を誰が非難できましょうや?
それから数百メートルほど走るともう一軒、いかにもな感じの、大人しい佇まいの大きなペットショップがありました。もちろんこちらはあんな強烈なインパクトの看板など掲げてはおりません。うん、ペットショップってのはこういうもんだよね。動物飼うのは人間のエゴだなんて、客に毛ほども感じさせてはいけないのです。
でも、コマーシャルというインパクトでいえば前者の店の方が確実に勝ってます。ちょっと前を通り過ぎただけの自分にもここまで考えさせるほどのメッセが込められてもいます。あまりにも正直過ぎるその商魂はペットを飼うという行為がいかに人間の身勝手かという現実を残酷なほどにユーザーに訴えているのです。
正直過ぎて正直引きますが、商売に対する真摯な姿勢は伝わってきます。「可愛い猫ちゃん、ワンちゃんが貴方に飼われるのを待ってます」なんて偽善的な広告よりははるかに好感が持てます。
前者の店と、大人しめの後者の店の経営者、どちらが信用できるかと問われれば自分は迷うことなく前者の店の経営者を推します。それほどまでにあの看板は哲学的であり、風刺に満ちています。クリエイターかぶれとしても大変興味深い。
ただ、どっちの店でペットを買いたいかと言われれば、自分だったらそこでは買いませんけどね……




