笑顔のソフィア 3
「さあて、いよいよお宝との対面ですね」
ベッドから取り外した4枚の絵画を床に並べてやや興奮気味のケーン。どれも油紙に包まれており、他の絵画に比べて少し大きい。念入りに隠していたうえ、しかもそれぞれにマジックでナンバーが振られている。何かを期待してしまうのも無理はない。
「それじゃ、順当にナンバーワンから開けてみましょうか」
「ああ。だがあまり期待し過ぎるなよ。ガイシャのいたずらの可能性もあるからな」
「ご謙遜ご謙遜」
ケーンが油紙を剥すと、そこには期待したとおり、明らかに他の絵画とはタッチの違う絵が描かれていた。
「へえ。こりゃ大したもんだ。この絵なら、俺でも少しは欲しいかなって思いますよ」
ボンズも同感だった。ただ、金を出してまで欲しいとは思わないが。
その絵は半開きになったドアから一人の美少女がこちらを窺っている絵だった。下着のような白いワンピースを羽織り、白い髪に白い肌。幽霊のようだが、実に美しい少女。その少女が悪戯っぽい笑顔でドアから半分だけ顔を出して、こちらを覗いている絵だった。
「これもここの画家が描いたもんなんですかね? あるいは誰かの贋作とか。犯人はこれを狙ってたんですかねえ」
キャンバスを手に取り、しげしげ眺めるケーン。しかしボンズはこの絵も事件に関係するとは思えなかった。
「おや? 裏に何か書いてありますよ。ええと、『我が家にやってきたソフィア』......なんだ。絵のタイトルか。それにしてもロマンティックな名前の女の子ですね」
「我が家にやってきた、か。案外、描き手の願望でも込められてるのかも知れんな」
パイプに火を点け直しつつ、ボンズがそんな感慨を述べていると、あることに気付いてケーンの手から絵を引ったくった。
「ちょ、ちょっと、警部。どうしたんすか、いきなり」
ケーンを無視して部屋から出るボンズ。そして玄関前で足を止める。
「見ろ。この絵はここを描いてるんだ」
ボンズが指さした場所を見れば確かに、その絵はこのアトリエの玄関を描いたものだった。
「そうですね。するとやっぱり、この絵はホトケさんの作品って線が濃厚なんですかね」
「さあな。そこらへんは専門家の意見でも聞く方がいいだろう。まあ、そこまでする必要があるかは分からんがな」
「それじゃあ、残りの絵も早く確認しましょうよ」
促すケーンに首肯するボンズ。もといた部屋に戻り、残る絵画を調べる。
「では、お次はナンバーツーだ」
ケーンが2のナンバーが振られたキャンバスの油紙を剥す。
「ええ? なんだこりゃ?」




