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信玄の厠  作者: 厠 達三
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作品って、なに?

 芸術は極めて権力と結びつきやすい。人の心への影響力を考えれば医学や科学と同じように自制が必要だと思います。それは反権力にしても同じことで、特定の組織力を背景にしていない場合でも、その自制は必要とも思うのです。

 売れない芸術家さんでも権力と上手く手を組み、御用芸術家に転身すればいっとき、あるいは一生の売れっ子になれるかもしれません。そうでなかったとしても作品が人間の手で作られるものである以上、どうしても作者の思想が反映されてしまうのは避けられないので、ある程度の思想性を帯びるのは致し方ないかと。

 

 難しいのはその線引きをどこで行うのか。例えばただの花の絵でも、見る人によっては反戦を謳ったものか、戦争を煽るものか、それは見る人それぞれでしょう。そこに思想性があったにせよ、そこに何を読み取るのかはユーザー次第であれば製作者は問題提起の域を出ないのが理想といえば理想です。

 例えば三島作品でも作者はものすごい右寄りな人でも、作品もそうであるとは誰も言い切れないわけです。なので、作者の思想がどうであれ、明確に読者を不快にさせる意図がない限りは作品は分けて考えるべきです。(作品と作り手を分けて考える、ってのはこういう場合に使うんだよ!)


 しかし、特定のターゲットを不快にさせる意図があるなら、それはアジであり芸術作品とはとても思えません。

 実はここも重要なのですが、純粋な芸術作品というのは意外とつまらない。分かる人には分かるんだろうけど、自分のような一般人にはなにがなんだか分からないものも多々あります。どれほど高い技術で制作されたものでも、凄いのは分かっても、それが魅力的なものに映るのは一部の好き者に限られがちです。


 そのうえで広く支持される作品というのはひと握りの天才のものに限るという現実もあります。そういう作品を作れる人は公権力と手を組む必要はあまりなく、ましてやアジなどデメリットしかありません。

 が、才能がない、あるいはまったく売れない芸術家(便宜上芸術家とは言ってますが製作者でも何でもいいです)だとメリットは大いにあります。


 どんなしょうもない作品でも、そこに偏った思想性を盛り込めばアジとして世間の注目を比較的容易に集めることが可能です。良くも悪くも反響が得られます。それが右であれ左であれ、それはもう見る人の勝手でしょ、って逃げることもできます。結論のない論争を巻き起こしたところでそのケツを持つ必要もありません。そもそもアジとはそれ自体が目的なのは今更自分ごときが言うまでもありませんから。


 かくいう自分にしたってアジの一発でもやって注目浴びたいと全く思わないわけでもありません。論争巻き起こして根拠のない影響力でも得た気になって承認欲求満たしたいと思わないでもありません。ここに書いてるもの自体、すでにアジなんじゃないの? と、自分でも少し疑ってしまいます。

 まあ、こんなフリーの自己満エッセイでアジなんかやったところで論争なんか起こりっこないのは分かってるので、その心配はないかな?

 それはともかく、自分もやりたいと思わなくもないけど、アジなどやらないに越したことはないと自制してるのは別に芸術家を気取ってるわけじゃなくって、アジに手を染めるってことは、「ごめんなさ〜い。俺ってアジでもやんなきゃ誰にも注目してもらえない無能なんですぅ〜。人目を引く実力なんか毛ほどもないんですぅ〜」っていう、どこか僻みにも似た、能なしのご機嫌伺いのような卑屈さを感じてしまうからなのですね。人のアジに乗っかるのもまた同じことです。


 いや、だからといって不自由展までがそういう人たちの集団だなんて言うつもりはないんですよ?

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